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悶え


■公開:1964年

■制作:大映

■企画:藤井浩明

■監督:井上梅次

■原作:平林たい子

■脚本:舟橋和郎

■撮影:渡辺徹

■音楽:三木稔

■美術:後藤岱二郎

■照明:安田繁

■録音:須田武雄

■編集:関口章治

■主演:若尾文子

■寸評:

ネタバレあります。


恋愛結婚した相手の男が、結婚した後で不能だと分かったら、さて、どうしましょう?

若尾文子高橋昌也は、盛大な結婚式を挙げて、箱根の小涌園ホテルへ新婚旅行に出かけます。

初夜って大事よね、ソコからが本当の夫婦だと思うの、私。若尾文子はすでにワクワクしています。勝負をかける、スケスケのピンクのネグリジェを旅行カバンの一番上にセッティングしているところからして、本気度合いが推察できようというものです。

しかし、初日、高橋昌也はなんと先に寝てしまいました。ま、焦ることもないわね、と若尾文子。

翌日、やはり高橋昌也は部屋を後にしてしまいました。え?何?私のこと嫌いなの?

実は、高橋昌也は交通事故で男性機能が不能になってしまったそうです。そんな重大な事実を今さら、ここで告白するなんて!とは思う若尾文子でしたが、きっと治るという医者の言葉もあるし、ヤルだけが夫婦じゃないわと、自分自身に言い聞かせるように、逆に高橋昌也を励ますのでありました。

たまたま同じホテルに、夜中までダンスをして騒いでいるグループが来ていて、主催者が若尾文子の旧友の江波杏子であることが判明。悶々としていた若尾文子としては軽い気持ちでそのパーティーに参加したのでした。そこには、若くて逞しい男・川津祐介が来ていました。素性は分かりませんが、彼はセクシーな瞳で(川津祐介って目の色が普通の日本人よりやや薄い色)、早速、若尾文子にモーションをかけてきました。

同じグループには年増の美容師・藤間紫や、ドスケベなオッサン・村上不二夫も参加していましたが、川津祐介は異色でした。

ところが、実は川津祐介は高橋昌也の会社の部下でした。ビックリ仰天な若尾文子に対して、実に堂々と知らんぷりをする川津祐介。いい度胸にもほどがあります。

さらに、高橋昌也は機能回復のためにはジェラシーも必要なのではないか?という、これまたインチキ臭い医者・多々良純の薦めもあって、こともあろうに「川津祐介と浮気してみないか」というトンデモナイ提案を若尾文子にするのでした。

ふざけんじゃないわよ!人の気持ちも知らないで!と下品にブチギレル若尾文子ではありませんが、気持ちとしてはこんな感じで、当然、却下です。

藤間紫の甥っ子でもあり、彼女の若いツバメでもあった川津祐介は、実は江波杏子ともデキていました。熟女から若いお姉ちゃんまで三股とはおそれ入谷の鬼子母神です。おまけに江波杏子は妊娠までしているらしいです。取り乱した藤間紫は、若尾文子を呼び出して川津裕介と江波杏子を別れさせるように依頼しますが、いくらなんでも、ねえ?それに、江波杏子は、藤間紫への面当てとして子供を産んでシングルマザーの道を選ぶそうです。

モテまくる川津祐介、お相手は藤間紫、江波杏子、若尾文子(は未遂)、それと婚約者まで、これほどモテまくり、ヤリまくりの川津祐介はあまり見たことがありませんでしたので、ある意味、新鮮でした。

いや、まったく、若尾文子の周囲の人々の下半身活動はいつものことですが、実に活発でありますね。

さて、川津祐介は酔っ払った若尾文子をホテルに連れ込みますが、そこへ高橋昌也が乱入します。

「不能のくせに結婚なんかするからだ」と、半笑いの川津祐介にマジで痛いところを突かれた高橋昌也は逆上します。

部下と分かっている川津祐介に下半身のプライバシーを漏らされたのでは、いくらなんでも高橋昌也が気の毒であります。

しかし、この逆ギレのおかげで高橋昌也の機能が回復してしまったのです。瓢箪から駒とはまさにこのことですね。

一時は、多々良順に輪をかけて胡散臭い人工授精の専門医・中条静夫を頼りそうになった高橋昌也と若尾文子の夫婦でしたが、これで万事、めでたし、めでたし。

フェロモンがブリブリしている若尾文子の「悶え」よりも、わけのわからない絵の具がグルグル回る、円谷プロの「ウルトラQ」のタイトルバックみたいなイメージカットを背にして「悶え」まくる高橋昌也の熱演が不気味で圧倒的にイッちゃってます。

このままテンションあがりきって、高橋昌也の額がパックリ割れたらどうしようかとハラハラしました(「吸血鬼ゴケミドロ」参照)。

2011年10月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-10-17