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怪盗X 首のない男


■公開:1965年

■制作:日活

■企画:浅田健三

■監督:小杉勇

■原作:都筑道夫

■脚本:山崎巌

■撮影:藤岡粂信

■音楽:小杉太一郎

■美術:木村威夫

■照明:森年男

■録音:太田六敏

■編集:近藤光雄

■主演:宍戸錠

■寸評:音楽担当の小杉太一郎は小杉勇の息子で伊福部昭の門下生。

ネタバレあります。


フランスの犯罪小説として一世を風靡した「ファントマ」は映画(サイレント)にもなったそうです。

戦後のジャン・マレー主演の「ファントマ」シリーズは二度目の映画化になるそうです。

ファントマの特徴はアルセーヌ・ルパンが殺人を好まなかったのに対して、汚い手口や残忍さがあって殺人も全然平気ということらしいです。

さて、本題です。

すでに怪盗Xは有名らしく今日は、有名な宝飾品の展示会会場に出没します。

とりあえず彼は変装の名人なので、インド人っぽい人・宍戸錠に変装し、小型の発炎筒を会場に仕込み、騒ぎに乗じて宝飾品を強奪する計画らしいです。

相棒の美女・松原智恵子もインド人に変装しています。

手下は元々バタ臭い顔の深江章喜ですので彼は特に変装してません。

会場で写真撮影をしていた女性カメラマンの山本陽子は、恋人の川地民夫と犯行現場に居合わせました。

まんまと宝飾品を盗み出した宍戸錠ですが、川地民夫にあやうく見破られるところでした。

川地民夫が熱血馬鹿なのを利用した山本陽子は、怪盗Xに挑戦状を叩きつけるニセの記事を書いて、自宅にあった二束三文のマリア像を世紀の秘宝だと喧伝します。

当然ですが、怪盗Xことブラックジョウに挑戦するのは、山本陽子でも、その父親で秘宝の持ち主にでっち上げられた明石潮でもありません、川地民夫です。

川地民夫の叔父さんがたまたま警視庁の定年間際の警部・宍戸錠(しかも役名が大黒警部)だったので一緒に事件の解決を目指すことにしました。

強引です、いい加減というか、漫画のような出だしなのでしょう!

さて、怪盗Xこと宍戸錠は素顔を晒さない主義なので、顔を真っ白に塗りたくって付け鼻をしています。

パッと見は「犬神家の一族」(角川映画)の佐清のゴムマスクに似てますが、いや、むしろ、あおい輝彦そのものに似ています。コテコテに厚塗りなせいか、本当に首のない男になっているのが笑えます。

首のない男=顔のない男=素顔を見せない男じゃなくて、首が短いという方向で。

さて、川地民夫ですが間抜けな警察と宍戸錠が、明石潮の邸宅でドタバタしているうちにあっさりとマリア像を奪われてしまい、後を追ったのはいいけれど、これまたあっさりとブラックジョウの手下に捕まってしまいました。

そこでブラックジョウと初対面した川地民夫は、太平洋戦争中に軍に供出した宝飾品や金塊が戦後のどさくさで国庫にナイナイされてしまったことに腹を立てたブラックジョウがその復讐として、高額な宝飾品を盗み出していることを聞かされます。

それがどうした!そんなんで自分の犯罪を正当化できるとでも思ってんのか!?

その通りですね、しかしブラックジョウ的にはしごくまっとうな行為らしく、協力していた松原智恵子は実は彼の妹なのでした。

これで安心して松原智恵子に手を出せるぞ、よかったね!川地民夫!いや、そうじゃなくて!

そうこうしているうちに山本陽子が誘拐されてしまい、アラブの秘宝であるファラオの猫という像も強奪されます。

ブラックジョウは川地民夫にゲームを提案します。

まんまとマリア像を取り返せるか否か?ただし奪回のために使える予算の上限額が200万円であること、これを守る側のブラックジョウも川地民夫も遵守することが条件でした。

松原智恵子を逮捕した警察と川地民夫は横浜ドリームランドの観覧車でブラックジョウと取引しますが、大勢の警官隊と大黒警部の目の前からヘリコプターで脱出されてしまいます。

また、川地民夫にアジトを知られたブラックジョウの一味は、これまた踏み込んできた警官隊を尻目に生コン運搬車でまんまと脱出に成功します。

ちなみに、この生コントラックを運転しているのは、小杉勇監督なのでした。

ああ、なんて間抜けな日本警察!それに輪をかけて、ブラックジョウが出した予算で小型プラスチック爆弾とか作っちゃう川地民夫の真面目が空回りする大活躍!

クルーザーで日本脱出を図ったブラックジョウの一味ですが、外海に出る前にクルーザーは大爆発してしまうのでした。

何もかも木っ端微塵だと勝手に決めた大黒警部と川地民夫、無事に救出された山本陽子と一同は爽やかに去っていくのでした。

その頃、豪華客船で優雅にお食事をする松原智恵子と宍戸錠、あんたたちいつ脱出したんだよ?というツッコミは無用です。

きっとまた、ブラックジョウは日本を席捲するようなゴージャスな犯罪をしにやってくることでしょう。

ガラスケースを切断する回転式のカッターなどの秘密兵器も見ているだけで笑えますし、宍戸錠の変装、追う側と追われる側の二役というのも中途半端ですが笑えます。

ガラクタだと思われていたブラックマリア像の体内に実は幻の高額切手が隠されていたのですが、すでにそのお宝は本物のアルセーヌ・ルパンが奪った後でした。

って、アルセーヌ・ルパンですでに小説家が作った架空の人物なんですけど・・・

てなわけで先の「ファントマ」や「アルセーヌ・ルパン」といったフランス製の犯罪ヒーローのエピソードがてんこ盛りです。

残虐なファントマか、オサレなルパンか、どっちかにしたほうが良かったんじゃないか?とは思いますが、さりとて宍戸錠のキャラ的な限界かもしれませんが、間抜け警部と犯罪の天才はもう少しメリハリつけないと、警部がブラックジョウだったというオチにならない気持ちの悪さがなんとしても残念でした。

松原智恵子のインド美人はステキでした。

しかし、ここは日活ですから、なぜ真理アンヌではないのか?と見当違いの違和感を抱いてしまいました。

2011年07月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-07-10