鎮花祭 |
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■公開:1960年 ■制作:大映 ■企画:原田光夫 ■監督:瑞穂春海 ■原作:丹羽文雄 ■脚本:松浦健郎 ■撮影:中川芳久 ■音楽:池野成 ■美術:仲美喜雄 ■照明:渡辺長治 ■録音:須田武雄 ■編集: ■主演:根上淳(あえて、若尾文子ではなく) ■寸評:丹羽文雄、松浦健郎、池野成、この時点でドロドロしてきそうな予感。 ネタバレあります。 |
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二枚目俳優の剣が峰、三十代の後半にさしかかった根上淳、バタ臭い顔のスタアに何が起こったか? 若尾文子はテレビ局のディレクター・川崎敬三にスカウトされてテレビタレントになります。演技の勉強がもっぱら川崎敬三が独り暮らしをしていたアパートの一室でしたので、当然のように二人は結ばれました。野心満々の若いタレントをパワハラまがいの手口でテレビ屋が喰っちゃうってのは定番ですが、相手が若尾文子ですから、そうはカンタンに問屋は卸さないのです。 若尾文子の兄は終戦時に南方で捕虜になりつい最近復員してきた根上淳。彼は父親が経営するガラス工場の経営者としてバリバリ活躍していましたが、どうやらその原因は、若尾文子の友達で、気の進まない縁談を断って田舎から飛び出してきた山内敬子が同居したことらしいです。 デコちゃん(高峰秀子)にソックリで、かつ、デコちゃんみたいに鼻っ柱が強くない山内敬子にすっかりメロメロな根上淳。そりゃまあ戦地では女日照りだったでしょうし、あんな二枚目ですから戦前はモテまくったのではないかと推測されますから無理からぬこと。しかし、彼には戦地で無理やり現地人の女を犯して殺害したトラウマがあったのでした。 極限状態だったことを差っ引いても、自宅に出没したイエネズミを踏み殺して笑顔満面の根上淳に、山内敬子がドン引きしたのはこれから起こる不幸の序章に過ぎませんでした。 いやはやあの二枚目があんなことやこんなことを!とでも言いたくなるくらいな根上淳の変態ぶりが凄まじいです。新婚初夜にしくじってからというもの、まるで「異常性愛シリーズ・ハレンチ」の若杉英二のように嫉妬深くて陰惨な夫に大変身。一緒に風呂に入るのを拒否したとたんに新妻をベルトでスパンキングした日にゃあ、お母さんの吉川満子もさすがに息子を庇いきれるもんじゃあごさいません。 さっそく山内敬子は若尾文子の計らいでプチ家出。しかし恐怖のチェイサーと化した根上淳が血眼になっているため山内敬子は居所を転々としていました。その間、二代目社長夫人の座を狙って、工場長・潮万太郎の妻・村田千栄子がお色気ムンムンの愛娘・三木裕子を根上淳に接近させて、酒の勢いで妊娠までさせてしまいました。 山内敬子のほうは銀座アメリカ屋の若社長・本郷功次郎に見初められますが、身持ちが硬い彼女は素直になれません、ていうか、また根上淳みたいだったらと思うと、そら恐ろしいというところでしょうか。 川崎敬三の隠し妻・矢島ひろ子を強姦まがいの手口で犯した根上淳は、その事実をネタに若尾文子と川崎敬三を別れさせます。鬼畜のような手口ですが、戦時中に覚醒した根上淳の凶暴性は、異常な毎日の連続によりすっかり日常化してしまっていたのでタチが悪いにもほどがありました。 ああ、ここまで最低な根上淳は空前絶後じゃないでしょうか。孕ませた三木裕子ですら、山内敬子が気の毒になって改心したというのに、根上淳は妊婦を引きずり回して暴れるくらいに壊れてしまっていたのでした。 情念の濃さなら誰にも負けない若尾文子の存在が霞んでしまうほどの根上淳はとうとう山内敬子とは別れる羽目になり、彼女はどうやら本郷功次郎と結ばれるようです。神様みたいな、いや、お釈迦様のような本郷功次郎のおかげで救われた山内敬子。バージン捧げた人に妻があったくらいでへこたれる若尾文子ではないので、彼女もきっと立ち直るでしょう。 鎮花祭、悪疫の流行を抑えるために花々を神に捧げて祈る祭り。じゃあ、なんですか?悪疫って根上淳ですか?根上淳の下半身の暴走を抑えるために山内敬子が人身御供になったってことですか?なんか根上淳が気の毒になってきました。映画のラストではまったく触れられない、根上淳の今後が、吉川満子じゃなくて心配です。 (2012年02月05日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2012-02-06