「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


帰って来た若旦那


■公開:1955年

■制作:東宝

■制作:本木荘二郎、桜沢一

■監督:青柳信雄

■原作:楓誠二

■脚本:若尾徳平

■撮影:遠藤精一

■音楽:佐藤勝

■美術:北猛夫、清水喜代志

■照明:城田正雄

■録音:保坂有明

■編集:

■主演:鶴田浩二っていうか柳家金語楼

■寸評:

ネタバレあります。


二枚目の条件とは、何もしないことである。何もしないのに女にモテる、ここポイントね!

若旦那と言ったって全然若くない(鶴田浩二、当時30歳超)じゃん!おまけに、なかなか帰ってこないじゃん!

銀座にある老舗のカステラ屋さんのご主人・柳家金語楼にはカワイイ女子高生の娘・宮桂子、現在、アメリカへ留学中の息子・鶴田浩二(若旦那)がいます。現在、鶴田浩二の許婚・北川町子が同居中で、若旦那の帰国後に結婚すべく、女主人のいない当家で花嫁修業中であります。

若手のカステラ職人・渋谷英男がサラリーアップをご主人に要求、これがはねつけられるや否や、ライバル店からの引抜であることを告白する渋谷英男、この一言で怒髪天をついた、いや、金語楼だけにアタマから湯気を出して怒ったご主人は解雇通告。兄貴分の職人・千秋実に捨て台詞を残して去っていく渋谷英男でありました。

こんなにちゃんと芝居している渋谷英男を見た事が無かったので、渋谷英男ファンは必見のこと。

金語楼のライバル店は洋菓子屋さん。経営者は豪傑未亡人・清川虹子。彼女には同じ遺伝子とはにわかに信じがたい美人の娘・司葉子がいます。女性実業家としてブイブイいわせたい清川虹子は、金融ブローカーの平田昭彦(様)に頼んで菓子店に喫茶店を併設すべく店舗の改築を計画中、渋谷英男を引き抜いて高笑いですが、どうもこの平田昭彦(様)の素性がよろしくない。

平田昭彦(様)がいくらカッコよくても今回は悪役なので、司葉子は彼のことが大嫌い。彼女が大好きなのは鶴田浩二に決まっています。

これでは北川町子が可哀想と思いきや、千秋実と北川町子が実は、密かに愛し合っているという設定なのでした。ようするに、遠くの二枚目よりも近くの「それなり」のほうが良いということでしょう(か?)。

清川虹子は平田昭彦(様)が持って来た契約書にホイホイ実印を押してしまいますが、彼は姑息な手段で店舗の譲渡契約書に、本人に無断で捺印してしまうのでした。

老舗と新興勢力がカステラの値下げ戦争を始めますが、昔ながらの製法にこだわる老舗と違い、新興勢力はインフラが整っているので大量生産が可能ですから単価を下げることも容易ですが、金語楼のほうはそうもいきません。このままでは原価割れを起こして累積赤字が増大するばかりです、そこで番頭・森川信は金語楼にある提案をするのでした。

なかなか出てこない若旦那の鶴田浩二にイライラしていると、ここから先は、柳家金語楼と清川虹子の喜劇人魂が炸裂するアチャラカが展開するのですが、こうした芸のリズムが時代を超越してウケるかというとそうもいかないので、正直、見ていてツライものがあります。

そうこうしているうちに、北川町子は千秋実と駆け落ちし、平田昭彦(様)は徐々に正体を現わして司葉子に迫るわ、店の乗っ取りをたくらむわ、若旦那の同級生で実は若旦那に「ほの字」な芸者・藤間紫が横恋慕してくるわ、アレコレあって、やっとこさ若旦那が帰国します。

いきなり無理やり爽やかな鶴田浩二が登場すると、画面が一気に垢抜けない方向へ。

鶴田浩二は実家と目と鼻の先にある藤間紫の家に隠れて、北川町子と千秋実の駆け落ち騒動を煽って金語楼を根負けさせて二人を晴れて結婚できるようにします。

平田昭彦(様)が手下・広瀬正一中山豊とともに司葉子と清川虹子へ実力行使。有印私文書偽造の疑いをちらつかせると一気に浮き足立った悪者一味をものすごく狭いセットで大乱闘の末に撃退する若大将、じゃなかった若旦那。

何の努力もせずによってくる婦女子をちぎっては投げするうちに、本命のハートをゲット。なんだ?なんだ?こんな健康優良児な鶴田浩二じゃ物足りないぞ?平田昭彦(様)の手下に捩じ上げられた司葉子の腕を「揉んであげようか」ってなんかすげー馬鹿っぽいぞ。

東映以降の鶴田浩二しか知らないと、爪も牙も抜かれて、おまけに湯通しされたような鶴田浩二、見ているこっちがなんだか照れくさいという貴重な体験だけはできます。

2011年06月19日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-06-20