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事件記者 影なき侵入者


■公開:1962年

■制作:日活

■企画:岩井金男

■監督:山崎徳次郎

■原作:島田一男

■脚本:山口純一郎、西島大

■撮影:萩原憲治

■音楽:三保敬太郎

■美術:横尾嘉良

■照明:河野愛三

■録音:片桐登司美

■編集:鈴木晄

■主演:沢本忠雄ということにしておきますが心情的には山田吾一でもいいかな・・・

■寸評:

ネタバレあります。


東京湾で鴨猟なんて危ないじゃないか!?とのご意見もございましょうが2012年現在でも行なわれているそうですよ。あんな水平射撃で散弾銃ぶっぱなして大丈夫なのか?真面目そうな事件記者の相原巨典はまだしも山田吾一に猟銃なんて、ナントカに刃物じゃないのか?

さて、そんな事件記者の方々のたまの休日にもかかわらず事件発生。鴨の獲物と一緒にプカプカ浮いていた水死体は徹底的に身元不明にするためか、顔がズタズタ、手指が切り落とされているという猟奇的なシロモノでした。

映画版というか日活版の事件記者最終作品は映画っぽい醍醐味も目一杯増量です。

その頃、金融会社の社長・衣笠力矢、女性事務員、住み込み社員・森塚敏のところへ昔、逮捕に協力したベテランスリの男からお礼参りの脅迫状が届きます。

新聞が報道したからこんな目に遭うんだい!と泥酔した森塚敏が記者クラブへわざわざ乱入していたそのころ、社長は会社のオフィスで殺害されてしまいました。

同様に女性事務員の自宅にも脅迫状が届きます。え?いくらなんでもプライバシーだだ漏れすぎじゃない?とは思いますが女所帯だったので恐怖に震える母子を、警察より先にガードしに来たのは事件記者の二枚目担当・沢本忠雄綾川香なのでした。

影なき侵入者とは、脅迫状でした生存していないベテランスリのことでした。同じく大ベテランの事件記者・大森義夫はひらめきます。スリとして長年、刑務所を出たり入ったりしている男がわざわざ殺人まで犯して復讐するじゃろうか?そうです、そこにピンと来るのが聡明なる理想の上司・永井智雄

鴨猟の現場に上がった水死体の唯一の特徴は、奥歯のプラチナ冠、お、わりとイイモノ入れてるじゃんか?健康保険効かないっしょ?保険料払ってたとは思わないけどさ。

さて、事件のきっかけに参加していた相原巨典も森塚敏の顔を思い出しました。彼がうっかり落とした株式新聞、そして女性事務員がたまたま入手していた水死体があがった現場付近にある料亭のマッチ。

真犯人は誰か?という推理物としては毎度のことですがイマイチ、というより犯人やりそうなゲストは一人しかいないのでバレバレなわけです。本シリーズは犯人登場型が基本ですし。

「殺人者は雄弁」のセオリーにのっとり、ボロが出始めた犯人は女性事務員を殺害しようとしますが、水死体がベテランスリであることを突き止めた警察と事件記者が大挙して押し寄せたため、焦った犯人がイキナリ拳銃をぶっ放します。

え?ええ?それってアリ?犯人はカタギじゃなかったの??

いつもは冷静沈着な部長刑事・宮阪将嘉もカッコよくガンアクションを披露。

おそらく銃撃戦をやりたくてウズウズしていた日活のスタッフに活躍の場を与えたというところかと思います。

警官隊もバカスカ反撃、威嚇射撃ならまだしも手足をハンドガンで撃ちぬくというのはかなりの腕前が必要なんですけども、一応、犯人は無事逮捕されました。

救出された女性事務員と沢本忠雄のロマンスを漂わせて、日活版は終了します。

原保美がリタイアしてますから、頭脳プレイの本線は滝田裕介、ヒーローパートは沢本忠雄と綾川香、お笑いパートは山田吾一のフォーメーションは最後まで鉄板です。

なかなか立派にスリラーしているのですが、随所にタイアップ広告が露骨で相変わらずステキです。今回は日清のチキンラーメンなので山田吾一が出前の伸びきったラーメンをかき込む場面はありません。それどころか非常食用に買いだめしといたのを上司の高城淳一に発見されて、みんなに食われてしまうのでした。

あいかわらずコンプライアンス的には今日視点でNGな組織ではありますな。

それと、山崎パンですけど、あの甘ったるそうなレーズンロールをほおばる大の男の皆様におかれましては、ちょっと気の毒だったことも書いておきます。甘いもの好きならいいですけどね、生クリームたっぷりですからねえ。

2012年03月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-03-18