涙を、獅子のたて髪に

■公開：1962年

■制作：松竹

■制作：白井昌夫

■監督：篠田正浩

■原作：

■脚本： 寺山修司、水沼一郎、篠田正浩

■撮影：小杉正雄

■音楽：武満徹

■美術：梅田千代夫

■照明：青木好文

■録音：平松時夫

■編集： 杉原よ志

■主演：藤木孝

■寸評：

ネタバレあります。

なんともイタイ話であります。

港湾労働者たち・清村耕次、小池朝雄、浜村純、ほかの賃金をピンハネしているヤクザの木谷・南原宏治に戦争中助けてもらった恩義のために彼のパシリになっている三郎（サブ）・藤木孝は、労働者たちが組合を結成して対抗しようとしているのを警戒しておりました。

木谷の雇い主である海運会社の社長・山村聡は賃金をアップした分だけピンハネする分も増やせばいいだろうという考え方ですが、組合による団交は面倒くさいので木谷に命じて港湾労働者のリーダー格である中島さん・永田靖を襲撃させることにしました。

サブはあまり頭がよくないので盲目的に木谷の言うことを聞いているわけですが、ある日、野犬に絡まれているウェイトレスのユキ・加賀まり子を助けてあげたことがご縁で彼女と付き合うようになります。まだ少女っぽいユキは港湾労働者の若手リーダー、加賀・早川保のマドンナでもありました。

サブは中島さんを殺してしまいましたが事故に見せかけました。警察の調べでも事故死と断定されましたが労働者たちは信用しません。彼らは独自に捜査を開始し、サブの弟分を締め上げてサブが殺したことを突きとめました。

その頃、サブは社長の奥さんであり、かつ、木谷の情婦である玲子・岸田今日子に誘惑されました。彼女はスノービッシュなセレブなので夜な夜な鼻持ちならない金持ちども・細川俊夫、十朱久雄、神山繁らとパーティーを開催し、そこへためしに呼んだ木谷が連れてきたサブが仕方なく歌を歌わされるのを見て「おもちゃ」代わりに誘ったのでした。

愛情に飢えていたサブは木谷がかつて自分の命を助けてくれた感動秘話を玲子に話しましたがそれは真っ赤なウソでした。インテリの木谷がバカそうなサブを自分の奴隷にするために創作したエピソードだったのでした。サブと玲子の浮気の現場に踏み込んだ木谷、玲子は木谷に「サブが襲った」とトンデモナイうそをつきました。

木谷にも玲子にも偽りの愛情でだまされたサブは激昂して木谷を殺し、ユキに会いに行きましたが、すでに警察の手が回っており、サブは逮捕されてしまいました。

南原宏治が怪しすぎです。片足が不自由なので武器にもなるステッキを持ち歩いていますが、サブはそのステッキが怖くてたまりません。南原宏治の下着まで洗う藤木孝がちょっと、アッチの方面の人に見えてしまうのは、演技以前のパフォーマンス、そうです腰のグラインドによるものかもしれません。

とまれ、当時の藤木孝のステータスが理解できない（人気歌手だったことくらいは歴史的事実として理解してはいるのですがね）のでなんともはやですが、変態にしか見えない（俳優さんの場合は褒め言葉ですよ）ので彼が変なフォームで走るたびに、観てるこっちがイライラさせられっぱなしでした。

『乾いた花』のときは任にあった薬物中毒患者役だったので、あ、藤木孝は凄いかも？と思いましたが先に本作品を見ていたらこっちがプロトタイプだったのか？くらいな感じです。ちなみに加賀まり子は「何演っても同じ」にしか見えません、あしからずご了承ください。

時代を共感できないとこういう映画は難しいもんだなあと改めて思いました。

ていうか、これがフランス映画でフランス人が演ってたら何の違和感もないのになあ、とふと思いました。

（2012年10月28日）

【追記】

※本文中敬称略

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