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事件記者 仮面の脅迫


■公開:1959年

■制作:日活

■企画:岩井金男

■監督:山崎徳次郎

■原作:島田一男

■脚本:西島大 、山口純一郎 、若林一郎

■撮影:松橋梅夫

■音楽:三保敬太郎

■美術:大鶴泰弘

■照明:吉田一夫

■録音:八木多木之助

■編集:鈴木晄

■主演:沢本忠雄

■寸評:

ネタバレあります。


事件記者シリーズ第三作。

警視庁の記者クラブ、事件記者の滝田裕介山田吾一は映画館で痴漢されたと騒いでいる楠木侑子と、彼女に痴漢呼ばわりされている若い男を目撃。楠木侑子の背後からハグした容疑のその男は病院の薬剤師・沢井杏介なのでした。

新聞記事にするネタを探してこいと言われて焦っていたお調子者の山田吾一は、容疑が確定しないのにその薬剤師を「エロ薬剤師」として扇情的な記事を載せてしまいます。しかし実は冤罪だった薬剤師の上司だという病院の事務長・垂水吾郎が記者クラブへ抗議にやって来ます。

薬剤師の名誉挽回を主張する垂水吾郎の強引な要求に対して、キャップ・永井智雄は「誤報は大きく、お詫びは小さく」という新聞の原則に則り謝罪記事を二段ぶち抜きなんてとても応じられません。このままでは病院にも顔を出せないと薬剤師が行方をくらませてしまい、恋人の看護婦・中村万寿子とも連絡を取っていないようです。

さらに薬剤師は態度を硬化させてしまい、とうとう自殺をほのめかす電話を記者クラブにかけてくるのでした。慰謝料を要求する事務長の垂水吾郎。永井智雄はライバル紙のお偉いさんたちに協力を呼びかけて、薬剤師に謝罪と自殺を思いとどまるようにラジオや街宣車で呼びかけるのでした。

都内某所に潜伏させておいた薬剤師から劇薬の保管庫の鍵を預かった垂水吾郎は、以前より製薬会社との癒着が噂されており、さらには劇薬を含む薬物の横流しをしているらしいです。薬剤師は、自分の冤罪をネタに新聞社を強請るようなマネをしている垂水吾郎の行動に疑問を抱きますが、言葉巧みに人気の無い場所へ誘い出され、差し入れのコーヒー牛乳を飲んでしまいました。

翌日、薬剤師の死体が発見されます。

警察は自殺の線を取りますが、病院関係者からの聞き込みにより垂水吾郎を疑っていた永井智雄、長老格の大森義夫原保美滝田裕介たちは偽装自殺の線で取材を開始。警察も、あまりにもキレイに指紋がふき取られている、薬物の入ったビンに疑惑の目を向けるのでありました。

次々に入ってくる記者からの電話に応対する永井智雄のノリツッコミでポンポンと小気味の良いテンポで話が進んでいきます。テレビドラマがベースですので、その世界観をキチント映画で再現しており、かつ、スタジオドラマでは困難だったロケもあって、短時間ですが見ごたえがあります。

どんな状況にも動じない永井智雄の理想の上司ぶり、新人でありながらシャープな沢本忠雄、あとはテレビからスライド登板の滝田裕介、原保美、大森義夫のコンビネーションがまさに阿吽の呼吸です。

事件は垂水吾郎が汚職の証拠隠滅のために薬剤師を利用したもので、薬剤師の恋人の身体を狙い、さらに共犯者だった楠木侑子すら手にかけようとしたため、ついには破滅するという展開です。

原則としてライバル紙でありながらも同じ記者クラブの仲間として必要なときはさっとまとまる連携プレー、働く男の姿を真摯に描きつつサラリーマンの悲哀も盛り込むという、よくできたドラマでした。

2012年02月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-03-04