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『ナマック旅の荒野』
■ 美味しい塩を探していたら、こんなところまで来てしまった! ペシャワールは『プルシャプラ』と言って『花の都』と呼ばれていた。 |
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ペシャワール旧市街の朝の風景。中央右側にモスクの入り口が見える。 |
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ここからアフガン国境ぞいに南西へ向かう。
いくつもの峠とポリスのいるチェックポストをこえてまたもや山砂漠地帯に きてしまった。
私は砂漠はキツイのでキライなのだが、しょうがない。
岩塩はそんなカコクな地域にどうやらあるらしい。
現地人ドライバーと案内人がいても不安になる様なヘンピなところ。
ここは何処だ?
地図を見てもおおまかにしかかいておらず小さな街の名は何処にもない。 |
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途中、橋の上から干上がった河川をみる。
街道をはずれた先にはどういう暮らしがあるのか? |
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荒涼たる岩砂漠、砂ぼこり遠くは言うまでもなく近くまでかすんでみえる。足下のすぐ先がかげろうだ。
村と村を結ぶ幹線道路は穴だらけで車でとばすがたまに『ドカン!』 車よ、こわれないでくれ!
これからどうなちゃうのだろうと、気も弱くなる。
チャイハネで休憩。隣で水パイプをふかすおやじ。(トラック運転手だろうか)
『あとどのくらいで目的地につくのか?』
『あとおそらく3時間くらいだろう。』
わからない。全員はじめて行く所だから。
乾いた山間部のトライバルエリアをこえて、ようやく見えてきた。河ぞいの街、ここでまた情報収集。
岩塩掘削のオフィスへ行くと無愛想なおやじが二人、英語は通じない。
ここから先はガバメント ロードで許可車以外は通行まかりとうりません。
エ!なんてことだ、、ここまで来たのに!じゃあ 塩運搬トラックでも買収していくか。
とても疲れて暑くて声もでない。夏でもないのにこの暑さ。初めて来たその街までかすんで見えてくる。
諦めずにまた情報収集すると河沿いに船をチャーターする方法があるらしい。
選択の余地はない、すぐに街はずれの路地裏にある小さな船着き場へ。
渡し場なのだろう、そのオンボロイ桟橋に小型ボート、なにやらディーゼルらしいがエンジンをかけるのに
ヘッド上にある鉄の皿にマッチで火をつけている。こんなスターティング初めて見た。
器用なものであっと言う間にエンジンスタート。
水の近くにいるだけで体が喜んでいるようす。岸から離れると街全体がみえてきた。
河沿の崖の上に美しい小さなモスク。 |
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インダス川の上支流といってもここの流れはゆるやか。
静かな川面を船ですべる。船着き場は左手に見える丘の裏側にある。 |
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『こんな所があるものなのだ。』
少し下るとむかしTVで見た西遊記のイミテーションのセットでこんな岩山の景色があったような、、、
あれは『魔の山』のような描写だったような、、、
ああ、、とんでもない所、誰もいないではないか。 |
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この写真では山の大きさがわかりにくいが、 巨大で切り立つ完全に乾いた山。
みごとな景色だったが、こんなところで一人になりたくはない。 |
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人だけでなくここには獣もいないのではなかろうか。
草木もなく暑く乾いた巨大な岩山沿いを青と灰色の中間色の河がながれる。
多少冷たいその河は河口までまで何千キロあるのだろう?
