約束 |
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■公開:1972年 ■制作:松竹 ■制作:齋藤節子、樋口清 ■監督:斎藤耕一 ■原案:金志軒、斎藤耕一 ■脚本:石森史郎 ■撮影:坂本典隆 ■音楽:宮川泰 ■美術:芳野尹孝 ■照明:津吹正 ■録音: ■編集:富宅理一 ■主演:岸惠子 ■寸評:斎藤耕一監督曰く「泣ける映画です」とのこと。 ネタバレあります。 |
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日本海側が裏日本と呼ばれていた頃。北陸本線にチャラい男・萩原健一が乗ってきました。 彼はいかにも馬鹿そうなので向かいに座っていた女・岸恵子と中年の女・南美江には徹底的にシカトされてしまいます。 男は無神経なので女にイロイロと話しかけたり、近くに座っている子供と遊んだりしてやたらとハイです。 おまけに子供から「馬鹿みたい」と本当のことを言われてちょっと凹んだりもします。 3人の行く先は魚津。岸恵子と南美江は連れのようですが、妙によそよそしいのです。 萩原健一のほうにも事情があるらしく、現地で誰かと落ち合うようですがヒマつぶしに二人にまとわりつくのです。 岸恵子が一人で向った先は彼女の母親のお墓でした。 岸恵子は服役囚、南美江は保護官でした。岸恵子は模範囚でしたので特別の許可を得て故郷の墓参りをしに来たのでした。 彼女にはもう一つ目的がありました。 同じ刑務所にいた女囚から、彼女の夫・殿山泰司への手紙を預かっていました。 しかし殿山泰司にはすでに他の女・姫ゆり子がいて、おそらくは妻の現状をひた隠しにしていた殿山泰司にとっては、岸恵子が持って来た手紙は疫病神以外の何物でもないのでした。 前科者の居所の無さを痛感する岸恵子、彼女はこの時点で故郷を喪失します。 明日の3時には帰らなければならないのですが、岸恵子ともう一度会う約束をした萩原健一は、待ち合わせの場所に連れ込み宿を指定しますが、とうとう現れませんでした。 それでも岸恵子はじっと彼を待っていました。 萩原健一は仲間と現金強奪をやっており、魚津で再会した仲間との間で分け前を巡ってトラブルが起きており、萩原健一は仲間の一人を刺して重傷を負わせてしまっていたのです。 すでに刑事・三國連太郎が彼の後を追って来ていました。 岸恵子はとうとうあきらめて南美江と一緒に電車に乗りますが、そこへ萩原健一が駆け込んできました。 二人が乗った電車が偶然にも土砂崩れに遭遇して、逃亡のチャンスが訪れますが、岸恵子は犯罪者にはどこにも行き場が無いことを知っていますから、人気の無い街を彷徨いながらも電車に戻ります。 女子刑務所の前で、娑婆の名残にラーメンを注文する二人です。南美江は食べますが、岸恵子と萩原健一は食べません。 胸が一杯で食べられないのです。 岸恵子が出所する2年後の再会を約束した二人でしたが、直後に萩原健一は、彼女に差し入れするセーターと一緒に、刑事の三國連太郎に逮捕されてしまうのでした。 2年後に出所した岸恵子は、裏日本の公園で約束どおり、いつまでも萩原健一を待っていました。 出会う前から二人に残された時間は決まっていました。互いに罪人であり、愛情に飢えていた二人がたちまちに心を通わせて結ばれます。 薄皮をはがすように二人の素性が明らかになる展開です。逮捕されて連行される別の犯罪者・中山仁の姿を見たときの二人はきっと自分たちの未来を予見したはずなのに、抗おうとする萩原健一と受け入れる岸恵子。 萩原健一から手がガサガサだと言われた岸恵子が洗面所で両手を水に浸す女心のいじらしさは女性の子宮にグッと来るシーンです。 この映画は絶対に出会うはずの無い二人の出会いです。 それはスクリーンの外から地続きです。おそらく大女優の岸恵子と、ロッカーの萩原健一は出会うはずの無い二人なのです。萩原健一の出演は当初から予定されていたものではなかったそうです。 作りこまれた様式美の中で生きてきた岸恵子に対して、萩原健一はまるで動物タレントのように制御不能なところを見せます。 萩原健一の演技以前のアクションにあきらかに戸惑っている岸恵子が、それでも必死に平静を保とうとしているので、自分の素性を隠そうとする物語の中の女と同じ状況にリアルに追い込まれています。 本作品は現実と作り事が見事にシンクロしていると思います。それは偶発的な出会いが作り出したものなので、賛否が分かれるところかもしれません。しかし、それでも映画には幾分の奇跡があったほうが結果的に魅力的になることがありえるわけですね。 二人の罪人がわずかの間に永遠の絆を結ぶ話。 さあ、泣け!とばかりにたたみかけてくる宮川泰の音楽も絶品です。先生のテレビやアニメのお手軽(失礼な!)あ、いや、ライト名お仕事とは全然違う感触もぜひにお楽しみくださいませ。 刑事と、裁判官と、検事を三國連太郎がイメージの中で一人三役です。予算の都合でしょうか?とそこだけ、変なリアリティ。 (2011年06月26日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2011-06-26