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悪魔が来たりて笛を吹く


■公開:1979年

■制作:角川映画

■制作:角川春樹(角川春樹事務所)

■監督:齋藤光正

■原作:横溝正史

■脚本:野上龍雄

■撮影:伊佐山巌

■音楽:山本邦山

■美術:横尾嘉良

■照明:梅谷茂

■録音:宮田重利

■編集:田中修

■主演:西田敏行

■寸評:

ネタバレあります。


映画は美男美女のほうが好きだというお客様は多いことと思います。

金田一耕助が原作と違ってたって、へーちゃんや御大や健さんなら全然オッケーですよ。「淑女と髯」のように、美男子が汚い格好するぶんにはなおさらオッケー。しかしながら本作品、西田敏行が主演ということでかなりモチベーションが下がってしまった次第です。

ファンの皆様には大変申し訳ございません。これも色男好きの性というモノです。

敗戦直後の日本。帝銀事件の模倣犯のような宝石店の襲撃事件がありました。

目撃者の証言から、フルート奏者の元華族・仲谷昇が容疑者として逮捕されますが、彼には完璧なアリバイがありました。ところが仲谷昇は数ヶ月後に遺体として発見されます。

死因は自殺。真犯人が逮捕される前でしたので、事件が複雑化してしまい世間はやっぱり仲谷昇が犯人だったのではないか?と、彼の関係者にはまことに不名誉な情報が飛び交います。

元華族といっても現在はかなり没落しているようです。

生活力の無いくせに贅沢な暮らしを好む退廃的な一族の経済状況に鑑みて、宝石強盗も動機は充分、おまけに手口が、店長・中田博久らを騙して青酸カリを飲ませるという猟奇的でマニアックな手口ですから、いかにも芸術家がやりそうだと巷の好奇の目にも晒されてしまいます。

大邸宅に住んでいるのは仲谷昇の娘・斉藤とも子、仲谷昇の妻で斉藤とも子の母・鰐淵晴子、妻の兄・石濱朗、その妻・村松秀子。使用人の兄妹・宮内淳二木てるみ、さらには鰐淵晴子の実家からついてきた家政婦・原知佐子、そして現在の当主であり仲谷昇の父親かつ斉藤とも子の祖父・小沢栄太郎とその妾・池波志乃

彼らのうち何人かが死んだはずの仲谷昇を目撃していたことから、警察の等々力警部・夏八木勲は、犯人の自殺は偽装だったのではないか?ということで捜査チーム・藤巻潤三谷昇とともに再捜査を開始。そこへ名探偵の金田一耕助・西田敏行も参加します。

本当に仲谷昇が生きているかどうか占いで決めよう!この時点で、この元華族は相当にキテますが、みんな大真面目です。しかも、西洋コックリさんの儀式の祭司は山本麟一です。だめだ、こりゃ!

占いが行なわれた夜、小沢栄太郎は骨董品の仏像でアタマをカチ割られて死にました。現場は密室、金田一耕助は重厚なドアの上の小窓が殺人トリックに使われたらしいと見抜きます。

メガネっ娘の助手が出てこない代わりに、さすが東映!金田一耕助の下宿先の大家さんであり、かつ、良き協力者として闇屋の不良番長・梅宮辰夫とその女房・浜木綿子が活躍します。不良番長はふとしたことから、仲谷昇生存?説の有力な証拠を提供したりする、実に頼りになるナイスガイなのです。

コックリさんに描き出された呪いの紋章と同じ痣を持っているのは石濱朗でした。

コイツの下半身は制御不能らしく、女ざかりの未亡人であり自分の妹でもある鰐淵晴子と肉体関係があるのです。ていうか、鰐淵晴子は山本麟一とも一つ屋根の下で寝ているのです。

相手選べよ!鰐淵晴子!同じ天才少年少女あがりの石濱朗まではともかく、明大の暴れん坊出身のヤマリンというのは如何なものか?

斉藤とも子は実の母親の乱れすぎた性生活に絶望します。そりゃそうです。

一方、金田一耕助は仲谷昇が、宝石店襲撃事件のあった日に神戸の須磨へ行ったことに注目。

年齢の割にはガタイのいい刑事の藤巻潤と現地の旅館のお風呂で合流した金田一耕助、そして斉藤とも子は、そこで仲谷昇の妻および、ある人物のトンでもない大人の事情を知ってしまうのでした。

石濱朗が小沢栄太郎と同様の凶器で殺されました。

「降らし」の雨の中、破れ温室の中で死体になるのは大変ですが、横溝映画の猟奇性をアップさせるためには「目をカッと見開いた死体」が必要なので、石濱朗の熱演には拍手を贈りましょう!おまけにヌードだし。

事件の真相は「禁断の恋」です。映画の冒頭に「少女」のリストカットが登場しますが、そこにも大きなトリックが隠されていました。

この映画には二人の「少女」が登場しています。実年齢で少女だった斉藤とも子と、いつまでも「少女」なある人です。

娼婦の北林早苗と石濱朗との間にできた男の子、そして石濱朗と鰐淵晴子との間にできた女の子は互いに素性を知らぬままに肉体関係を持ってしまいます。

兄と妹とも知らずに妊娠してしまった二人は別れることもできません。

自分たちを不幸にした一族を根絶やしにしようとした二人でしたが、何の罪もない斉藤とも子と、結果的に被害者である仲谷昇には申し訳ないと思っていました。

あっちこっちで無計画な種付けをしていた石濱朗、すべての事情を知ってしまった仲谷昇は自らの罪を恥じて自殺。宝石店襲撃事件と仲谷昇の自殺は関係ありませんでした。

鰐淵晴子も自殺に追い込んだ二人は、金田一耕助に告白して仲谷昇の形見を斉藤とも子に渡してくれるように託して死んでしまいました。

さて、宝石強盗はどうなったのでしょう?夏八木勲の捜査と、不良番長および闇市の事情通・田中春男穂積隆信角川春樹横溝正史らの情報により、仲谷昇のソックリさん・仲谷昇の存在を突き止めましたが、彼は真犯人に小道具として利用された挙句に殺されてしまいました。

アップ多様で派手な絵柄がテレビっぽいのと、セットがショボイのと、ヤマ場が少ないことと、恐怖の責め道具であるはずの悪魔の笛吹き人形がダサいのと、あらゆる貧乏が重なってしまい、期待薄だった西田敏行の金田一耕助が期待以上にハマっていたのに、全然面白くならなかったのは残念でした。

そういえば藤巻潤ですが、お風呂場で西田敏行とお湯のかけっこをして遊んでいるのは、ホモだからではなく当時、水に濡れても大丈夫な男性用カツラのCMでお茶の間をビックリさせていたからです。

それにしても潤ちゃん、エエ身体しとるのう・・・ここで東映制作なら遠藤辰朗(太津朗)あたりに迫ってほしいところです。ウソです。

2011年06月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-06-26