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夜は嘘つき


■公開:1960年

■制作:大映

■制作:川崎治雄

■監督:田中重雄

■原作:

■脚本:笠原良三

■撮影:高橋通夫

■音楽:北村和夫

■美術:後藤岱二郎

■照明:柴田恒吉

■録音:西井憲一

■編集:

■主演:山本富士子

■寸評:


関西出身の凄腕の板前・中村鴈治郎(二代目)は戦争前に東京の銀座へ割烹料理店を出店、戦災でピンチになったときは妻の献身的な努力でなんとか店を再建しましたが、苦労がたたって妻は身体を壊して早世。残された一人娘・山本富士子が美人なうえに商才もあったので現在では、経営方面は山本富士子が仕切っています。

店にはお富士さんのファンがたくさん来ています。作家・永井智雄、会社重役・有島一郎、青年実業家・船越英二。今日も雑誌社の取材で俗物な編集者・早川雄三と一緒に永井智雄が、お富士さんにスキスキ光線をビシバシ飛ばしています。しかし有島一郎も負けてはいません、閉店後にもかかわらず強引にお茶漬け作らせたりします。社用族の有島一郎は上得意なのです。商売上手なお富士さんのおかげで店は大繁盛しています。

料理は中村鴈治郎の弟子・川崎敬三の腕が良いので評判も上々ですが、コアなファンにはまだまだ中村鴈治郎の包丁でなければ、という人がいるほどです。しかし中村鴈治郎は、長いやもめ暮らしの寂しさから、小唄の師匠・角梨枝子にゾッコンです。それだけならいいのですが、ボンクラのくせに競馬や競輪で大金をすってしまったり、変な商売に手を出して大借金を作ったりするのです。

そんな困ったお父さんなのですが、お富士さんはお父さん思いなので我慢してフォローしてきました。お父さんの素行不良も、自分のために再婚しなかったのが原因だと思っているのでなんとか小唄の師匠と一緒にさせてあげたいところです。しかし、なんとなく照れているのか、踏ん切りがつきません。

店に金融業者・夏木章がやって来ます。中村鴈治郎の、もう何度目かの大借金が発覚します。しかも店舗も敷地も抵当に入っているのです。お富士さん、堪忍袋の緒が切れます。お父さんを追い出してしまいました。

返済の期限が迫っています。お富士さんは永井智雄、有島一郎、船越英二と、デートやお泊りのサービスをしながらある計画を立てていました。

一本気な川崎敬三は、恩人の中村鴈治郎を追い出して、お富士さんが遊び歩いているように見えたので憤慨してしまい、退職すると言い出します。お富士さん、意地張りますが世話になっている魚卸の社長・加東大介も実は心配です。

ある日、ドスケベ中年三人組、じゃなくて永井智雄、有島一郎、船越英二は各々同額の借金をお富士さんから申し込まれて、三人が三人とも片道切符でいいからお泊りデートを期待して、お店に集まってきます。そこで明かされたお富士さんの計画とは?三人を出資者にして有限会社にしようというものです。三人に株を買ってもらって配当金を出そうというのです。大勢の客を呼んでこれる三人もこれには参った!と笑顔で合意。

川崎敬三も、中村鴈治郎が小唄の師匠と早く一緒になれるようにお富士さんが無理やり家を追い出したことを知って、あわてて店に戻ります。ということで、全部、めでたし、めでたし。

金に困ったヒロインが身体を武器にしないで、起業してピンチを乗り切るというのが新鮮でした。もちろん、出資者のモチベーションを上げるために、ギリギリセーフな作戦を展開したわけですが、有島一郎なんてのは独身なのですが、他にクラブのマダムの恋人がいたりします。社会的にはパリっとした三人の中年男がお富士さんにメロメロになる三者三様が見どころです。

お富士さんの和装、サマードレス、河岸へ出かけるときの長靴姿まで、大柄で超美人な山本富士子の七変化もお楽しみです。

ところで一見するとどうしようもないように見える中村鴈治郎ですが、なかなかどうして。経済観念がなく、他人に迷惑をかけまくっても才能があれば女にモテるという見本です。みなさん、よく覚えておきましょうね。

和田弘とマヒナスターズ、松尾和子の歌と演奏のサービスあり。

2011年05月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-05-08