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夜の牙


■公開:1958年

■制作:日活

■制作:児井英生

■監督:井上梅次

■原作:

■脚本:井上梅次、渡辺剣次

■撮影:岩佐一泉

■音楽:佐藤勝

■美術:中村公彦

■照明:藤林甲

■録音:福島信雅

■編集:辻井正則

■主演:月丘夢路(だと思います)

■寸評:

ネタバレあります。


井上梅次監督なんかね、もう全部「101匹月丘夢路大行進」とかにすればいいんですよ!(かなり投げやり)

この映画の主人公は事件性のある治療について警察への届出の義務を怠る、というか全部、若気の至りとかでウヤムヤにしてくれる、その筋の方々には重宝されているお医者様です。普通ですと、そういうシチュエーションでは治療代だけは(当然、保険の適用除外で)受け取るというのが定石でありますが、お支払にも格段の配慮があるようです。

「努力・友情・勝利」という少年ジャンプの法則を尊ぶ日活の大スタアが非合法な活動を推奨するような役どころは如何なものか?ましてをや、それを生業とするのは?などの議論があったかどうかはともかく、中途半端なアウトローの石原裕次郎が、弟分のチンピラ・岡田真澄の希望により某映画会社のニューフェース試験を受けるために、自分の戸籍を流用してあげることにしたのが、本作品の事の発端です。

東京のとある町で医者をしている裕次郎、二枚目で、医者としても優秀で、未だに独身。若い頃にはヤンチャだったらしいので、街のチンピラたちからも尊敬されているのでした。

戸籍謄本を本籍地で取得しようとした石原裕次郎は区役所の戸籍係・内海突破から「オマエはすでに死んでいる」と言われてしまいます。石原裕次郎はつい最近、交通事故で死んだそうです。

え?じゃ、オレは誰?と取り乱すはずもなく、裕次郎は自分の死亡診断書を書いた医師・浜村純を訪ねます。

大金持ちの親戚が残した莫大な遺産の相続人として、裕次郎と、小さい頃に空襲で生き別れになった弟が指名されていた、そして裕次郎が死んだので遺産は全額弟のものになったという事実を掴んだ裕次郎は早速、その親戚が住んでいた現地へ赴きます。そこで裕次郎は、遺産相続の管理をした西村晃、そして遺骨を埋葬した菩提寺の住職・森川信、そして謎の美女・月丘夢路と出会います。

弟と13年間音信不通だった原因が空襲というのがいかにも時代でありますね。

東京へ戻った裕次郎は、声が渋いきざなオッサン・小林重四郎に脅迫されますが気にしません。さらに、交通事故の現場にいた大柄な弁護士・安部徹もかなり胡散臭いです。

この二人は浜村純の証言に出てきた、交通事故の目撃者の人たちらしいです。

生き別れになった弟にも会いたいので、裕次郎は町をうろつくキチガイ女・南寿美子がエレベータを見ると異常におびえる様子に不審を抱きます。

謎のキャバレー、経営者の「土曜日の男」は週末にだけ店に出てくるようです、そしてそこには、謎の美女の月丘夢路がゴージャスにホステスをしています。

岡田真澄はスリ稼業から足を洗うために俳優になろうとうとしていたのですが、先輩の女スリ・浅丘ルリ子には頭が上がりません。岡田真澄の半分くらいしか背丈の無いルリ子がぽんぽんと威勢の良い啖呵を切るのが楽しいです、まるでチビッコギャングの娘バージョンのようでした。

交通事故は偽装で、裕次郎の弟は「土曜日の男」に唆されていたらしく、遺産の相続をした直後に殺されていました。

月丘夢路は、裕次郎の弟(最後まで姿は出てきませんが、裕次郎にソックリだというのでたぶんカッコいいのでしょう)に惚れていましたが、キチガイ女に浮気したのに腹を立てて「土曜日の男」に協力していたのでした。

なんだかんだ言っても月丘夢路が、かなりな悪女で、ほとんどオマエが実行犯だと言ってもおかしくない存在ですが、これは井上梅次の映画なので、彼女は気の毒でステキなまま死んでしまいます。

「土曜日の男」は誰なのか?安部徹、西村晃、小林重四郎、それらしい男子は全員登場しています、って残りは、ある意味、意外性のある男子でありました。

警察よりも頼りになる石原裕次郎。主人公に絡むときは一人ずつという日活のローカルルールに乗っ取ったユルい技斗シーンはアタマが痛いですが、警視庁の警部・安井昌二が民間人を囮捜査のエサに平気で使う無理やりな設定も、いいんですよ、裕次郎がカッコよければそれで。

そもそも裕次郎は警察に非協力的で、非合法なことをしてるんじゃないのか?いいんですよ、裕次郎がカッコよければそれで。

さて、真犯人の断末魔が期待以上に残酷なスプラッターだったのはともかく、岡田真澄が受験する映画会社が東宝なのか日活なのか、かなり気になったのは私だけでしょうか。

ヒーローの裕次郎よりも、月丘夢路の紗がかかったアップがやたら丁寧で無駄に長い、日活アクション映画でありました。

2011年08月07日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-08-22