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地獄の用心棒


■公開:1955年

■制作:日活

■制作:浅田健三

■監督:古川卓巳

■原作:

■脚本:古川卓巳、浅野辰雄

■撮影:中尾利太郎

■音楽:田村しげる

■美術:松山崇

■照明:安藤真之助

■録音:沼倉範夫

■編集:

■主演:河津清三郎じゃなくて三國連太郎(賛助出演)だよねぇ?

■寸評:

ネタバレあります。


どうも、その、ギャングが追いつめられると高いところへ上がって死亡というのは1949年ラオール・ウォルシュ監督、ジェームズ・キャグニィの「白熱」(1949年)の影響かとも思われますが、まともにリスペクトしたのは吉田喜重監督の「日本脱出」(1964年)だけでなく一つのスタイルであるように思われます。

麻薬Gメンの河津清三郎は、横浜署の管轄地区で顔が知られていないので潜入捜査の任務につきます。売人の顔写真の中にかつての戦友を見つけた河津清三郎はまず、彼に会うために麻薬中毒患者に化けて密売人がうろうろしている地域へ向かいました。

フォローは同警察署の刑事・千秋実二本柳寛です。

戦友・三國連太郎はすぐに見つかりました。というより、三國連太郎が河津清三郎を覚えていたので、二人は再会を喜びましたが、売人仲間・高品格らはいぶかしがります。麻薬の害は場末の売春婦から一般家庭の主婦にまではびこっています。

バーのマダム・山本和子は麻薬密売組織のボス・菅井一郎の情婦です。ていうか、麻薬で縛り付けられているだけなのですが。菅井一郎には人徳なんぞありませんから、組織の幹部で裏切りそうな三國連太郎も含めて「ヤク中は忠実だから」という理由で薬漬けにされています。

なので、ヤク中ではない河津清三郎のことは全然信用していません。麻薬が切れて禁断症状に苦しむ三國連太郎は菅井一郎から薬物をもらおうとしましたが、河津清三郎を追い出さないともらえないので三國連太郎は悩みます。

三国人・殿山泰司が麻薬の供給源らしいことがわかり、次の大きな取引に河津清三郎、そしてあらたな売人・石黒達也も加わり、かなり純度の高い高価な品物の買い手を探すことになりました。中途半端な売人ではとても手が出ません、セレブな有閑マダムにすら麻薬密売のリンクが張られており、その売買交渉は昼日中のデパートの屋上でもなされているというのが衝撃です。

ま、平日の昼間のデパートの屋上でうろつく人間にまともなヤツはいないってことでしょうか?

さて、いよいよ河津清三郎は三國連太郎に自らの正体を明かして、自首するように求めました。二人が怪しいので菅井一郎は拳銃を持ち出しましたが、彼は山本和子に射殺されてしまいました。女の恨みをうっかり買ってはいけませんね。

取引現場に警官隊が踏み込みました。負傷した三國連太郎は逃亡、港の工場地帯に逃げ込んだ三國連太郎は河津清三郎の説得もむなしく、射殺されてしまいました。

三國連太郎のバックボーンがもう少し語られないと、ただ一人の犠牲者となる彼の悲哀ぶりがいまいち伝わりません。河津清三郎の硬直した演技に対して、三國連太郎がやりたい放題というのも、観てるほうは楽しいのですが、アンサンブルを破壊しまくりです。ま、どっちが?というと悩ましい問題ではありますが。

せっかく役者が揃っているのでもう少しハリウッド的なメリハリとテンポがほしいところでした。

山本和子のボディーガード役がジャック・アルテンバイ、のちに新東宝で変な外国人になる前は日本語の達者な外国人としてちゃんと芝居してたことが判明してちょっと安心(か?)。

密売人がたむろするバーのバーテンが金子信雄ですが、髪の毛がフサフサなので一瞬誰だかわかりませんでした。

2012年08月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-08-18