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海潮音


■公開:1980年

■制作:ATG

■企画:多賀洋介

■監督:橋浦方人

■原作:

■脚本:橋浦方人

■撮影:瀬川浩

■音楽:深町純

■美術:池谷仙克

■照明:岡本健一

■録音:本田孜

■編集:荒井真琴

■主演:池部良

■寸評:

ネタバレあります。


池部良は二枚目です。二枚目を職業にした俳優の一人です。本作品はその地位と名誉と栄光を木っ端微塵にしようという池部良・破壊工作映画であります。

ATGは作品のカラーが総じて貧乏なので日本海(当時は裏日本)が馴染みます。

海潮音というのは「潮騒」のことだそうですよ。

日本海のどーんと面した田舎の町、地元の旧家の主人で実業家でもある池部良は妻を亡くして現在、実母・浦辺粂子、高校生の娘・荻野目慶子、通いの家政婦・上月佐知子と暮らしています。

イングリッシュポインターらしい猟犬がペットなので、池部良の趣味は狩猟です。早朝、犬を散歩中に、池部良は波打ち際で突っ立っている若い女・山口果林を目撃しますが、女と見たら片っ端からちょっかい出して「スケベ良」と異名を取ったのは昔のことさ、とでも言いたげに(ウソです)スルーしました。

運転手・近藤宏つきの高級自動車で出勤途中、山口果林が卒倒したのを見た池部良はすぐさま彼女を自宅へ運び込みました。普通、そういう厄介な荷物はかかわりをさけて、病院か警察へ持ち込むのが常識だと思いますが、一目会ったそのときからすでに、池部良の心の中にモヤモヤしたものが芽生えていたと思われます。

山口果林は一時的な記憶喪失らしいです。医師・早川雄三によると大きな病院で診察してもらえとのことですが、外傷性ではないので治るかどうかも微妙とのこと。このまま居座られても病院は治療費回収できないし、警察としてももてあましそうだったので、池部良に無償で引き取ってもらったことに地元警察の巡査・木村元も感謝しきりです。

しかし、ハンサムでお金持ちの男やもめのところへ、得体の知れない若い女が転がり込んだとなれば、町中で噂にならないはずもありません。そろそろ少女から女になりかかりの荻野目慶子も混乱気味です。

荻野目慶子にはよき相談相手がいました。地元のガソリンスタンドに勤務しているオジサン・泉谷しげるです。彼は少し足が不自由です。泉谷しげるは荻野目慶子のお母さんの弟です。

偉そうでとっつきにくいお父さんに比較して、貧乏臭いけど穏やかな泉谷しげるには何でも話せる荻野目慶子でした。

泉谷しげるは、池部良の世話でガソリンスタンドに就職しているのですが、毎晩、たいした稼ぎもないくせに地元のスナックへ美人ママ・ひし美ゆり子と、ポッチャリ型のお姉ちゃん・烏丸せつこ目当てに通っていました。烏丸せつ子は東京へ出たいらしく、東京で働いていた経験のある泉谷しげるといい感じらしいです。

泉谷しげるは、お姉さんの面影のある荻野目慶子のことが心配なので、若い女とアヤシイ感じになってきた池部良に説教しますが、そんなもん東宝の大スタア目の前にしたらどう見ても勝負はついてますし、池部良の奥さんは泉谷しげるのことを心配して亡くなったという事実もあって、スゴスゴと退散していまい、烏丸せつこにもフラれて町を去りました。

年甲斐もなく若い女に手をだしているかもと思うと気が気でない荻野目慶子、こんな複雑な大人に囲まれたら情緒不安定もむべなるかなです。

そしてついに、その日がやってきます。

こともあろうに、還暦すぎた池部良が山口果林と濡れ場を演じていたのです。イヤよイヤよと言いながら、やっぱカッコいいかも、と山口果林が思ったかどうか知りませんが、そこを目撃してしまった荻野目慶子はついにブチキレました。

殺されそうになった山口果林は家を飛び出して去って行きます。荻野目慶子はたぶん、この先精神を病むかもしれませんがとりあえず、海に向って走っていきました。

しかしここまで女に抵抗される池部良というのは、往年のファンからドン引きされること請け合いです。まさに、強姦まがいと言ってよいでしょう。

そんなもん見せられたら荻野目慶子じゃなくても「イイトシこいて何やってんだ!このスケベ(良)!」キレるよなあ、お客さんの同情を一身に集めた彼女の明日が心配です。

2011年08月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-08-29