めくらのお市　地獄肌

■公開：1969年

■制作：松竹

■制作：斎藤次男

■監督：松田定次

■原作：棚下照生

■脚本：松田寛夫、鈴木生朗

■撮影：川崎新太郎

■音楽：鏑木創

■美術：倉橋利韶

■照明：染川広義

■録音：高橋太朗

■編集：河合勝巳

■主演：松山容子

■寸評：

ネタバレあります。

シリーズ第二作、松田定次としては最後の監督作品だそうですよ。

盲目の女剣士、または、女座頭市、ただし、按摩さんではありません。フリーランスの賞金稼ぎであります。紅い仕込み杖を使います。通称・めくらのお市・松山容子。映画で伸び悩んだ女優さんがテレビ時代劇で人気者になって映画界へ逆輸入という流れです。

雨の中、狭い飲み屋の店内で、自分の首にかかった賞金を狙ったチンピラ数名をぶった斬って高笑いしたお尋ね者の浪人・中丸忠雄は、編み笠を被っためくらのお市・松山容子に斬りつけますがアッサリ返り討ちにされて、大八車で番所へ搬送されました。

松山容子のスピーディーな殺陣が見せ場ですし、殺陣師が足立怜二郎なのでかなり高度なチャンバラ技術が要求されるわけですが、中丸忠雄は東宝のギャング映画出身なので、殺陣はあまり上手くありません。その代わり運動性能が高いのを生かして刀をとにかく思いっきりぶん回して、おまけにお得意のテーブル飛び越しという現代劇のアクションを披露します。

適材適所で見せ場を作ってくれる松田定次監督に深く感謝した次第です。ていうか、最後くらいはちゃんとしたチャンバリストで固めたかったという意向に反してたりしたら本当にスイマセン。

さて、その松山容子と一緒に旅をしていた少女・岩村百合子が天涯孤独かと思いきや、実は大店のお嬢様で、両親と折り合いが悪くて家出をしていたと。そこんところをかぎつけたのが性悪にして人毛を鞭にして闘うパチモンくさい女殺し屋・松岡きっこ。松岡きっこは少女を誘拐して賞金をせしめようとしたのに、手先に使った玉川良一が、松山容子と裏取引をしたおかげで大失敗。

しかし少女を両親のところへ返したい松山容子は人芝居打って少女に冷たくするのでした。松山容子の心根を知っている田中春男が心の中で感謝（いい芝居です）一人残った松山容子はしみじみと孤独を噛みしめるのでありました。

飲み屋の女将・扇ひろ子に人生相談をもちかけた松山容子は仕込み杖を捨てれば幸せになれると諭されたのですが、勝手に逆恨みしている松岡きっこに襲撃されてしまいます。

オマエ、そんなアブナイ毒マムシをどこに隠してたんだ？というくらい松山容子めがけて毒蛇をブンブン投げつける松岡きっこ、噛まれた松山容子は地元の漁師・入川保則に救出されて、介抱されるうちにすっかりカタギの生活に浸るのでありました。

やっぱり女の幸せは結婚よね！だが、しかし、松岡きっこが地回りの親分・安部徹の妹だったから大変です。厳しい年貢の取立てを逃れるために、お米を隠していた百姓衆、この「隠し米」はつまり脱税ってことですから奪われても役人に訴えることができません。

いきり立つ百姓衆の指導者らしき浪人・近衛十四郎は、鉄扇でやくざたちを楽勝でタタキ伏せたりする超剣豪ですが、大変に理性的で、松山容子に対しては、女の幸せをゲットしたかったら武力で物事を解決しようとしてはいけませんよ、とアドバイスするのでした。

ズル賢い安部徹は、幹部の南廣たちに命じて度々襲撃していました。松岡きっこは凄腕の賞金稼ぎを臨時に雇用して松山容子と対決。唐人・永山一夫は青竜刀を使うわ、サルみたいに木を渡るわ、トリッキーな戦術で松山容子をかく乱しましたが、討ち果たされました。

入川保則が松岡きっこに誘惑されてイカサマ博打で巻き上げられた借金のカタに、ついに立ち上がる松山容子、怒り心頭の仕込み杖で安部徹ほかのヤクザをバッタバッタと切り倒していくのでありました。

近衛十四郎と松山容子が対決したら凄いことになりそうだったんですが、近衛先生としては女優と立ち回りするのもイマイチでしょうし、さらには万が一にも負けとか引き分けとか、絶対に受け入れないだろなあという予想を裏切らず、松岡きっこの命令で対決を唆したヤクザを皆殺しにしてしまっただけでした。

とにかく松山容子のアイラインがくっきり描かれた目が強調されてグロテスクな美貌が冴え渡ります。殺陣そのものもオッサンくさくならずに女性らしい仕草も入れつつ、キメのポーズがやたらとシャープ。女チャンバラの歴史に名を残すだけのことはありますね。クライマックスの大喧嘩もロケからスタジオへと切り替わり、実際の光景と、お市が心の目で感じ取っているであろう光景が、なんとも不思議な雰囲気を醸し出しておりました。

（2012年04月15日 ）

【追記】

※本文中敬称略

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