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若い樹


■公開:1956年

■制作:東宝

■制作:宇佐美仁

■監督:本多猪四郎

■原作:小糸のぶ

■脚本:池田一朗、本多猪四郎

■撮影:山崎一雄

■音楽:飯田信夫

■美術:安倍輝明

■照明:猪原一郎

■録音:三上長七郎

■編集:

■主演:青山京子

■寸評:ふにゃふにゃしてるけど頼れる先生、佐野周二が生徒と一緒にハツラツと歩いているところが健康的でイイ。

ネタバレあります。


山田真二はいかにも東宝らしいハンサムだと思っていたら松竹出身なんですね。ま、どっちでもいいけど。

熊本県出身の高校生、青山京子は上京するために乗っていた汽車で、ベロベロに酔っ払ったオッサンたち・谷晃大村千吉たちに絡まれているところを、ハンサムな大学生の山田真二に救われました。救われましたって言っても、暴力沙汰でとっちめたわけではなく、結局のところ降車駅に着いたから酔っぱらいたちが勝手にいなくなった、だけ。それでもカッコいい都会の大学生さんにポーっとなっちゃう青山京子でありました。

青山京子の受け入れ先は、豪傑おばさんの清川虹子。九州弁まるだしの青山京子が入学した女子高では、無邪気な女子高生たちから「ばってんさん」というニックネームを頂戴しました。方言をからかうような発言に、担任の先生・佐野周二は生徒たちを諌めるとともに、悪気がない親愛の情だと理論的に説明します。

朴訥としてるけど笑顔がチャーミングで、まさに、ザ・お父さん的な佐野周二が担任の先生なので、青山京子も安心です。そして、さしたる根拠もなく人格を傷つけるようなビッチなふるまいにはとても厳しい宮桂子は、クラスの中でもカタブツと評判らしいですが、青山京子は素直に彼女の個性を受け入れる器の大きさを見せました。

実は卓球が得意だった青山京子は、佐野周二が同校の卓球部の顧問だったこともあって、早速、入部しました。部長の飛鳥みさ子は文句なしの実力者、二番手でレギュラーはお嬢様の森啓子、そしてピーチクパーチクやかましい河美智子 、なかなかユニークな面々です。

そして卓球部のコーチは、あのハンサムな大学生の山田真二でした。偶然ですが面識があった青山京子は、山田真二にお熱をあげている森啓子のジェラシー光線を浴びますが、持ち前の明るさと少々の鈍感さで全然気にしませんでした。というよりも、山田真二に信頼を感じていても恋愛の対象としては見ていなかったからですが。

未だ男女交際については厳しい世間の目が注がれていた時代です。そんな女子高のトイレに山田真二宛の一通のラブレターが落ちていたことから大騒動に発展します。最初に拾ったのは青山京子でしたが、中身を読んで、きっと落とした人は困っているだろからと届け出ること無しにそっと元の場所へ返しておいたのですが、他人のスキャンダルを蜜の味としている河美智子の手に、そのラブレターが渡ってしまったからさあ大変。

誰が書いたか?卓球部員たちの間で犯人探しが始まります。

いかにも幼稚な発想ですが、それくらい山田真二が部員たちにモテモテだったということが原因の一つであります。そんな騒動を横目で見ていた宮圭子の報告を受けた山田真二はこれ以上、問題が大きくなってはいけないと、コーチを辞めてしまいました。

つーか、山田真二が態度を明らかにしないからこういうことになるんであって、嫌われたくないとかそういうヘタレな根性がちらつくような、少なくとも実際はそうではなかったとしても、妙にヘラヘラしている山田真二が諸悪の根源という気がしてきます。

そうこうしているうちに、こじれた状況はラブレターの紛失という証拠隠滅工作によりさらに悪化、しかし、その状況を解決したのは佐野周二でした。大体、他人の私信を勝手に読むのがどうかしていること、それを触れ回るなんてオゲレツだというもっともな説教に、素直な女子部員たちは従いました。

そうこうしているうちに卓球部は連戦連勝、青山京子と飛鳥みさ子の、マジに上手い卓球技術のおかげでいよいよ関東大会の決勝戦に進出です。部員たちともすっかり打ち解けて順風満帆かと思われた青山京子、しかしその矢先、馬鹿な外国人が暴走させたモーターボートの事故で、お嬢様の森啓子が負傷。青山京子はお見舞いに行き、彼女のお父さん・志村喬とお母さん・一の宮あつ子にもすっかり気に入られたのでした。

さらに、カタブツの宮桂子の実家の家計が火の車であることを知った青山京子は彼女の代理でバイトを始めますが、過労で体調を崩してしまい関東大会の決勝戦で吐血して敗北してしまいました。

身を犠牲にして友達のピンチを救った青山京子に「なんでもかんでも抱え込んで無理しちゃうのは如何なものか?」と優しく諭す佐野周二。

ところで、いつの間にかコーチに復帰していた山田真二、オマエは結局のところ何も解決してないじゃんか!と、その役立たずぶりにイチャモン付けたいところですが、苦労人の宮桂子をサポートするナイスガイの太刀川洋一(寛)にお金を貸してあげたから勘弁してやろう。

失敗もするし、無茶もするけど、若い樹のようにスクスクと育って欲しい、そんな活力溢れる映画なので観てるこっちも思わずニコニコしてしまいます。平和な時代を生きる若い世代にイキイキと人生を謳歌してほしいという本多猪四郎監督の優しい映画でした。

2012年01月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-02-06