「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


ジーンズブルース明日なき無頼派


■公開:1974年

■制作:東映

■企画:日下部五朗、佐藤雅夫

■監督:中島貞夫

■原作:

■脚本:中島貞夫、金子武郎

■撮影:増田敏雄

■音楽:井上忠夫

■美術:吉村晟

■照明:金子凱美

■録音:溝口正義

■編集:神田忠男

■主演:梶芽衣子

■寸評:

ネタバレあります。


有料乱交パーティーが行なわれている飲み屋のマスター・菅貫太郎に店番を任されていた梶芽衣子が、こんなダルダルな日常を抜け出して刺激を求めて町をさすらっていると、そこで、全身欲求不満の渡瀬恒彦と遭遇してしまい、和製「俺たちに明日はない」してしまう映画。

渡瀬恒彦は借金の返済に困った気の毒な人々を救済するアルバイトをしています。

つまり、金を貸した人をこの世から抹殺するお仕事です。内田良平室田日出男川谷拓三は、高利貸の北村英三をスコップで惨殺します。渡瀬恒彦は死体を遺棄するための穴を掘る役目でしたが、あまりの惨劇に怖くなったのと、高利貸が持っていた大金に眼が眩んで、これを強奪するとみんなで乗ってきた自動車を奪ってダッシュで逃げ出しました。

途中で接触事故を起こした渡瀬恒彦は相手の車に乗っていた梶芽衣子と共謀し、乗ってきた自動車を爆発炎上させて証拠隠滅を図ります。

内田良平たちは現金を横取りされたため、血眼になって渡瀬恒彦を追跡するのでありました。

事故現場を通りかかった自動車の運転手・福本清三を轢いてしまった渡瀬恒彦と梶芽衣子でしたが、もう後戻りはできません。福ちゃんの死体を放置したまま新たな自動車を奪ってさらに逃走を続けました。

しかし、不死身の福ちゃんは死んでませんでした。

自動車のナンバーからアシがつくのを恐れた二人は、インチキな自動車修理工場の社長・山本麟一に頼んで、適当な自動車に乗り換えますが、それはすでに人間二人を轢き殺した呪いの自動車でした。なにせ、この工場は、盗品のナンバー付け替えやら、アヤのついた自動車の過去を消して転売するのが主な事業内容なのです。呪いの自動車を高額で売りつけた山本麟一と社長夫人・菅井きんの高笑いが素晴らしい、ロクでもない人たちのお友達はロクでもない人たちだということですね。

呪いの自動車があっさりパンクします。おまけに内田良平、室田日出男、川谷拓三のトリオに、渡瀬恒彦の情婦だった橘麻紀まで加わった追跡軍団に発見されてしまいます。

渡瀬恒彦と梶芽衣子は自動車を追跡され、事故った拍子に渡瀬恒彦の指が一本飛んでしまいました。負傷して自動車も動かなくなった二人は国鉄のコンテナに隠れて、追跡者を巻く事に成功しましたが、そのまま舞鶴まで行ってしまいます。

しかし逃走途中で、大金のほとんどを歩道橋の上からばら撒いてしまい、しかも、欲深い通行人たちに横取りされてしまったので、困った渡瀬恒彦は、梶芽衣子に狩猟中のハンター・曽根晴美を誘惑させて猟銃を強奪、しかもイキオイあまって曽根晴美を射殺してしまいました。

もうこうなったら、あとは銀行強盗でも何でもアリです。渡瀬恒彦と梶芽衣子は肉体的にも結ばれて、強盗殺人を重ねて渡瀬恒彦の故郷を目指します。彼の現金強奪の目的は妹・堀越陽子が男に貢ぐために勤務先の役場の公金を使い込んだ穴埋めのためなのでした。

しかしその妹は実はとんでもないアバズレで、男との遊ぶ金欲しさにお兄ちゃんに嘘八百の手紙を書いていたのでした。河原の小屋に隠れた渡瀬恒彦と梶芽衣子にところへ、復讐の鬼と化した室田日出男、川谷拓三、内田良平がやって来ます。橘麻紀と川谷拓三を殺害して逃げた二人、内田良平と室田日出男は警官隊に逮捕されました。

今度は小屋の周囲を警官隊が取り囲みます。妹は逃げ出しました。渡瀬恒彦は川谷拓三たちに頭をカチ割られた上に刺されてしまい絶命します。一人残った梶芽衣子は、警察のスナイパーたちに一人で立ち向かうのでした。

足場の悪い河原でのアレコレですので、運動性能の高い渡瀬恒彦とピラニアコンビですら苦戦気味ですが、梶芽衣子のヨタヨタ、モタモタぶりは、観客が思わず「大丈夫?芽衣子ちゃん!」と駆け寄って抱きしめてあげたくなるくらいでした。顔面のシャープさに反比例する運動神経の鈍さが、梶芽衣子のある意味、魅力ではありますね。

本家の「俺たちに明日はない」は二人揃って蜂の巣でしたが、本作品では梶芽衣子の美しいオデコを一発貫通でエンドでした。いや、こっちのほうが美しくてステキです。

渡瀬恒彦のテンションの高さと梶芽衣子の低さが好対照でなんとも言えない魅力です。テンションが低いからといってブレーキになるわけでもなく、高いからといって無制限でもなく、時にはビビリながらも互いに傷をなめあう動物的なカップルの壮絶な数日間、日本でもこういう映画アリなんですね。

しかし梶芽衣子、この人は一生「さそり」してないといけないようです。歳とっても昔は「さそり」だった人、そういう一貫性もまた、良しとしましょう。

2011年10月10日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-10-10