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北海の暴れ竜


■公開:1966年

■制作:東映

■制作:植木照男、太田浩児

■監督:深作欣二

■原作:

■脚本:佐治乾、神波史男

■撮影:山沢義一

■音楽:富田勲

■美術:北川弘

■照明:桑名史郎

■録音:大谷正信

■編集:祖田富美夫

■主演:梅宮辰夫

■寸評:

ネタバレあります。


久しぶりに北海道の、故郷の漁港に舞い戻ってきた梅宮辰夫はすっかり落ちぶれてしまった実家を見て、その原因が最近、漁港を支配している新興ヤクザの安部徹とその息子でライフル担いだ暴れん坊の室田日出男たちに牛耳られていることを知ります。母親・清川虹子によると一家の父親・沢彰謙を殺したのも安部徹らしいのです。

漁師たちは安部徹に逆らうことができず、ピンハネされまくりで、せっかく給料をもらっても待ち構えているチンピラたちに博打で巻き上げられてしまい、借金までこしらえてしまうため、がんじがらめなのでした。梅宮辰夫は安部の一家に乗り込んでフクロにされます。実家を継いだ長男・山城新伍、弟・谷隼人、そしてただ一人残った漁師の藤田進らは、細々と漁師を続けていました。

安部徹の一家にいるチンピラたち・土山登志幸日尾孝司はそろいもそろって粗暴な連中でした。ただし風変わりな用心棒・高城丈二だけは、室田日出男のことを「キチ●イ」呼ばわりしており、子犬を片時も離さない。カブで大負けした梅宮辰夫と後日、再戦したときもやっぱりボロ負けしてパンツ一丁になっちゃうという、ひょっとしたらナイスガイ。

一見ヘラヘラしている梅宮辰夫ですが沢彰謙をはじめとして、今は一家のもとを離れている由利徹も含めて、全員背中に龍の彫り物を入れています。全員揃うと龍の全身が現れるのです。

梅宮辰夫は漁師たちに決起してほしいとは思うのですが、彼らのリーダーである水島道太郎によれば、安定した収入という生活基盤の保証がなければ安部の一家に反旗を翻すことは難しいと言うのです。魚の流通に関しては正規のルートは安部徹たちに押さえられています。それならば、と梅宮辰夫は都市部の消費者に直接販売する行商のルートを開拓しました。中間マージンがないぶん、漁師たちの収入も増えるのです。

大漁続きだったので魚の値崩れを防ぐために安部徹の一家はせっかく水揚げした魚を漁港に廃棄しました。漁師たちのモチベーションの低下はいかんともしがたくなっています。

谷隼人が親友の岡崎二郎とともに、安部徹の暗殺を決行、しかし武器となるはずの花火が手もとで爆発してしまい、谷隼人は死亡、岡崎二郎は負傷します。とうとう我慢しきれなくなった漁師たちも安部徹に抵抗し始めました。

室田日出男は漁師たちを先導しているのは梅宮辰夫だとにらみ、彼を殺そうとしてライフルで銃撃しますが、流れ弾が当たって高城丈二の愛犬が死んでしまいました。

いやいや、犬コロ一匹で殺人を考えちゃいけませんが、それはあくまでも方便というもの。漁師たちに殺人を犯させるわけにはいかないので、梅宮辰夫、 山城新伍、藤田進、そして高城丈二までもが背中に龍の彫り物を急きょ入れて、カチコミに参加します。高城丈二が室田日出男を刺し違えて憤死。愛息である室田日出男の死で精神が崩壊した安部徹に再起の可能性はなさそうです。

漁港は平和を取り戻し、梅宮辰夫はあとを山城新伍に任せて、一人で警察に自首しました。

梅宮辰夫の身上は、緊張感が無いことです。どんなに深刻な状況でも、ぽっちゃり型の体型が醸し出す軟派なテイストのおかげでクサミというものがありません。台詞棒読みなのも、この際だから味だと言っておきます。

東映の野暮ったい俳優たちには出せないドライなキャラはもう一人、歌手から俳優に転向した高城丈二が担います。

深作欣二監督は任侠物の泥臭いネタを取り扱っても、そこに労働者が搾取され続ける構図を盛り込むなど社会への批判をキチンと織り込んで近代的に仕上げるところが凡百のプログラムピクチャーの作り手とは一線を画します。

今回も漁師たちが情だけではいかんともしがたい状況である、民心を統一するためには経済活動を切り離せないというメッセージが力強いです。映画そのものも外連味たっぷり、ビッグネームは出ませんがピリリっとシャープな映画でした。

2012年07月01日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-07-01