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二十一の指紋


■公開:1948年

■制作:大映

■企画:米田治

■監督:松田定次

■原作:

■脚本:比佐芳武

■撮影:石本秀雄

■音楽:白木義信

■美術:角井平吉

■照明:湯川太四郎

■録音:

■編集:

■主演:片岡千恵蔵

■寸評:

ネタバレあります。


「さあみなさん、二十の扉をいたしましょう」これがわかる人はかなりのご年配の方かと思われます。

いきなり片目の運転手に変装中の片岡千恵蔵(以下、御大)、波止場で髪を振り乱した美女・喜多川千鶴が呆然と立っているのを発見、本人が抗うのを無理やり車に押し込んでしまいます。御大、それじゃあ略取誘拐ですぜ!とは思いますが、まさか御大がそんなことをするわけがありませんので、成り行きを見守りたいと思います。

美女を送り届けたお屋敷で、いきなり悲鳴が聞こえてきましたので、あまり敏捷でない身のこなしの御大が屋敷へ突入。そこで発見されたのは背中を一突きにされたオッサンの死体でした。御大、これは住居不法侵入ですが、とは思いますが御大なので、きっとここからすごくカッコいい活躍をしてくれるに違いありません、期待しましょう。

現場から忽然と消えた美女、本件を担当する警部・大友柳太朗のところへ風采のあがらない私立探偵の多羅尾伴内・片岡千恵蔵がやってきました。そのとき警部は温厚そうな弁護士・斎藤達雄と面会中でした。多羅尾伴内の正体は、かつて謎の盗賊と噂された藤村大造でしたが、それは全然濡れ衣だったので、多羅尾伴内は身の潔白の証明と事件の解決を約束します。

「私の目を見てください(ほら、正義の瞳でしょう?」「いや、怖いだけですよ、御大・・・」という風情に見えなくもない時代劇スタアの顔合わせでしたが、気にせず進みましょう。

殺人現場には鑑識・伊達三郎のチェックにひっかかった藤村大造の指紋以外に、アヤシイ二十一の指紋がありました。大友柳太朗は重要参考人として喜多川千鶴を指名手配します。

弁護士の斎藤達雄の態度が怪しい。御大は、凶器となった短剣に反応したのを見逃さず、問い詰めてみると逆にその短剣にかかわりのある女の捜索を依頼されました。

戦後の焼け跡にできたバラックに住みついている美人ダンサーズ・日高澄子丸山英子らのところへ行き倒れ確実なボロボロの爺さん・片岡千恵蔵が迷い込みます。戦災孤児の二人の男の子に助けられ「元気になるから」という理由で、モルヒネの注射もしてもらい元気になった爺さんでありました。実はそのダンサーズの元仲間だったのが喜多川千鶴でした。彼女は殺人事件の後、無我夢中でバラックにたどり着いていました。

御大は喜多川千鶴の所在確認とともに、彼女を警察に保護してもらうことにしました。

美人ダンサーズは華族の夜会に出演するそうです。またもや片目の運転手に変装した御大がその館へ行くとパリっとしたスーツ姿の喜多川千鶴がいましたので、早速、捕獲すると本人は人違いだと言い張ります。今度はいんちき貴族に変装した御大、スーツを着ていた喜多川千鶴の正体は焼け出された華族のお嬢様でありました。

夜会を主催している高田稔は副業として社交クラブも運営しています。人気者の腹話術師、ピカ一・片岡千恵蔵が余興に招かれます。彼は腹話術の人形のあちこちに、社交クラブに出入りしていた小堀明男、喜多川千鶴、高田稔らの指紋を丁寧につけると早速、検出された指紋を写真撮影して警察へ送り届けました。

斎藤達雄が殺されました。未亡人・沢村貞子によると、件の短剣は莫大な遺産を相続するためのキーアイテムらしいです。高田稔は敗戦の混乱に乗じてなりあがった麻薬王でした。喜多川千鶴は実はソックリな姉妹で、スーツのほうが性悪で悪者一味の手先となって、女中してたほうを殺害して遺産の独り占めを狙っていたのでした。

今回の見所は喜多川千鶴がクライマックスでたくみに入れ替わるところ。この頃はまだ藤村大造の早変わりは未完成です。その代わり、ヤケクソのような銃撃シーンがものすごく派手です。少年探偵団の趣もあるので、少年二人がわりと危険な仕事を請け負う協力者になっています。

金田一耕助だろうが多羅尾伴内だろうが何やっても一緒という気がしないでもない御大です。大友柳太朗も負けじと変装するのですが、あんなお侍さんみたいに威張った顔の紙芝居屋のオジサンがいてたまるか!と思いました。

この頃はまだスマートだった小堀明男、あまり活躍しませんが悪いほうでした。

2011年07月31日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-07-31