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あゝ同期の桜


■公開:1967年

■制作:東映

■企画:岡田茂、俊藤浩滋、秋元隆夫

■監督:中島貞夫

■原作:毎日新聞社刊、海軍飛行予備学生十四期会による遺稿集『あゝ同期の桜・帰らざる青春の手記』

■脚本:須崎勝弥、中島貞夫

■撮影:赤塚滋

■音楽:鏑木創

■美術:鈴木俊孝

■照明:金子凱美

■録音:荒川輝彦

■編集:神田忠男

■主演:松方弘樹

■寸評:補充兵役の西村晃、脚本の須崎勝弥はともに、第14期海軍飛行予備学生出身

ネタバレあります。


会社も制作年度も違いますが、1955年、新東宝・制作、松林宗恵・監督、須崎勝弥・脚本の「人間魚雷回天」をふと思い出しました。

学徒出陣した海軍の予備学生たちの話です。

松方弘樹村井国夫島田景一郎千葉真一蟹江敬三夏八木勲たちは学業を途中で断念して厳しい訓練の毎日です。教官・堀田真三小沢昭一はいままで戦争にも行かないで勉強させてもらったんだから、国の危急存亡にあたっては一命を賭せという説教をされると反論もできません。

「陸軍より海軍のほうが楽かと思った」という千葉ちゃん、戦争継続に懐疑的な村井国夫、蟹江敬三はすでにバリバリの軍国主義者と化してました。

千葉真一には身寄りがいなかったのですが、松方弘樹のところへ訪ねてきた妹・藤純子(富司純子)と相思相愛になります。

基礎的な訓練が済むとそれぞれ専門職に分けられていきます。千葉真一は偵察、松方弘樹は操縦、村井国夫も別々の配属が決まります。操縦の教官は高倉健でした。松方弘樹は高倉健を後部座席に乗せて発進しますが、エンジントラブルで不時着します。機は破損しましたが松方弘樹は無事でした。しかし、高倉健は片目を負傷してしまいました。

戦局はどんどん悪化します。南方戦線は玉砕、敗戦、撤退の報告ばかりでした。

村井国夫と千葉真一が松方弘樹の配属先へ合流しました。

いつのまにか好戦的な思想に転換した村井国夫でしたが、これからというときに基地が空襲されて戦死します。村井国夫を野辺送りする仲間達、いままで反目していた蟹江敬三と松方弘樹は、互いに生死を共にする仲間であることを確認して和解します。

しかし飛行隊の目的は、敵へ攻撃を仕掛けるのではなく、必殺の体当たりになってしまいます。つまり、彼らは特攻隊になるのです。

指揮官は鶴田浩二に交代しました。実は高倉健は松方弘樹が起こした事故で片目を失ってパイロットではなくなっていたからです。かつての教え子が特攻に行くので高倉健は一緒に行きたいと言いますが、鶴田浩二に「オレが死んだ後を頼む」と言われてしまいます。

補充兵も高齢者が増えてきました。その中の一人である西村晃は、特攻出撃の命令をもってくる飛行機が、飛来しないことを毎日、祈っていました。

今日も来ない!と密かに喜んでいた西村晃でしたが、実は連絡の飛行機は撃墜されていたのでした。ついに、特攻出撃の命令が下ります。

すでに女房・佐久間良子と赤ん坊がいた夏八木勲。佐久間良子は夏八木勲が入隊するときに、ウエディングドレスを引き千切ってマフラーにするよう頼んでいました。出撃前の自由行動の時間、佐久間良子とはぐれてしまった夏八木勲でしたが、ギリギリで再会できました。

千葉真一は藤純子に別れを告げます。まさか、特攻行きますとは言えないので、納得のいかない藤純子ですが、事情を知っている松方弘樹は悩みます。

松方弘樹のもとへは両親・石山健二郎三益愛子が訪れていました。父親は、はじめは特攻隊は誉れだと強気の発言でしたが、別れ際には「こんなに早く別れると知っていたら、もっと別の育て方があったろうに!」と慟哭します。

生まれてはじめて、石山健二郎に泣かされた一瞬でありました。

全員が飛び立って行きます。西村晃がそれをジッと見送る姿に号泣です。

ここで西村晃を持ってくるのは反則だよな、と思いつつ。観客の思い入れではありますが、スクリーンの人と共感できるのはこれまた感動するものですね。

実写のニュースフィルムが多く挿入されています、本当に人が死ぬ場面を目の当たりにするわけですね。映画でニュースフィルムを見せられるのは辛いので実はNGとしたいところです、映画は作り物であって欲しいです。金払って、人が本当に死ぬところなんか見たくないというのが本音です。

あの、ちいさな影は、ミニアチュアではありません、人が本当に乗っている飛行機です。

「そのとき彼らは生きていた」のテロップでまたもや号泣です。終戦の4ヶ月前のことでした。

このほか、学徒兵が制裁を受けているところへナイスなフォローをする軍医役で天知茂が出演していました。

原作が遺稿集ですから、本作品を劇映画と呼ぶのは気が引けます。ドキュメンタリードラマというほうが適切かと思います。

士官の役どころで小池朝雄が出てきます。戦友たちが歌うのは軍歌「轟沈」ですが、小池朝雄は本作品の後、中島貞夫監督の「温泉こんにゃく芸者」で「轟沈」を歌います、全然関係ないと思いつつも不思議な?がりを感じてしまった次第です。

そうそう「轟沈」はやはり中島貞夫監督の「極道社長」でも戦友という設定で室田日出男と川谷拓三が歌います。

好きなの?監督。

2011年09月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-09-26