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夜の片鱗


■公開:1964年

■制作:松竹

■制作:島田昭彦

■監督:中村登

■原作:太田経子

■脚本:権藤利英

■撮影:成島東一郎

■音楽:日暮雅信

■美術:佐藤公信

■照明:田村晃雄

■録音:田中俊夫

■編集:浦岡敬一

■主演:桑野みゆき

■寸評:


いやはや苦手な映画です、なにかが改善されるわけでもなく、こういう出口の無い映画は。

蛍光灯を製造する町工場の女工・桑野みゆきとしては、コットンのブラウスを菜っ葉服に着替える毎日の中で、友達・岩本多代もできて、それなりに幸せでしたが、ちょっぴり背伸びもお小遣いも欲しいので、夜の健全なアルバイトをしています。

飲み屋のマダム・千石規子の監視のもとでバーカウンターの中で働いておりました。そんなある日、自称・サラリーマンのちょっぴり不良感性度の高そうな男・平幹二郎が客としてやってきます。彼は夜の街にはちょいとウブな桑野みゆきを誘います。冒険をしたいお年頃、平幹二郎と寝てしまった彼女はそのまま同棲生活へ突入。工場も休みがちで実家も出たまんまです。

平幹二郎はこの界隈では有名な、通称「お姫」という色白な色男というのがウリなチンピラヤクザなので、当然ですが日々の生活の糧は、飲み屋の客・永井秀明からポーカーで巻き上げる小銭がせいぜい。とうとう桑野みゆきは平幹二郎が捕まえてきた客とアパートで売春するようになります。

そらまあ多少は抵抗はしたにせよ、坂道の転げ落ち方がハンパではありません。つまり、桑野みゆきは家に帰りたくないわけですよ、ようするに、その理由は貧乏。

稼ぎが良いので、平幹二郎の所属する組の兄貴・菅原文太の命令により、今までは二人の独立採算制で売り上げの一部を上納金として差し出せばよかったのが、他の売春婦およびヒモの監視の下で、売り上げは全額組の管理となり、管理費を天引きされた残りを月給制でもらうことになりました。

すでに桑野みゆきは捨て鉢になっているので、稼ぎが減らされたと言ってオカンムリです。平幹二郎には人身掌握術なんてありませんから、勝手にキレたので桑野みゆきは怒ってアパートを飛び出してしまいました。

大事な商売物を逃がしたので今度は平幹二郎がヤバイです。世間知らずの桑野みゆきは木製の風呂桶製造をしているお父さん・河野秋武と幼い弟妹のいる実家へ戻りますが家に金を入れないのでご両親からブツクサ文句を言われ、こんなことなら平幹二郎と一緒のほうが良かったかな、なんてことを考えます。

それは間違った考え方ですが、すでに身体が娼婦と化していたのかもしれません。おー、こわ!

平幹二郎が改心して町で客を取らないと約束したからと、どう考えてもありえない話をエサに迎えに来た組のちんぴら・東京ぼん太(台詞は全部吹替えです)とホイホイ戻ってしまった桑野みゆきは、陰険そうな組長・木村功の指示で、大勢の男衆に輪姦されてしまいます。隣の部屋で何もできない平幹二郎、メソメソ泣きながら彼女が新生活を夢見て買ってきた花筵をビリビリと分解するのでした。

そんな平幹二郎をニヤニヤ笑って見下ろす菅原文太、ビルドアップしたシャープな体躯で今度は平幹二郎を犯すのでしょうか?後ろから・・・

違いました、ちぇっ!

破壊されつくした桑野みゆきは街娼になります。仲間の娼婦・広村芳子はいつかこんな暮らしから抜け出すと言ってましたが、交通事故に見せかけて殺されました。

・・・と、ここまでが桑野みゆきの回想です。彼女はケンカの最中に男子の大事なところを蹴り上げられて不能になったら、ついでにプライドまでなくしてナヨナヨしはじめた平幹二郎というヒモをやしなうために今日も街で男を拾います。たまたま出会った真面目なサラリーマン・園井啓介から駆け落ちを打診されたのですが、先のように組の執拗な追跡に遭うのが目に見えています。

女が結婚を考える機会として最も多いのが「友達の結婚式」であることからわかるように、岩本多代が堅実な家庭を築いて子供がいるのを見たとき、桑野みゆきもちょっとだけ心が揺らぎます。しかし現実が厳しすぎです。そもそもまともに子供できるのか?女性としては一番センシティブな問題です。

そんなこんなで彼女の下着や食事の後片付けを嬉々として担う平幹二郎、ウザイ、ほんとにウザイ、超ウザイ、だけどなんとなく似合ってる?・・・そこで桑野みゆきは最終手段に出るのでした。

近代的なファニーフェイスの桑野みゆきが見る見るうちに堕ちていくわけですが、その、転落の歴史を語る彼女の声、モノローグが驚くほどドスが効いていてビックリです。なるほど酒で焼けたのか?不健康で不機嫌な声がハマります。

男に騙されてあんなことされたんじゃあ、他人の善意を素直に信じる気になるはずもなく、全てをリセットするために刑務所へ入るというチョイスは、まるまんまヤクザのそれですから、たまたま本作品は女性が主人公でしたが、ある意味、男気のある生き方であるといえない事もありません。

自分の人生には自分でオトシマエをキッチリ付けたのですから。能面のような桑野みゆきの顔が夜叉のように変化する一瞬がすごいです。

タイトルのクレジットにナレーター・神山繁とありましたが、最後の最後、桑野みゆきが法廷で証言しているときの弁護士の声でした。なるほど、役柄ばらしたらオチが読めちゃいますからね。

2011年05月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-05-08