大地の侍 |
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■公開:1956年 ■制作:東映 ■企画:マキノ光雄 、坪井与、吉野誠一 ■制作:マキノ光雄 ■監督:佐伯清 ■原作:本庄陸男 ■脚本:高岩肇 ■撮影:藤井静 ■音楽:早坂文雄 ■美術:北川弘 ■照明:銀屋謙蔵 ■録音:加瀬寿士 ■編集: ■主演:大友柳太朗 ■寸評: |
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「大地」というのは農業のこと。「侍」とは真反対です。この本来はまったくアンマッチな二つがこの映画の主題です。 ちなみに、大友柳太朗はチャンバラしません、この映画はすでにチャンバラの時代が終わっているからなのです。 維新戦争で官軍に敗北した仙台、岩出山藩の藩士たちは身分剥奪、領地没収、このまま旧領地に留まって平民として暮らすか、さもなければ蝦夷地(北海道)の原野開拓をするかという究極の選択を迫られるのでした。家老・大友柳太朗は無職になった藩士たちに、故郷の土地を分けてもらって開墾し郷士となれるよう、薩摩の役人・山形勲に頼みますが、さっきまで戦争していた相手にほいほい土地を与えるはずがありませんでした。 先祖のお墓のある土地を捨てるのは武士の存在そのものを失うことだと、重臣・千田是也は反対します。お殿様・伊藤久哉、奥方・萩京子にも失礼だし、しかしこのままでは朝敵だと蔑まれるし、まともに暮らせるかどうかわかりません。とはいえ、北海道は未開の地。寒いし、クマ出るし・・・しかし大友柳太朗は懸命に説得し、お殿様も移住に同意します。ただし、本当に暮らせるかどうか生活の基盤を作ってから奥方を呼び寄せることにしました。 新婚ホヤホヤの加東大介と高千穂ひづる。舅・明石潮は残ることにしました。このほか、大友柳太朗の妻・三条美紀、宮口精二と杉村春子、田島義文と日野明子、神田隆、富田仲次郎と藤田淑子、加藤嘉。家財道具はハンドキャリーですが、食糧は船で別に送ることにしました。 土があれば作物が育つかと言うとそうはいきません。最初の土地は痩せていて水も少なく何もできません。おまけに、頼みの食糧を積んだ船がなかなか到着しません。移住者達は最初からとんでもない困難に直面するのでした。大友柳太朗はお殿様と一緒に北海道使へ、土地の変更をお願いしに行きます。薩摩の役人に頭を下げるなんて、それはお殿様としていかがなものか?と思っていたお殿様でしたが、家臣のために決心します。 担当の役人はなんと、山形勲でしたが、トップは別の人でした。いろいろと陳情も多く、大友柳太朗と伊藤久哉たちは、商人や職人たちと同じベンチで順番待ちです。あからさまに「ちょんまげ」の一行を馬鹿にする小役人と庶民たち。時代の変化が身に滲みるお殿様です。 山形勲は、大友柳太朗の人物を高く評価していたので話を聞いてくれるのですが、彼はお殿様の伊藤久哉を徹底的に無視します。失礼なヤツなのでしょうか?ひょっとしたら、山形勲は伊藤久哉の器量を見ていたのかもしれません。本当にやる気があるのか?お殿様気質が抜けないようではこの先、多くの家臣たちを導いていけないのではないか?なかなか厳しい面接試験です。 お殿様は惨めでしたが、我慢しました。それどころか、心配する大友柳太朗に「来てよかった」と言うのでした。状況の変化を受け入れて、かつ、責任感をもって行動できる人なのでした。とかくプライドがジャマして部下に責任をおっかぶせるような上役というのは多いものです。どうせなら、こういう上司につきたいものであります。 代替地候補を調査は予定の日数を大幅にオーバー、調査の途中で加東大介と案内人・花澤徳衛が事故死。しかしやっとたどり着いた新しい土地は肥沃で作物もよく育ちそうです。しかし、移住者の生活は日増しに悪化してきます。食糧を積んだ船は結局見つからず、責任を感じた宮口精二は自害。杉村春子は大友柳太朗に不満をぶっつけます。田島義文の妻も将来を悲観して失踪。 新しい土地を開墾するためにはリソースが足りません。移住するための許可は、山形勲が上司をかけあってくれて無事に降りました。さらに山形勲のはからいで移住の費用を稼ぐために公共事業の入札に参加させてもらい、土木工事を請け負うことになった岩出山藩の人たちは、地元の業者たちにイヤガラセも受けますが必死に我慢して難工事をやりとげます。さらなる人手を確保するために、お殿様と大友柳太朗はいったん国許へ戻ることにしました。 国許ではお殿様を引きとめようと必死の説得。移住反対派に襲撃される大友柳太朗でしたが、大人の説得で若い人たちも移住に同意してくれます。しかし、結局は残った人たちの10パーセントくらいしか移住に同意しませんでした。それでも喜ぶお殿様です。 北海道にいる人たちは、お殿様と大友柳太朗が自分たちを見捨てたのではないか?と疑いますが、みんな辛抱して待ち続けます。郵便も本州までしか届かず、大友柳太朗から手紙を預かった行商人も雪が激しいそんな山奥に手紙を運ぶのは無理でした。しかし、ここで奇跡が起こります。田島義文の奥さんが事態の好転を確信して、ガッツで手紙を届けました。 厳冬期の雪原で、加東大介の遺児を抱いた高千穂ひづるが希望に燃える笑顔で、後から移住してくる明石潮たちを出迎えます。 過酷な戦場、その中で催されるささやかな婚礼、落ちぶれて未開の地へ向う不安、原生林を開墾する苦労の連続。侍たちは大地に根を張ってこれから逞しく生きていくのでしょう。明るいラストがホッとさせます。人間の弱さと強さをの源が家族であり、 信義則の大切さ、美しさを体現する侍たちに泣けました。 スレンダーなマスクなので知能犯的な役どころが多い伊藤久哉が精錬なお殿様、いつもはコワモテの神田隆がやさしい寺子屋の先生だったり、富田仲次郎が愚直で誠実だったり、田島義文が妻思いの心優しき男だったりする、意外性も見どころです。 (2011年03月06日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2011-03-27