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仇討膝栗毛


■公開:1936年

■制作:新興キネマ、大阪朝日座

■制作:

■監督:森一生

■助監督:竹森一夫、鴻峯利光、飯田萩雄、鎗田百合子

■原作:依田義賢

■脚本:依田義賢

■撮影:竹野治夫

■撮影助手:宮西四郎、古川松雄、西村正一

■音楽:佐藤顕雄

■美術:辻定吉、上里義三、木川義人、岸中勇星

■照明:堀越達郎

■録音:加瀬久

■編集:竹野治夫

■主演:月田一郎

■寸評:平成二十二年(2011年)現時点では不完全(音声の一部が欠落)のプリントで鑑賞できる

ネタバレあります。


月田一郎といえば山田五十鈴の最初の旦那で瑳峨三智子のお父さんだったくらいしか知りませんが、なかなかの二枚目です。

武家の長男、新之助・月田一郎がニートでボンクラなのを心配したお父さん・森田肇はなんとか一人前にできないか?と親戚一同に相談します。

知恵者の叔父さん・水野浩が提案したのは「お父さんの仇討ちツアー」でした。

かわいい子には旅をさせよう、とはいえあんなボンクラの一人旅は危ない、腐っても跡取り息子で御曹司だから養育係の先生・小泉嘉輔をお供につけよう。

そのためにはまず、お父さんが殺されないと!おいおい、それは困るだろう、ということでニセの仇になってくれる浪人を選び、何か特徴がないと、あの馬鹿息子が見失うといけないからということで、髯とホクロで変装させます。

お父さんが何者かに襲撃されてお亡くなりになるというお芝居が真に迫っていたので月田一郎は目が醒めたらしく、仇討ちの旅に出発します。

しかし生来のノンビリ屋さんなので月田一郎はすぐに疲れたのなんなのと言い訳してお休みします。先生も学問は得意ですが体育は苦手なようなので一緒にお休みします。

どうせそんなことだろうと心配したお父さんは、死んでる設定ですから二人にバレないようにそっと後を追います。

浪人は心得た人だったので二人の前に現れては、後を追わせて逃げ切るということを繰り返しますが、うっかりお父さんと月田一郎が鉢合せしてしまいました。

しかし月田一郎は素直な馬鹿だったのでお父さんの幽霊が叱咤激励に来たのだと好意的に解釈し、ビビりながらも、裏事情を知らずに一緒についてきた先生と一緒に、仇の浪人を追いかけます。

途中で出会った武家の娘・森静子はお供の爺やさん・春路謙作と一緒に仇討ちの旅に出ているそうです。

同じ事情で旅をしている者同士、ていうか森静子が美人だったのですっかりその気になった月田一郎は、剣術の心得なんかまるで無いくせに森静子にいいところを見せたい一心で助っ人の約束をしてしまいます。

ある旅館にたどり着いたお父さんと浪人、そして同じ旅館に月田一郎と先生、さらには森静子と爺やさんもやって来ます。

ニセの仇に雇った浪人・寺島貢は実は森静子の仇でした。

浪人は変装したままでは月田一郎に狙われ、素顔になれば森静子に狙われてしまいます。

これはマズイと思った浪人は、お父さんの慰留を振り切って契約解除、一目散に逃げ出しました。

喜劇の原点は「追っかけ」です。

狭い旅館の廊下や風呂場で変装をしたりとったりという寺島貢のコントのような追っかけから、砂浜のお堂で繰り広げられる乱闘、そして一つの仇討ちの本懐が遂げられたとき、できもしない助っ人を命がけで成し遂げて、ちょっぴり頼もしくなった月田一郎に種明かしをしたお父さんは安心して一緒に故郷へ帰るのでした。

月田一郎は現代的なハンサムなので、ヤクザをやっつけるフリしてそっとお金で解決する腰抜けぶりが可愛くて間抜けでステキです。

ビックリしたりビビッたりするときも月田一郎の目玉がクルクルして、元の二枚目とのギャップが楽しいです。

森静子の凛とした風情と月田一郎の女々しい姿が対照的なドタバタ喜劇でした。

平成二十二年の時点では音声の一部が欠落してますが、話がシンプルで判りやすいのと、サイレントの名残がある俳優さんたちのわかりやすいお芝居のおかげで気になりません。

2011年07月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-07-18