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事件記者 姿なき目撃者


■公開:1959年

■制作:日活

■企画:岩井金男

■監督:山崎徳次郎

■原作:島田一男

■脚本:西島大 、山口純一郎 、若林一郎

■撮影:松橋梅夫

■音楽:三保敬太郎

■美術:大鶴泰弘

■照明:吉田一夫

■録音:八木多木之助

■編集:鈴木晄

■主演:沢本忠雄

■寸評:

ネタバレあります。


事件記者シリーズ第四作。

子持ちのアベック強盗・杉幸彦葵真木子、そりゃもうボギーとクライドみたいにカッコよくなんかありません。今日も今日とてベッドハウスに小さな女の子を残して泥棒稼業に精を出しています。夜中に侵入した宝飾店では起きてきた店主に一喝されて慌てて何も盗らずに逃げ出しただけでなく、割ったガラスで手を切るというお粗末さ。

そんなチンケな強盗未遂現場に居合わせた記者クラブの事件記者・滝田裕介沢本忠雄山田吾一。犠牲者の一人でも出れば盛り上がったのになあと、無責任な、というかいかにも新聞記者らしいため息を漏らしました。

アベック強盗も部屋代すら払えなくなってピンチになったので、葵真木子がかねてより目をつけていた高級アパートへ向かいました。杉幸彦が偶然、忍び込んだ部屋にはヤクザ・深江章喜の情婦・南風夕子が住んでいました。サイドボードに隠してあった拳銃を手に入れた杉幸彦(愛称・トミー、注:若山富三郎とは無関係)は逃げ遅れて逮捕された葵真木子の釈放を要求する電話を記者クラブと、捜査一課長・二本柳寛のもとへかけてきました。

そんなにバシタに惚れていたのか?なんて心優しき男なんだ!ま、それは間違ってませんが実はトミー、娘が寂しがって泣くのがかわいそうでしかたないからという、ヘナチョコな理由で葵真木子を奪回したいのでした。

トミーは女を釈放しなければ交番を襲撃すると言うのですが、最初は誰も信じません。なにせヘナチョコの言うことですから。しかし、窮鼠猫を噛むのことわざの通り、彼は本当に交番の巡査を撃ってしまいます。しかも、うっかり弾が当ってビックリしたのはトミーのほうでした。幸いにも巡査は軽症でしたが、オマワリに手を出すとヤクザより怖い警察ですから、トミーは焦りまくります。

しかし本当に焦っていたのは、トミーに拳銃を盗まれたヤクザの深江章喜のほうでした。実はその拳銃は前科持ちだったのです。麻薬の取引にからんで外人の売人を射殺していた深江章喜はパシリたちにトミーを探させます。トミーを庇っていた飲み屋の女将・田中筆子のこともヤクザたちにバレてしまいました。

沢本忠雄はトミーと接触を試みます。当然ですが、100パーセント安全が保証できない現場に部下を送り込むなんて、警察や自衛隊でもなければ上司が許可するわけもなく、永井智雄もそのへんは普通に難色を示しましたが、彼がそこいらへんのボンクラ上司と違うのは、沢本忠雄を理論的に制止するところでしょう。部下の熱意を汲んでなお、情に流されない永井智雄、世のサラリーマンの中間管理職は手本といたしましょう。

今はなき、東京の多摩川のほとりにあった二子玉川園遊園地の回転遊具に乗りながらトミーに自首をすすめる沢本忠雄、固定カメラの周囲をグルグルまわるカットは見てて酔いそうでした。

トミーは殺人容疑までかけられているので新聞記者に対しても疑心暗鬼の塊です。おまけに、そこへ深江章喜たちもやって来て、あわや沢本忠雄ともども射殺されるかと思いきや、そこへ警察と永井智雄たちがかけつけて、トップ記事ゲットと凶悪犯人逮捕をいっぺんにやってしまうのでした。

若手のホープだった沢本忠雄が事件記者の枠組みを超越してヒーロー的な大活躍です。あいかわらず、スポンサーの「ワカ末」のイメージキャラクターとして、冷めて麺がのびきってしまい、スープがほとんど残っていない不味そうなラーメンを一気食いするだけが取りえの山田吾一には頑張って欲しいものです。

2012年02月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-02-28