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人間模様


■公開:1949年

■制作:新東宝

■制作:児井英生

■監督:市川崑

■原作:丹羽文雄

■脚本:山下與志一 、和田夏十

■撮影:小原譲治

■音楽:

■美術:河野鷹思

■照明:藤林甲

■録音:根岸寿夫

■編集:

■助監督:加戸野五郎

■主演:上原謙

■寸評:


実業家・青山五郎は独身貴族。エロいキャバレーを摘発しに来た警官に足止めを食らっています。彼は秘書の吟子・山口淑子と一緒でした。確かな身元引受人が来れば帰してくれるらしいので、青山五郎は友達の上原謙を呼び出します。彼は有名な私立の学校の校長先生・東山千栄子の息子でした。

女性にモテる男子の条件とは何か?美男子であること、腕っ節とかお金とかあればなおよし。そして特に映画の中では、ちょっと馬鹿が入っているというのも重要な要素です。多少スケベでもそれは高評価に結びつくこともありますが、程度問題です。本作品の上原謙は、見かけ上は圧倒的に二枚目ですが、なにせ底抜けの善人ですので、とる物もとりあえず駆けつけました。従いまして、服装はラフというか貧相というか、ナイトキャップをかぶったまま、しかも敗れた穴から寝癖がピロリン!と飛び出しています。

アホ画にハマっても、やっぱり二枚目の上原謙でありました。

上原謙は世間知らずの超お坊ちゃんですが、別に大金持ちというわけではありません。いずれ、お母さんの後を継いで学校の校長さんになる身の上、将来は安泰のようです。彼は人を疑うことを知りません、人の行為を悪意で考えることもありません。青山五郎はたたき上げの立志伝中の人ですから、生き馬の目を抜くビジネスの世界にどっぷりと浸かって、人を信じることができません、人の誠意なんて、ちり紙よりも軽いものだと思っています。

上原謙には親が決めた許婚がいます。彼女・月丘千秋もお嬢様ですが、進歩的な思想の持ち主であるため、就職もせずそれでも食うに困らないからクラシックのレコードとか毎日聞いてる生活力、精力に欠ける上原謙のことを大いに不満に思っています。

月丘千秋に「あなたって神様みたい!」と言われても、それが自分を馬鹿にしているんだと気がついていても、上原謙は彼女のことを悪い人だとは思っていません。彼女が働きたいというので青山五郎を紹介してあげたのですが、どうやら彼は、気に入らなければどんどん秘書を交代させてしまうようです。すでに、飽きられてしまったらしい山口淑子は、レジ係に降格させられていました。

偶然知り合ったいんちき臭いブローカー・江見渉(江見俊太郎)にコロっと参ってしまった月丘千秋は彼のオフィスで働くことにしました。

顔が少し魚のフナに似ている山口淑子は、青山五郎とは正反対の「癒し系」である上原謙が好きになります。ていうか、癒されたくなります。というのも、実は彼女には夫、正しくは元夫・伊藤雄之助という腐れ縁がついており、すでに他所の女との間に子供までいるのですが、金が欲しくなると彼女の前に現れて付きまとうのです。

伊藤雄之助は青山五郎のオフィスにまで押しかけます。絶望する山口淑子は盲腸炎で倒れます。手術費用を工面してくれたのは上原謙でした。

東山千栄子が急死。上原謙は次期校長先生です。彼は、一生懸命、挨拶の練習をします。誠実で、奢らない人柄なので、月丘千秋のお父さん・斎藤達雄はちょっと心配でしたが、なんのなんの、責任感が出てきたら急に頼もしくなった上原謙です。やるときゃ、やります!

家を出たままさっぱり帰ってこない娘の月丘千秋を心配した斎藤達雄が上原謙を訪ねます。どうやら江見渉は相当、ヤバイ商売をしているようです。月丘千秋を連れて帰ろうとした上原謙に襲いかかった江見渉でしたが、な、なんと!上原謙の右フック一発でのされてしまうのでした。

やるじゃん!上原謙!ケンカはしなくてもいいけど、しないほうがいいけど、イザとなったら強くないとダメです。

さらに、下半身の欲望全開で月丘千秋の迫った江見渉でしたが、そこへ警官隊が乱入し、抵抗のあげくに彼はビルの上から転落死してしまうのでした。ここで、やっと目覚めた月丘千秋でした。

同じく、大切なものは失ってみて始めてわかるもの。青山五郎は、山口淑子を静養のために彼女を保養地に連れて行き、正式にプロポーズしました。青山五郎と山口淑子は結婚することになりました。ちょっとさびしい上原謙ですが、二人を心から祝福します。

青山五郎は金銭と愛情が直結しないことくらいわかっていましたが、その道一筋に生きてきたのでココロに潤いがなくなっていたのでしょう。上原謙の無垢さを見ていて、なんとなく自省した彼は、やっとステキな結婚をすることができました。

経済力とは?あって困るものではありませんが、何事も過ぎると、根性が曲がったり、眼が曇ったりするものらしいです。無ければ無いで困るのですが、無理してまで得ようとするとろくなことがありません。

月丘千秋の、勝手に恋の大冒険は、きっと白馬に乗った、寝癖の王子様が現れてうまくいくと思います。ちょっと、出来すぎの感はありますが、この程度の御伽噺もたまにはいいかな?と。

2011年04月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-04-10