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恋化粧


■公開:1955年

■制作:東宝

■制作:小林一三、田中友幸、森岩雄

■監督:本多猪四郎

■原作:今日出海

■脚本:西島大

■撮影:飯村正

■音楽:仁木他喜雄

■美術:北辰雄

■照明:石川緑郎

■録音:保坂有明

■編集:

■主演:池部良

■寸評:芸者・初菊役の越路吹雪の羽織が多彩な菊柄でオシャレ。


浅草松屋の巨大な建物が見える。

マドロスっても川舟ですが、船長・池部良は仲間の谷晃にからかわれるほど、芸者・越路吹雪とは仲良しです。しかし、彼は幼馴染で戦災で行方不明になったお嬢様・岡田茉莉子のことが忘れられず、今でも行方を捜しています。

越路吹雪にそこまで惚れこまれているのに、岡田茉莉子の面影(一応、生死不明なので)を追う池部良。ま、ここいらへんはいつも通りでありますが、今回は惚れっぽいんじゃなくて純愛です。

贔屓の関取・千葉信男が昇進したので羽織を送ってあげたりするほど池部良は地元でも人気あります。越路吹雪と彼女の弟・井上大助が住んでいる長屋に現在同居中の池部良は、用心棒でもあり井上大助の頼もしい兄貴分でもあります。

ある日、井上大助が小柄なチンピラ・中山豊大村千吉たちにボコられているのを助けた池部良は、ソフトないでたちですが顔に向こう傷があるヤクザっぽい若い男・小泉博を見かけます。夜学に通っている井上大助には越路吹雪の妹分の半玉芸者・青山京子というガールフレンドがいますが、姉御の池部良に対するアプローチを見習っている青山京子は井上大助の押しかけ女房を狙っているようです。

無理、これは無理、小泉博の顔に傷があっても、自転車でコケて顔面から行ったか、あるいは、日曜大工で引っかけたかくらいにしか見えないもん!それくらい、無理。小泉博のカツゼツの良いアナウンサー声で「おい!」とか凄まれてもねえ。なんか拍子抜けでした。

最近、車泥棒が流行っているので、井上大助はその関係で狙われたんじゃないか?おまけに、池部良の目の前で船会社の社長・藤原釜足の高級乗用車が盗まれるという事態に及んで、池部良としても犯人探しに躍起になります。

たまたま入った酒場がマダム・中北千枝子の経営する店。そこでホステスをしている岡田茉莉子を偶然目撃してしまった池部良ですが、彼女にはすでに別に男がいる様子。ガーン!俺の純愛、どうしてくれるんだ?とは思いつつ、はっきり失恋したのでかなり落ち込む池部良でした。

やーい!フラてやんの!あんなツンデレな岡田茉莉子よりも生活力も主婦力も旺盛な越路吹雪と一緒になっちゃいなさいよ!良ちゃん!と、心の中で叫んでみました。

実は、岡田茉莉子の現旦那は小泉博なのでした。

小泉博は自動車工場に勤務しているのですが、そこが自動車窃盗団の根城になっていて、首謀者・小杉義男は分け前と岡田茉莉子の身の安全を責め道具にして小泉博を脅迫して無理やり協力させているようです。よすうるに、ヤクザな男なんじゃなくて気の弱い男なんですな、小泉博は。たまたま顔に傷があったからヤクザな感じに見えるだけだったようです。

小杉義男の発案で池部良を自動車で轢殺することになりました。逃走するときに小泉博の顔を目撃されたからです。橋の上で狙われた池部良ですが軽症で済みました。岡田茉莉子が中北千枝子の店を退職して、またもや行方をくらまします。岡田茉莉子のことが心配な池部良ですが、まだ、小泉博が旦那だとは気がついてません。

岡田茉莉子のアパートでついに小泉博と対決する池部良。池部良は小泉博を悪い仲間から引き離そうとしますが、甲斐性なしを気にしているのでグズグズしています。岡田茉莉子に諭されたものの、顔が怖い小杉義男に拳銃で脅されてまたもや窃盗団に加担してしまう小泉博なのでした。

井上大助が拉致られてしまいました。青山京子が頼ったのが警察ではなく池部良だというのが東宝ならではというところです。ついでに千葉信男にもエマージェンシーコールしましたので、そもそも越路吹雪に惚れていていいところを見せたい千葉信男としては絶好のチャンスです。

青山京子は縛られていた井上大助に「これからは私に逆らわないと約束しなさい」とこの非常時に高飛車な要求を連発。なんともノンビリしすぎです。

自動車窃盗団は乱闘の末に、駆けつけた警官隊に逮捕されました。小泉博も逮捕され、岡田茉莉子は彼の郷里へ向かい、出所を待つことにしました。越路吹雪は正式に池部良にプロポーズ、池部良もそれを受け入れるのでありました。

晴れてフリーの池部良、岡田茉莉子にフラれたから仕方ないから越路吹雪っていうのは失礼千万だと思いますが、あれもこれも池部良だから許されるということにしておきましょう。ついでに言っておくと、越路吹雪は内心、岡田茉莉子が死んでたらいいな、とか常々思っていたらしいので、池部良が岡田茉莉子への恋慕の情を語るとき、ジェラシーに燃えた越路吹雪の目が、宝塚の男役時代を髣髴とさせる野獣の瞳になっていたのがちょっと怖かったです。

越路吹雪に縁談が持ち上がるのですが、お相手が青年実業家・佐伯秀男。青山京子が「グレゴリー・ペックに似ている!」とお世辞言いますが、グレゴリー・ペックなめんなよ!グレゴリー・ペックを!全然似てねえよ!

2011年05月22日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-05-22