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白い崖


■公開:1960年

■制作:東映

■企画:本田延三郎、若槻繁

■監督:今井正

■原作:

■脚本:菊島隆三

■撮影:中尾駿一郎

■音楽:芥川也寸志

■美術:進藤誠吾

■照明:元持秀雄

■録音:岩田広一

■編集:

■主演:木村功

■寸評:木村功が水上スキー上手だって知らなかったなあ。

ネタバレあります。


常に90点を取る部下は優秀だが、120点取る部下は危険、いずれ自分が寝首をかかれるから。

経営者を目指すなら、経営者の目線で物を考えなければ成功はおぼつかないものであります。

社長令嬢・佐久間良子と恋人関係にある社長秘書・木村功は、冴えないサラリーマンであります。立身出世の野望に燃えて、目の前にある幸せを掴みかかっておりますが、佐久間良子は世間知らずのバリバリなお嬢様なので、まずは、お父さんである社長・進藤英太郎の結婚許可が必須です。

男手一つで育てた一人娘に対するお父さんの責任として、立派なお家でヌクヌクと幸せになって欲しいというのが本音ですから、一般庶民出身の木村功に勝ち目はあるのでしょうか?

進藤英太郎は中堅の証券会社の社長です。現在、勢力拡大の途上にあるため、官僚・小沢栄太郎への賄賂工作も活発です。木村功はこうした事実を知る、数少ない人物として、料亭の女将・三宅邦子からも呆れられるほどの、ガッつき野郎なのでした。

木村功は、さらに強力な社長の弱みを掴むために愛人・藤間紫の存在を突き止めます。社長が突然、愛人宅で脳溢血で倒れました。シメた!これは社長に恩を売る、一世一代の大チャンスだと思った木村功は、穏便な処置を主治医・明石潮に相談し、社長宅に居座って付き添いを続けました。

社内では社長の弟である常務・加藤嘉と、実務派の専務・山形勲が対立していました。加藤嘉にはヤマっ気が強く、お兄さんの歓心を買うためにチャライ資産運用で点数を稼ぎます。そういうところが実力者の山形勲は面白くありません。

木村功はたまたま、社長宅の金庫の中身を整理していた執事・織田政雄が出しっぱなしにしていた定期預金の満期日を見てしまい、社長から疎んじられるようになりました。そもそも、究極のプライベートである妾宅や金融資産のことまで、たとえ秘書とは言えど他人に知られるのは愉快なことではありません。

たとえ、それで命を救われたとしても、偉い人ほどメンツにこだわるものです。木村功と佐久間良子の結婚話にもNGを出した、病床の社長に対して、抗議した木村功でしたが、激昂したのが災いし社長は二度目の脳溢血の発作で死んでしまいました。

臨終に立ち会ったのは木村功だけということで、会社の幹部は社長の遺言を木村功から聞きだそうとしました。ここで、木村功の心の中の悪魔がムクムクと活動を活性化させてしまい、跡目は加藤嘉だというニセの遺言をみんなに伝えました。もちろん、佐久間良子のこともヨロシクってことです。

藤間紫は大切なパトロンの跡目として木村功にロックオン。社長令嬢と結婚した木村功を誘惑します。

もちつけない地位や金や名誉を手にしたとき、人間の真価が問われるわけですが、木村功は勝手に有頂天になっていたので、藤間紫と肉体関係を持ってしまいます。

加藤嘉のエコヒイキで社長室長に出世した木村功、何もかもが上手く行くかと思いきや、ひょんなことから、父親に愛人がいたこと、その愛人と自分の夫がデキてるかもしれないこと、脳溢血でぶっ倒れたら遺言なんか残せないだろうことを近所の医者・清村耕次から聞いて、すべては推測ですが、知ってしまった佐久間良子は木村功を問い詰めました。

すでに、社長の女中・中原ひとみも手に入れていた木村功、二股、三股がバレたら、将来の出世もセレブな暮らしも台無しです。おまけに、佐久間良子から「お里が知れる」と貧乏を馬鹿にされた木村功は、頭に来て佐久間良子を突き飛ばして殺してしまうのでした。

後は坂道を転げ落ちるように、ていうか、崖を転げ落ちるように木村功のボロが出まくります。留学中の姉・有馬稲子が妹の急死に疑問を感じて急遽帰国し、密かに新聞記者・河野秋武に捜査を依頼して、木村功に疑惑の目を向けていたのでした。

実にずさんな犯罪者であります。これが、大映で、田宮二郎が主演なら、有馬稲子もさっさとモノにしてしまい、完全犯罪を成立させてしまうところですが、卑怯で卑屈で金持ちに対して逆恨み度が高い(キャラクターを多く演じているような気がする)木村功ならではの、転落ぶりです。

彼は死刑になりました。しかも、処刑の日、看守・織本順吉の目の前で激しく抵抗、最後の最後まで無様なのでした。

タイトルの白い崖は、高台にある社長宅から見下ろす、都会のネオンのまたたきのことでしょうか?それとも、佐久間良子を葬り去った、絶壁のことでしょうか?いずれにしても、崖とくれば転落というのがドラマのセオリーでありますね。

2012年01月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2012-01-30