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思春の泉(草を刈る娘)


■公開:1953年

■制作:新東宝

■制作:高木次郎、山崎喜暉、佐藤正之

■監督:中川信夫

■原作:石坂洋二郎

■脚本:館岡謙之助

■撮影:横山実

■音楽:斎藤一郎

■美術:北川勇

■照明:関川次郎

■録音:中井喜八郎

■編集:

■主演:左幸子

■寸評:

ネタバレあります。


東北、それはズーズー弁、すごい偏見ですが、だってもう現地の人に殴られるんじゃないかと思うくらいの謎のズーズー弁が大爆発する映画なのです。

農耕馬の食糧である草刈は村の人たちが総出で行う一大イベントです。人の背丈ほどもある青草を何日もかけて刈っていくわけですが、なにせ単純な肉体労働ですから、めったやらと若い衆が明るいのです。左幸子は母親の岸輝子の指導のもと、村の若い娘たちと一緒に箸が転んでも可笑しい年頃らしく明るく草を刈ります。村の若い男ども・佐藤充(佐藤允)たちも盛りがつきはじめているので、娘たちが汗を流すために川で泳いでるのをデバガメするのであります。

それもこれも若気の至りというやつでしょうか。覗き行為を注意された若者たちが娘たちの着物を強奪します。そこへ裸馬で乗りつけたのが、同じく村の若者である宇津井健。彼は馬を洗いにきたのですが、早く岸へ上がりたい娘たちに追い払われてしまいます。

岸輝子の身内で最近結婚した、成瀬昌彦松井博子の夫婦は草刈の間、刈りの宿舎とする藁小屋で、毎晩合体しているようです。いや、そりゃもう結婚したんだからしかたないのですが、仕事の休憩中にもいちゃいちゃするので、村の娘たちはもうドッキドキです。

宇津井健と左幸子は急激に接近します。なにせほかに出会いのチャンスに恵まれない田舎の話ですから、産めよ増やせよの時代背景もあり、宇津井健の母親である高橋豊子と岸輝子はふたりを結婚を前提におつきあいさせることにしました。ところが、町で芸者をしている阿部寿美子が宇津井健にちょっかいを出したころから雲行きがあやしくなります。

男性経験豊富な阿部寿美子としては、将来は農業が確約されている男より街の男と玉の輿を狙っているので、本気ではないのですが、純情な左幸子は宇津井健に不信感を抱きます。そうとは知らない宇津井健は、元来がそそっかしい性格らしいので、とりあえず草むらでムラムラしてしまい左幸子にのしかかったのでした。

おいおい、しかしびっくりした左幸子が宇津井健の手をガブリを噛んでしまいまた。そんな凶暴な娘は傷害で警察に突き出してやればいいという高橋豊子、そんな野蛮な男は強姦未遂で警察に突き出してやればいいという岸輝子、双方ぶちきれて町の警察署長・東野英治郎のところへ乗り込んだからさあ大変。さらに行商をしている永井智雄が火に油を注ぐマネをしてしまい、左幸子と宇津井健があれよあれよという間に大騒ぎになりました。

町っても田舎の町ですけども、現在、有力者の結婚式で盛り上がり放題です。住職・千田是也、、署長の東野英治郎、村長・小沢栄太郎、助役・永田靖、ご隠居さん・ 東山千栄子、学校の校長先生なんか青山杉作です。この村は新劇人が支配しているらしいです、しかも重鎮ばっか。

当人同士はすでに和解、すでに状況は岸輝子と高橋豊子のメンツの問題に移行していることを大人のマインドで仲裁した東野英次郎のおかげで、若い二人は無事に結婚できそうです。

田舎の若者は将来の可能性が限定されていること、そして女性の喜びは子供をたくさん産んでしぼんだおばあさんになること、若い二人が語り合う場面はいろいろと興味深いのです。ズーズー弁でまくしたてるので臭いセリフもスムーズに聞こえてきます。

そうそう、臭いといえば宇津井健ですが、高級な時計を草刈の最中に落としてしまいます。どうせ見つからないだろうとあきらめていた宇津井健、しかし、左幸子は愛するダーリンの大切なものを探してあげたいと思いました。宇津井健はどうやら草刈の合間に野グソをたれたようです。きっと、そのとき時計を落としたに違いない、左幸子はウ●コの匂いを頼りに、時計を発見するのでした。

乗馬姿がやたらとかっこいい宇津井健、さすがは早大の馬術部出身です。演技も乗馬と同じくらい上手いとよかったのにね、なんて野暮なことは言わないようにしましょうね。

2012年05月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-05-26