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にっぽん実話時代


■公開:1963年

■制作:東宝

■制作:藤本真澄、金子正且

■監督:福田純

■原作:

■脚本:松木ひろし

■撮影:小泉福造

■音楽:黛敏郎

■美術:竹中和雄

■照明:金子光男

■録音:斎藤昭

■編集:藤井良平

■主演:高島忠夫

■寸評:

ネタバレあります。


真面目な経済雑誌はサッパリ売れず、火の無いところを大炎上させるようなゴシップ週刊誌ばかりが売れている、戦後もずいぶん経過してオリンピック開催に向けて日本中が浮かれている頃のお話です。

返本の山脈に埋め尽くされた弱小出版社の編集長・村上冬樹は、社長・平田昭彦(様)の方針転換でゴシップ路線を突っ走ることになりました。新しい編集長・高島忠夫はスキャンダルの捏造、雑誌の付録をトルコ風呂の盗聴テープのソノシートにするなど、傲慢で強引なコンテンツ至上主義を宣言します。

村上冬樹は低俗な路線についていけずに辞表を提出。他の記者たち・田中邦衛藤木悠ミッキー・カーチス安川実(ミッキー安川の本名)、当銀長太郎、経理・有島一郎らは生活のために残りました。

政治経済畑の取材しかしたことがない社員達ですが、高島忠夫にマインドコントロールされ、実際に発行部数がうなぎのぼりになり、給料の遅配もなくなったおかげで、高島忠夫の忠実なイヌになりました。しかし、事務員の中島そのみだけは、純真な乙女だったので、下世話な話題で盛り上がる社の空気にはうんざりでした。

ミッキー安川は村上冬樹の娘・浜美枝のことが好きでしたが、父親を裏切って高島忠夫に尻尾を振る形となっているため、現在では半ば絶縁状態なのでした。

いつもはお調子者で大きなことができない高島忠夫は実は昔、巨悪に挑戦して新聞社をクビになった硬派のジャーナリストだった過去があばかれていくので、さぞや最後はカッコよく終わるかと思ったのですが、所詮、野良犬たちのゲリラ戦に過ぎないのでした。

女優・中真千子が内科の病気で入院したのを、堕胎手術だったのではないか?と書き立てたミッキー・カーチスの記事は、まったくの事実無根。中真千子は母親・東郷晴子が進めていた見合い話がご破算になったので自殺未遂を起こします。

やっと掴んだ大手銀行の重役・田崎潤とバーのマダムのゴシップから、かつて不正を追求して頓挫した不正融資の事実に高島忠夫たちがやっと迫ったところへ暴力団・大木庄司関田裕高木弘たちが乱入し、やっと見つけた印刷工場のオヤジ・織田政雄、その女房・千石規子も含めて完全に押さえ込まれてしまいます。

底抜けに下品でダーティーな高島忠夫というのも珍しいのですが、馬鹿笑いをしない高島忠夫はもっと珍しいので、一見の価値はありますがあまりにも俳優のキャラクターとかけ離れすぎてピンと来ませんでした。

有島一郎を先頭に、ミッキー・カーチス、ミッキー安川(お!Wミッキー!)、当銀長太郎、藤木悠らがションボリと職安から出てきて、まあ、なんとかなるだろうという無責任な明るさが印象的でした。

高島忠夫の元恋人で池内淳子が出てきますが、高島忠夫では色気のかけらもないので、なんとも中途半端な印象は免れません。

オシャレで都会的な東宝の面々が、生真面目な記者から下世話なゴシップ屋へ変貌していく過程の軽妙なテンポが後半の真面目な話になると完全に失速してしまうのが惜しいところです。ただ、団体客・中島春雄@ゴジラ、広瀬正一@キングギドラ、大村千吉@狂気人間たちがヌードモデルの撮影会に突進する姿の浅ましさ、見境のなさを最大に風刺していたのは間違いないと思われます。

2012年02月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-02-20