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美貌の都


■公開:1957年

■制作:宝塚映画

■制作:藤本真澄、金子正且

■監督:松林宗惠

■原作:

■脚本:井手俊郎

■撮影:遠藤精一

■音楽:斎藤一郎

■美術:村木与四郎

■照明:石川録郎

■録音:宮崎正信

■編集:

■主演:宝田明

■寸評:司葉子のキャットファイト一発!

ネタバレあります。


神戸にある零細企業の金属加工工場で働く女工・司葉子には同じ工場で働く宝田明という恋人がいます。司葉子の家は、母・清川虹子、高校生の弟・伊達純という家族構成で、長屋に住んでいます。

宝田明は故郷に幼い弟妹を含めた家族がいるので、毎月の仕送りが欠かせません。親孝行な良い子です。

工場の社長・上田吉二郎は経営状態が芳しくないので、部品メーカーの社長の息子・木村功に支払を延ばしてもらえるように平身低頭です。上田吉二郎の息子・山本廉は年甲斐もなく司葉子が大好きなので、時々、高価な贈り物とかをしています。しかし、所詮は零細企業の跡継ぎ息子、将来性はありません。

木村功が司葉子を見初めました。

司葉子が過労で目が痛くなったとき、木村功は彼女をパパのお友達が院長をしている大病院へ送ってあげました。きっと治療費も格安だったに違いありません。

スマートでカッコいい木村功、という設定に違和感がありますが、見逃しましょう、映画が止まってしまいます。

セレブな院長・斎藤達雄の治療によってめきめき回復しそうな司葉子が、山本廉や宝田明のように自分と同じレイヤーにいる男性たちとは桁違いの木村功に憧れたとしても何の不思議もありません。

ゴージャスなレストランでのお食事、ホームパーティーにはわざわざ宝田明も連れてくるように、司葉子に言う木村功の恋愛感があきらかに変だと普通なら気がつきますが、のぼせ上がった司葉子はルンルンなので言われたとおりにします。

セレブのボンボンたちも、パーティー会場で一番美人の司葉子に興味津々です。実は木村功には同じセレブの婚約者・扇千景がいたのです。彼女は親同士が決めた結婚なんかどうでもよくて、寄ってくる男には平気で唇や身体を許す多情な女性でした。木村功も彼女には絶望していましたし、ついでに司葉子を見せ付けてやろうというブラックな狙いもありました。

恋人としては宝田明のほうが、カッコいいのですが、結婚となると話は別です。司葉子は目の前の幸せにすがりつきそうです。

木村功の紹介で、町工場から琵琶湖にあるホテルの販売員に転職した司葉子は、ヤケになって工場を退職してしまった宝田明と再会します。彼女は木村功に、宝田明の再就職も頼んであげようとしましたが、恋敵に仕事の世話をしてもらうなんて男のプライドが許しません。宝田明は司葉子と喧嘩別れしてしまうのでした、

やさぐれた宝田明は喧嘩のあげくに、街のフーテン娘・環三千代と同棲します。

司葉子は木村功の子供を妊娠してしまいましたが、彼は堕胎を迫ります、それでもいつか必ず結婚するという約束を信じた司葉子は子供を堕しました。

お母さんの清川虹子は、司葉子の若気の至りを諌めます。案の定、木村功の態度は一気に冷たくなってしまいました。

飲み屋の女将・浪花千栄子は世話好きでしたので、東京で恋人に捨てられ堕胎までした女・淡路恵子を拾って同居していました。司葉子の家の最寄り駅で駅員をしている小林桂樹は宝田明と同郷の先輩で、淡路恵子のことが大好きですが、彼女の男性に対するトラウマはかなり根深いのです。

司葉子の口から木村功の名前を聞いた淡路恵子は顔色を変えます。

木村功の初恋の人は淡路恵子でしたが、親の反対で無理やり別れさせられていました。それが彼のトラウマで、司葉子のように婦女子を金で釣って弄んで捨てていたのでした。

つまり、木村功は自分に惚れてきて自分が捨てた女には興味が無いけど、自分を捨てた女には未練タラタラという女の腐ったような野郎なのでした。

淡路恵子は、司葉子の目の前で木村功の不実を暴いて、横っ面を張り飛ばして完全決別宣言。宝田明も小林桂樹の説得と、司葉子への絶ち難い未練で、環三千代と別れました。

本作品の最大の見どころは、司葉子とルックスはソックリ(二役なので)だけど性格は正反対のズベ公と肉体関係をもった宝田明に嫉妬した環三千代と司葉子のキャットファイトでありましょう。あわや刃物三昧かと思いましたが、宝田明の顔を軽く削いだだけで終了でした。

恋に臆病になっていた木村功と宝田明が両方とも面を張られて我に返るというオチでした。

「誰でもよかった」これほど身勝手で失礼で厚かましい恋愛の理由はありません。木村功と宝田明の二人は高い授業料を払ってこれを学びました。

本作品の男子達はもれなく腰がふらついておりましたが、淡路恵子、司葉子、そして環三千代、浪花千栄子も清川虹子も、女子のほうは一人残らずヴァイタリティと母性に溢れています。

松林監督の映画は慈愛があるといいますが、母性も強いようですね。

2011年08月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-08-29