よく日本人は大自然の中で自己の存在をちっぽけに感じたなどと言う私のその日の体験は
幻と現実が交差する線上を行く様な存在が小さいのか何なのかよく分からない様な位置だった。
しかも砂利の多い河沿いに船をつけてからが本番だった。
このSaltyLandは過酷で、岩山は巨大で造山活動の跡が地球の圧力の凄まじさ を見せつけていた。
ねじ曲がった地層がそのまま山となり、生命を拒むその山々には誰も意味なく踏み入る事はないだろう。
そこには人間の営みと正反対の風景があった。
向こうからロバがおりてくる。人はいないのに背中に岩塩をしょって、
『つらそう』なんてはいえない。 ようやくそこに生きているのだ。
ようやく目的地に近ずいたとおもいつつさらに岩山をのぼると見た事もない岩塩の山、
子供の頃聞いた炭坑の様子に似ているのだろうか? |
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岩塩山の入り口。
この大きさからは想像できない程の地下世界が先にひろがっている。 |
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入坑の許可をもらいにオンボロ小屋に入ると、一人の責任者がいた。 |
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■ ある男が私に『塩の花』を差し出した。鍾乳石の様に地下に咲いた岩塩の結晶だ! ■
またもや無愛想なパシュトウーン。
『ここへ来た外人はお前で4種類目だ。インド人、中国人、アフガン人、そしてジャパニだ。』
『ここは約2500年前から掘り続けて、今も掘っている。中は坑道が迷路の様で崩れやすい。
崖もいっぱいあるから落ちない様に案内人をひとり付けてやる。』
トンネルの入り口は一つ。他よりちょっと愛想のいい四十がらみの案内人と坑道へ。
程なく急な下り坂に差し掛かる。しかも長いし、岩塩砂だらけですべる。
地下にどのくらい降りただろう、説明ではメインの坑道だけで5Kmとか10Kmとか言うが
要は計った事などないのだろう。支道をいれたらはたして何Kmあるものか、気が遠くなる。
巨大なアリの巣を思い起こした。
見ればその鉱山は全て岩塩で成る様だが、塩の鉱脈を求めて何千年も掘り続けたあとが果てしなく続く。
果てしはすぐ目の前にくるのだが、その支道の多いこと多いこと。塩のつららに、地底塩池、
塩の崖っぷちから懐中電灯を照らすと恐ろしい深さで先が見えない。
『こんなところに落ちたらおしまいだ。』
私は未知の地下世界にいた。
鍾乳洞を想ったがそれとも違う、『天空の城ラピュタ』のおじいさんのいる 地下世界も想ったがそれとも違う。
というより足元があぶない。
“ドオーン”という爆発音、
『イエース!ダイナマイト!!』
いいかげんにしてくれ、ここはカコクだ!
メイン坑道に戻ると岩塩をいっぱいに積んだトロッコを押す男たちの一団、
勢いよく押しながら細い坑道のコーナーを曲がる。
トンネル内が狭いものだからこちらも背を壁に付けて避けないとあぶない。
連中は塩の砂埃をかぶって真っ白だ。この地下には物見遊山の私の様なバカ者は来ない様だ。
ふと、ある男が私に『塩の花』を差し出した。鍾乳石の様に地下に咲いた岩塩の結晶だ。
『これを、、』
何かが通じた気がした。坑道内には裸電球の明かりがポツリポツリと、いったい何処まで続くのか。
こんな深い穴ははじめて見た。唇をなめると塩埃でしょっぱい。喉もカラカラだ。
大きな支道の最先端まで行き、つい最近ダイナマイトで掘ったという穴まで降りた。
巨大な岩塩ドームはしずかで、冷ややかだった。
地下で働くロバの足取りよりも遅くゆっくりと登りの帰路につく。
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メイン坑道を撮った一枚。
手前の影がトロッコレールの脇で人影がその行く手をよける。 |
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『こんなところがあるなんて、、』
私の頭の中は自分で消化しきれない体験に言葉を失っていた。遠くに坑道の入り口が見えてきた。
まさに外界への出口を見て、ふだん目にする事の出来ない『境界』をまのあたりにした。
長い上り坂でトロッコはウインチで引き上げられる。私は仕事のジャマをしない様外へでた。
外気は高温で地下との差に愕然辟易としたが、なによりも目が慣れるまで世界はハレーションをおこす。
地上もまた目の眩む様な世界なのだった。
幾つかの種類の異なるサンプルを拾った私たちは船頭の待つ河へとトボトボ歩く。
塩についてのあることわざ話をおもいだした。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
ある男が塩を商売にはじめた。塩は重たいのでロバに運ばせたが、
よくばって積み過ぎたためにロバが死んでしまった。次はそうならない様に少量運ばせたが
河を渡るとき水に浸かってとけてしまった。そして次に、、、、、
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
たしかこの話はコレコレシカジカだから塩なんかに手を出すもんじゃあない、、、
といった内容だったのだが、三番目がどうしても思い出せない。
今度連中と会う時はこの次の話を聞こうとおもう。
追記
行きはヨイヨイ帰りはこわいと申しますがまさにそのとうりで、 夕日はおそろしく綺麗だったのですが
夜のトライバル・エリアを行くのはこれまた難儀でした。
あんなところへあまり行きたいとはもう思いません。人気のないところで人と会うとヒィヤッとします。
ハイエナだかオオカミのようなのもいるし、先は見えないしガソリンは無くなりそうだし、食にはアタルし。
でも案内をした若いパシュトウーンは
『あなたのおかげで誰も知らない様な経験ができた。お互い大変だったけど本当にありがとう。
今度はムービーカメラをつかって番組をつくろう。』
なんて言ってました。
ちなみにパシュトウーンは無愛想な人より人なつっこい人が多いと思います。
ペシャワールにいる友人の多くは
『塩なんて何処にでもあるだろう。なんでそんなもの商品にするのか?第一安すぎるだろう。
〜おまえはアホか!』といいます。
でも塩は大切です。
この旅はつづく、、、
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