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なつかしの顔


■公開:1941年

■制作:東宝

■制作:氷室徹平

■監督:成瀬巳喜男

■原作:

■脚本:成瀬巳喜男

■撮影:木塚誠一

■音楽:太田忠

■美術:北村高敏

■照明:

■録音:宮崎正信

■編集:

■主演:花井蘭子

■寸評:最近の戦中映画は農耕馬も軽種のサラブレッドやアラブだったりするけど、本作品には中間種〜重種の農耕馬が登場。

ネタバレあります。


戦争中、まだ日本がイケイケだったころの映画です。実情はともかく、国内報道的にはまだ破竹の勢いだった頃の話です。

食糧事情は怪しくなってはいましたがまだ本土空襲とかはありません。その頃の田舎では、働き手である若い男はみんな戦争にとられてしまい、男と言えばジイサンとガキばっかりです。都市部は知りませんが、田舎ではそういうことになっていました。

模型飛行機、と言っても竹ひごにゴムの動力でプロペラを回すというシンプルなものですが、多少お金にゆとりのあるご家庭の子息・小高まさるは買ってもらえるけど、ゆとりのない家の子供・小高たかしは買ってもらえないという少々高級な玩具でありました。

小高たかしは、お兄さんのお嫁さんである美人の義姉・花井蘭子とまだ赤ちゃんである義弟と、お母さん・馬場都留子と一緒に暮らしています。小高たかしの家では現在、お兄さんが出征中です。

小高たかしは、お友達の模型飛行機を借りて遊んでいたところ高い木の枝にひっかけてしまい、自分で木登りして取ろうとしたところ転落して足を負傷してしまいました。近所の大人が助けてくれて自宅へ運んでくれましたが、幸い命に別状は無いようです。

街にニュース映画の上映があるそうで、その映画に小高たかしのお兄さんが一瞬写っているらしいのです。早速、お母さんが観に行きますが、戦地からの映像なので、お母さんはハラハラドキドキ、どの兵隊さんが写っても、涙が出てしまいまともにスクリーンを見ることが出来ず、お兄さんがどこにいたのかも見逃しました。

仕出しウォッチング(じゃないけど)は一瞬の気合です、動体視力と顔認識または形状(体つきや仕草)認識技術を鍛えましょう。

さて、足を怪我して映画を観に来れない小高たかしに、テキトーに報告するお母さんでありました。次は花井蘭子が赤ちゃん背負って観に行くことになりました。途中のおもちゃ屋さんで、小高たかしが欲しがっていた模型飛行機を目にした彼女は、映画を観ないでそのお金で模型飛行機を買ってあげたのでした。

後で、お姉さんが自分のために映画を我慢して飛行機を買ってくれたことを知った小高たかしは、その優しさが嬉しすぎて、悲しくなってしまいました。そんな我慢を自分のためにしてくれなくても、いいのに、と。

映画の上映は終わってしまうので、街まで歩いていけない小高たかしはお兄さんの映画を観ることができないかと思っていましたが、やさしい校長先生はプリントを借りてきてくれました。出征兵士の家族に見せるのですから、きっと快く貸してくれたのでしょう。上映会が地元で開催されることになり、小高たかし、お母さん、お姉さんはとても喜んだのでした。

これでやっと「なつかしの顔」に出会える!喜ぶ一家でありました。

とても小さな映画ですが、子役は達者だし、お姉さんは美人だし、家族がお互いにいとしみあう心根は観ているだけで、こちらもほっこりと暖かくなります。

ものすごく押し付けがましい戦意高揚というよりは、ホームドラマの小品という印象でした。

劇中に日本ニュースが登場するので、他のニュースをついでに観ていると、当時の状況がわかる仕掛けになっています。当時を体験された方には懐かしいのではないでしょうか?

そういえば、リアルタイムで観たニュース映画(戦後もずいぶんたっても、映画の最初にニュース映画がかかってたんですよ)は「アリ対猪木、世紀の対戦」でありました。戦後もかなり長いこと、あったんですよ、ニュース映画って。

2011年10月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-10-10