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やっちゃ場の女


■公開:1962年

■制作:大映

■制作:原田光夫

■監督:木村恵吾

■原作:

■脚本:田口耕

■撮影:宗川信夫

■音楽:小川寛興

■美術:柴田篤二

■照明:柴田恒吉

■録音:須田武雄

■編集:

■主演:若尾文子

■寸評:

ネタバレあります。


叶順子が演じる役は、かわいくて切なくて思わず抱きしめたくなっちゃうようなイケてる女の場合と、出てきた途端に鈍器で頭をかち割りたくなるようなバカ女の、どちらか極端な場合が多いような気がしています。今回は、登場して3秒以内に脳天めがけてピッケルを打ち込んでやりたくなるタイプの小悪魔でした、あ、実は褒めてるんですよ。

やっちゃ場で働く老舗の仲買商の長女・若尾文子は商売上手、仕入れの値付けがハイリスクハイリターンなのは母親・清川玉枝ゆずりのようです。従業員の藤巻潤はお嬢様に振り回されつつも、彼女のざっくりとした言動のフォローもしてくれるナイスガイです。

若尾文子の妹・叶順子はOLですが、どうやら課長・根上淳に目をつけられているようです、っていうか手をつけられそうになっているようです。叶順子は、何事によらずお姉さんに水をあけられているのが面白くないようです。さらにこの家にはまだ給食の牛乳の香りが漂う高校生の長男もおります。おや?父親は?

この家の父親・信欣三は元使用人の女・水戸光子と同棲中。ある日、清川玉枝が急死してしまうと、若尾文子は喪主としててんてこまいになります。叔母・村田知栄子はそろそろいい年になってきた若尾文子に、建築会社のエリートサラリーマン・宇津井健との見合い話を持ってきましたが、どうやら若尾文子は藤巻潤のことが気になっているようです。

ちょうどそのころ、お姉さんを宿敵として付け狙っている(そうだろうか?)叶順子も藤巻潤にロックオン、さらにはデートのお誘いやプレゼント攻勢で撃ちまくっていました。もともと表情の乏しい藤巻潤ですが、かなり若尾文子のことが好きそうなので、そのあたりビンビンに感じている叶順子としては葬儀の席だろうがなんだろうがお色気攻撃も厭いません。

家の中が騒がしくなったせいでしょうか、長男だけど末っ子の男子は父親と男同士の付き合いをしたいようです。女だらけのじめじめした内戦状態はやはり子供には刺激が強すぎるようですね。

深川の花火の夜、若尾文子と藤巻潤がいちゃいちゃしている(少なくとも叶順子にはそう見える)ところを目撃してしまい、ショックのあまり、セクハラ課長の根上淳に身を任せてしまい、おまけにバージンをささげたにもかかわらず、根上淳にヘラヘラされてショック倍増になった叶順子は父親の家に身を寄せて、睡眠薬で自殺未遂。

妹の一途な思いを遂げさせてあげようと思った若尾文子は藤巻潤にわざとつれなくして、宇津井健と結婚してしまおうと思ったのですが、一足違いで宇津井健は婚約済み。叶順子を見舞いに行った藤巻潤を、デリカシーのない叶順子が逃がすはずもないので、女一人で頑張る決意を固めた若尾文子でありました。

東宝のときもそうですが、木村恵吾の映画を最初から最後まで一睡もしないで観た経験がほとんどないので、本作品も同様でした。別に、やっちゃ場である必然性はまったく無くて、いつもの若尾文子が芯は強いけど心はさびしがり屋というルーティンワークをこなしただけの映画でした。

村田知栄子みたいな世話焼きおばさんがいれば、日本も少子高齢化とか孤独詩とか防げそうです。こういう、厚かましいけど人の世話を焼くのが好きなザ・オバサンは邪険にしないで温かく見守っていこうと思いました。

流しの歌手役で星ひかるが出てきます。色事師みたいな顔してますが実にいろんなところに顔を出すので、大映の映画を観ているときはついつい探してしまいます。ちなみに、藤巻潤と宇津井健のカップリングですとどうしても「ザ・ガードマン」が頭に浮かんできてしまいますが、それは時代が逆転現象なので禁じ手です。でもなあ、やっぱこの時代から、宇津井健が相手だと絶対に若尾文子を譲りそうな藤巻潤でありました。

2012年07月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-07-16