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北国の街


■公開:1965年

■制作:日活

■企画:笹井英男

■監督:柳瀬観

■原作:富島健夫

■脚本:倉本聰

■撮影:柿田勇

■音楽:池田正義

■美術:柳生一夫

■照明:高橋勇

■録音:八木多木之助

■編集:丹治睦夫

■主演:舟木一夫

■寸評:

ネタバレあります。


新潟県の高校生・舟木一夫は絹手織物職人のお父さん・信欣三が男手ひとつで育てた一人息子です。家は貧乏でしたが、舟木一夫は学業の成績が優秀だったので数学の先生・葉山良二も大学進学に太鼓判です。舟木一夫は新聞配達をしながら大学の入学費を地道に貯金箱に貯めていました。

小学生から中学生くらいが相場の当時の新聞少年の中に入ると、あまりに巨大な新聞配達少年な舟木一夫が、微笑ましいです。

舟木一夫のクラスには、家は地元の名士ですが、しょっちゅう授業をサボったり校舎の陰で喫煙している不良生徒・山内賢がいました。彼は腕っ節が強く、親分肌でしたが友達と呼べる人はいないようでした。

同じ学年には、子分を従えてブイブイいわしている小柄な不良・根岸一正もいました。彼の素性は定かではありませんが、汗をかかないタイプの不良らしく、子分の数で相手を威圧したりします。例えば、あまり風采のあがらない子分が片思いした女子生徒が、実は舟木のクラスの男子とすでに恋人同士だったりすると、恋敵を呼び出して「女を譲れ」と脅したりするわけです。

こういうタイプは、親分である根岸一正がすでに女にモテないので、子分たちも連座制ともいうべきモテない集団になってしまうわけですね。

列車通学の舟木一夫は、ある日、勤勉そうな他校の女子生徒・和泉雅子を目撃して、なんとなく気になっていました。しかし、同時に山内賢も和泉雅子に、胸がドキドキしていたのでした。

和泉雅子はイイトコのお嬢さんで、こちらも学業の成績優秀でしたが、身体は弱そうでした。舟木一夫は彼女のことが大好きになり、和泉雅子も舟木一夫のことを好ましく思うようになります。ところが、実は和泉雅子には、本人の証言によると「オレが最初に唾をつけた」らしい根岸一正も惚れていました。当時はまだ可愛かった和泉雅子も災難としか言いようがありません。

根岸一正は、和泉雅子が舟木一夫に気があるとわかると早速、舟木一夫を呼び出し、手下に命じてフクロにします。長身の舟木にはリーチで勝てないと踏んだのでしょうか?おまけに、アキラメも悪い根岸一正は、あきらかに和泉雅子に嫌われているにもかかわらず「世の中では力のある者が勝つんだ!」と、わけのわからない自己正当化の持論を披露するのでした。

だーかーらー、ライバル排除したらそれで女がモノになると思っているようなクソ野郎に、死んでも惚れるわけがねえんだってば!と、心の中で叫んだかもしれない和泉雅子ですが、彼女は上品なのでそんなコトは言いませんでした。

そこへ、恋のライバルとはわかっていても舟木一夫と和泉雅子の将来のために、身体を張るナイスガイ、山内賢の登場です。

タイマンだって約束したのに、子分を連れてきた根岸一正に、一人で対抗する山内賢。子分たちも、根岸一正に卑怯ぶりに嫌気がさしていたのかも知れません、山内賢に2〜3発殴られるとクモの子を散らすように親分を一人取り残してさっさと逃げてしまいました。

ここが卑怯の見せ所です!さっそく折りたたみナイフを取り出した根岸一正、山内賢は素手で対決、さて、その結末は・・・

いよいよ実力テストの日、舟木一夫の父親が病気で倒れてしまいました。長期入院が必至らしく、収入は途絶えるし、病院の費用はかかるし、ついに舟木一夫は大学進学を断念、山内賢といっしょにお父さんの手織物職人のあとを継ぐことにしました。

和泉雅子は実は白血病であまり余命が無いそうです。やさしいお母さん・東恵美子は娘に精一杯青春させてあげたかったので、試験をパスした和泉雅子は一人で東京の大学へ通うべく、新潟を離れていきました。

雪国のロケがきれいで、その中を元気よく走り回る若人たちの、恋とケンカと進路問題が清々しく描かれます。

特に、自分のほうが才能もあるし将来性もありそうなのに、女心を優先して身を引く山内賢の好漢ぶりが印象に残ります。

別に舟木一夫がいなくても成立しそうな気がするのは、和泉雅子と山内賢がしっかり芝居をしていてくれるからなので、舟木ファンは感謝しましょう。舟木一夫って何か困ったときに見せる、叱られた子犬のような表情が期待以上にキュートなことを発見しました。

さすが青春アイドルスターでありますな。

2011年10月02日

【追記】2011/9/25 この感想文を書いているときに山内賢さんの訃報が入りました。ご冥福をお祈りいたします。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-10-02