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鑑賞用男性


■公開:1960年

■制作:松竹

■制作:若槻繁、桑田良太郎

■監督:野村芳太郎

■原案:中林洋子

■脚本:水沼一郎

■撮影:中島信雄

■音楽:中村八大

■美術:宇野耕司

■照明:高下享三

■録音:吉田庄太郎

■編集:浜村義康

■主演:有馬稲子

■寸評:

ネタバレあります。


映画における「アソビゴコロ」とは何でありましょうね?映画でいうなら本作品のような、冗談みたいな作品のことを指すのではないでしょうか。

洋行帰りのデザイナー・有馬稲子は日本の男性も鑑賞に堪えるようなファッションにしなければ!という毒の哲学を実践に移します。たとえば政治家・石黒達也であれば革新派なので赤い、しかもローマ時代のような衣装を身にまといます。前衛的な書道家・三井弘次は有馬稲子の理解者ですが、迷惑をこうむったのは彼女の母親・細川ちか子が実権を握る広告代理店の社員たちでした。

なんで日本のサラリーマンが鑑賞に堪えるためにスカート履くかね?今でこそ短パンに暑苦しい毛ズネは市民権を得ていますが、スカートだぜ!めくれるんだぜ!めくらないけどさ!

当然のことながら社員たちは大反対、一応は会社側の人間なので不承不承従った重役たちも大迷惑。有馬稲子の姉の夫・仲谷昇の弟で、広告代理店勤務の文二郎・杉浦直樹はコンサバな性格なので、いくら社長の言明とはいえ、すかーとなんか履きません。有馬稲子も意地になって彼に鑑賞用の洋服を着せようとするのですが・・・

純然たるラブコメです。しかも、当時めずらしかった海外旅行経験をした有馬稲子の帰国第一作ということですから、フランス喜劇映画っぽいのを日本でもやってみよう!オシャレなドタバタ、綺麗な女優とカッコいい男優がくっついたりはなれたりしているうちに、ヒロインと二枚目がちゃんと納まるところへ納まるという、そんな感じの映画。

そうですか、なるほどねえ、それで欧米人サイズの杉浦直樹の起用でしょうかね。

有馬稲子ありきの企画ですから、ひたすら彼女は美しく、かつ、衣装もとっかえひっかえ、というよりもファッションデザイナーの役どころなので、日本の伝統芸能である「お能」からヒントを得たデザインというのも登場します。とにかく、明るくて、バカっぽくて、楽しい映画です。

ただ、難を言えば、杉浦直樹、仲谷昇、まではともかく、英国スタイルのコンサバなレストランのボーイに松竹の中堅どころの二枚目・津川雅彦らをチョイ役で起用する贅沢な「アソビゴコロ」も許容範囲、もちろん芳村真理が演じるコメディエンヌはギリギリ、であとはもう垢抜けなさすぎて、それはそれは観ているこっちが冷や汗をかきそうな絵柄でした。

最初は反発しあっている二人が、雨降って地固まるのように大団円というのは最初から見えているので、ストーリーは寝てても困りませんが、仲谷昇もその鑑賞用衣装の餌食になるわけです。そういうところは見逃さないようにしましょう。

上田吉二郎や三井弘次が鑑賞用なのか?そもそも?という疑問はさておき、個人的に一番ツボにはまったのは石黒達也の謎の赤いローマ人でした。ヤケクソな感じが楽しかったです。 あとは、有馬稲子だけ観てれば楽しいんじゃないですかね?そういう映画だし。

2012年08月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-08-26