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妾二十一人 ど助平一代


■公開:1964年

■制作:東映

■企画:園田実彦

■監督:成澤昌茂

■原作:小幡欣治

■脚本:成澤昌茂

■撮影:飯村雅彦

■音楽:渡辺岳夫

■美術:北川弘

■照明:元持秀雄

■録音:広上益弘

■編集:長沢嘉樹

■助監督:内藤誠

■主演:三木のり平

■寸評:多くの資料に村井国夫の名前があるが、実際に出演したのは溝口舜亮(滝俊介)でした。


俳優には転機となった作品というのがあるものですが、本作品もある意味、佐久間良子にとっては転機のひとつであったと考えられます。え?悪いほうに決まってんでしょうが!

さて、本作品は実在した牛鍋屋チェーンのオーナーで後に葬儀社や油脂会社まで経営した実業家がモデルです。英雄色を好むではないですが、いや、そうですが、東映だから、正妻・進藤幸がいても女を作りまくり、妾にしてしかもお一人様、牛鍋屋を一店舗経営させて利殖の道も準備してあげる、そんな男のロマンを実現させた男・三木のり平の半生です。

三木のり平は早起きです。血圧が高いのでしょうか?朝っぱらから秘書・沢本忠雄を怒鳴り散らして、宣伝カーの役割も担う派手な人力車をお抱えの車夫・土山登志幸に引かせてチェーン店の視察に出かけます。

本作品では店舗名は「あかさたな」ですが、実在のほうは「いろは」でした。

愛人たち・中村玉緒森光子安城由貴子橘ますみ野川由美子、ほか多数はお互いにライバルですから、三木のり平の寵愛を集めるためにシノギを削りますが、それなりに勢力の均衡は保たれていました。というのも、三木のり平は絶倫ですが、彼女達は女ざかりをもてあましているので、秘書の沢本忠雄や店の常連客・遠藤辰雄と浮気三昧もしています。しかし、三木のり平はエコヒイキをしないし、子供たちにも等しく愛情を注ぐからです。

女も子供も作るけれども、後始末をキチンとしている。なかなかやるじゃん、三木のり平!

ある日、帝大生・溝口舜亮(滝俊介)と駆け落ちしようとしていた女郎・佐久間良子を大金即決でお買い上げをしてから、妾たちの勢力図に異変が生じます。

大奥よりも生々しくて下世話な彼女達にとっては正直、圧倒的美人でしかも実は三木のり平が、本命ではなくキープであるという事実を公にしている佐久間良子が自分たちと同格以上に扱われるのが面白いはずがありません。佐久間良子も、愛人軍団の悋気にはほとほと疲れています。

溝口舜亮が迎えに来ましたが、佐久間良子は別れると言います。「お金で買われたのだから」その一言にカチンときた溝口舜亮は「俺も金持ちになってやる!」オマエは「金色夜叉」の間貫一かい!そんな単純思考だから佐久間良子に捨てられるんだ!ってほどのことはなく、佐久間良子としては身分の相違が気になるのと、将来、相手の出世の足かせになるのを気にしてのこと。

さて、三木のり平はさらなる事業規模の拡大を狙っていました。客・伴淳三郎からは肉が固いと文句を言われますが「安い肉を腹いっぱい食べてもらう」という、現代の「牛角」チェーンの社長のような思想を持っているので、お店のコンセプトを現状維持。その代わり、今までは外注していた精肉、そこから取れる牛脂の再利用まで自社工場でやろうというのです。

三木のり平の正妻が急死します。こうなると、浦辺粂子はともかく、中村玉緒、森光子は燃えます。ちなみに、橘ますみは沢本忠雄と遠藤辰雄と燃えています。

船で旅行に出かけた三木のり平、しかしその船が沈没してしまい乗客乗員全員絶望です。

さあ、こうなったら後は遺産をどうするか?遺言書を弁護士から奪い取ってナカミを確認すると、屋敷の地下に産めてあるらしい大金=現金はすべて佐久間良子へ譲ると書いてありましたので、愛人一同ブッチ切れ!おそれをなした佐久間良子は遺産の相続権を放棄すると言い出します。

ところがそこへ三木のり平が登場。なんと彼は大島からの出航前にまたもや若い娘・夏珠美とデキてしまい、そのために遭難した船に乗らなかったという、とんだ、ドスケベ版「旅愁」であります。しかも相手が田舎モノ丸出しの娘、こんな不良な感じの娘なんか拾ってきて!と愛人一同、ガッカリするやら安心するやら。当然ですが、多額の現金も全額回収です。

しかし、三木のり平は札束をわし掴むと突然、佐久間良子と別れると言い出します。手切れ金はごっそりですが、出て行こうとする佐久間良子に、帝大生の溝口舜亮を諭して一緒に住めるようにしてあげるというのです。

エライ!立派!男はこうでないと!見習えよ!男子!・・・じゃなくて、ようするに将来に別の可能性のある人材にはその機会を与えたということでありましょう。てか、マジ惚れしたからこそ、彼女の幸せを最優先してあげたのですね。

なんかもう映画のナカミも題名もとんでもないので佐久間良子のモチベーションがどんどん下がっていくように見えますが、まあもともと男のために自分の幸福を捨てようという斜な女性なのでこれはこれでいいのでしょうが。ま、キャメラがめちゃくちゃキレイに撮ってるし。そこが一番、他の女優さんたちの癇に障ったということなのでは?と勘ぐりたくなるほど。

天狗タバコで有名なもう一人の、立志伝中の方を演じるのがフランキー堺。ちょいと出てきてテキトー芝居してオシマイ、ちなみに特別出演。

三木のり平の最後の彼女(本作品の中では)になる夏珠美は後に「不良番長」シリーズで大輪の花を咲かせます。どんな花だか知りませんがきっと爛れた感じです。

2011年05月22日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2011-05-22