「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


事件記者 影なき男


■公開:1959年

■制作:日活

■企画:岩井金男

■監督:山崎徳次郎

■原作:島田一男

■脚本:西島大 、山口純一郎 、若林一郎

■撮影:松橋梅夫

■音楽:三保敬太郎

■美術:大鶴泰弘

■照明:吉田一夫

■録音:八木多木之助

■編集:鈴木晄

■主演:沢本忠雄

■寸評:

ネタバレあります。


事件記者シリーズ第五作。

いつもは事件を追いかけてイキイキと仕事をしている事件記者のみなさんですが、今回はプライベートも描かれます。記者クラブの溜まり場、飲み屋の女将・相馬千恵子の一人娘・丘野美子滝田裕介が結婚することになりました。結婚式でも葬式でも事件はおかまいなしですから、二人の披露宴の出席者や来賓であっても、新聞記者というのは因果な商売なので、河原で発見された男の死体をめぐって事件の臭いがするやいなや、ライバル紙の高城淳一山田吾一外野村晋らはさっさと中座してしまうのでした。

男の死体からニセドル札が発見されますが、ポケットに入ってたとかそういうのではなく、むしろ身元が判明しそうなものは徹底的に剥ぎ取られている状況だったので、これは死んだ男のダイイングメッセージではないか?と判断した頭脳明晰なキャップの永井智雄の見込みどおり、背後に大掛かりな偽札団が暗躍していたのでした。

こんな特ダネ目の前にしてウズウズしてしまう新婚の滝田裕介ですが、新妻ほったらかしで新婚旅行の途中で発見した四本指の男をマークし始めます。四本指、ちょっとドキドキする設定ですが、その男の手首に刺青があったら間違いなく特ダネなのです。滝田裕介はカッコいい事件記者ですが同時に貧乏なサラリーマンですので、宿泊先は知り合いが経営していて割引価格のようです。柔和な笑顔で善人丸出しの待田京介が経営している旅館になんと、四本指の男も宿泊していたのでした。

新聞記者の真似事に積極的に付き合う待田京介は個人情報である宿帳も滝田裕介に平然と開示、おまけに四本指の男の監視までやりだします。もうノリノリの待田京介と旅先でライバル紙を出し抜けるのではないか?と期待で目が輝く滝田裕介、新妻もガッカリするかと思いきや、幼い頃から記者クラブの面々の家庭を顧みない生活ポリシーを見てきたので、ブンむくれはしても、スピード離婚の心配は無いようです。

闇ドルの仲介をしていると噂の古美術商のところへ、ブローカー・土方弘が怒鳴り込んできます。ニセドルを掴まされたので代金を返せというのです。古美術商はニセドル印刷の黒幕・木浦佑三へ連絡をしますが、証拠隠滅をはかる黒幕に射殺されてしまいました。

濡れ衣を着せられたブローカーは警察に追われますが、顔見知りだった事件記者の原保美の印象ではあきらかに犯人ではないようです。

その頃、滝田裕介は四本指の男にトンズラされてしまいました。待田京介と一緒にガッカリしていたところへ、四本指の男の死体が踏み切りの近くで発見されたとの情報が入ります。きっと仲間割れで殺されたに違いない!新聞記者のカンが冴え渡る!が、しかし、実はその男の正体はただの枕探しで、死因も単なる転落事故なのでした。

さて、ニセドルの印刷工場の場所を提供していたのは戦争未亡人で没落華族の東恵美子。海外へ逃亡しようという黒幕、そこへ乱入したブローカー、銃撃戦になるかとハラハラしてたら、事件記者とナイスコンビネーションで事件の真相に迫っていた警官隊がなだれ込み、無事に黒幕は逮捕されたのでありました。

毎度の事ながら、記者クラブからほとんど動かずに電話の応対だけで事件をサクサクと解決していくように見える永井智雄の活躍?で事なきを得たわけですが、サイドストーリーとして展開する滝田裕介の新婚旅行のエピソードは単なる付け足し、出てきただけで何もしないで引っ込む待田京介に至っては、もったいないにもほどがあると思った次第でした。

2012年02月26日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-02-28