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南十字星は偽らず


■公開:1953年

■制作:新東宝

■制作:高木次郎

■監督:田中重雄

■原作:山崎アイン

■脚本:成澤昌茂

■撮影:三村明

■音楽:斎藤一郎

■美術:進藤誠吾

■照明:矢口明

■録音:中井喜八郎

■編集:

■主演:高峰三枝子

■寸評:


ボルネオって日本が占領したことあるんですよ。

占領地の知事・千田是也がボルネオに赴任してきました。現地人のアイン・高峰三枝子はマレー人と中国人の混血でエキゾチックな美人です。彼女はイスラム教徒でした。彼女の恋人・若原雅夫もハンサムでしたが少々血の気が多いキリスト教徒でした。宗教が違うので二人は生木を裂かれるように別れてしまい、アインのお姉さん・千明みゆきの旦那・殿山泰司のはからいにより、知事官舎に勤める事になりました。

千田是也は優しいジェントルマンでした。恋人と強制的に別れさせられた高峰三枝子は千田是也の優しさにグラグラきてしまいます。日本人は現地人にとっては解放者でもなんでもなく、ただの征服者ですから、若原雅夫は抗日運動に身を投じていたので、今では高峰三枝子とは敵味方です。こともあろうに義理のお兄さんである殿山泰司が高峰三枝子に襲いかかります。

なんて身の程知らずな!と怒ってやりましょう。おかげで彼は奥さんとの仲が険悪になってしまいます。

日本の戦局が悪化してくると抗日運動も盛んになります。千田是也がテロリストたちに襲われて負傷、高峰三枝子は懸命に看病します。 日本に残してきた奥さんは爆撃で死んだそうです。アインは千田是也とたちまちくっついて子供ができてしまいます。しかし、千田是也の奥さんは生きていました。高峰三枝子は一緒に「妻」になれるだろうくらいのことを思ってました。日本が一夫多妻制だと思ったのですが、違いました。

お姉さんが病気になって死んでしまいます。お姉さんは千田是也と別れてはいけないと言い残しました。

高峰三枝子は男の子を産みます。しかしとうとう日本が負けてしまったので島は英国軍が進駐してきました。千田是也は逮捕されて捕虜収容所へ。高峰三枝子はかつて知事官舎に勤めていた女中・千石規子を頼って行きましたが「日本人の妾は出て行け」と言われて追い払われてしまいます。 今では街娼になっている友達が泊まるところと食べるものの面倒をみてくれました。

高峰三枝子は毎日、捕虜収容所へ行き、行商のオバサンに頼んで差し入れをしてあげたりしますが、現地人はみんな日本人が大嫌いですから、差し入れの物品はさっさと横領されているらしいです。ガックリの高峰三枝子でしたが、食うためには働かねばなりません。しかし、日本人との混血である息子を見て、街の人は彼女のことを、日本人に身体を売った娼婦だと言って唾ペッペでした。

彼女も街娼をします。食うためにはしかたありません。そこをたまたまかつての恋人、若原雅夫に目撃されてしまいます。千田是也が日本に強制送還されることになり、彼は彼女を連れて行こうといいますが、彼女は奥さんに悪い、ということで断ります。若原雅夫は高峰三枝子に俺と結婚してくれと頼みますが、高峰三枝子は断りました。

頭に血が上った若原雅夫は子供の目の前で彼女を刺してしまいます。彼はかけつけた警官たちに射殺されます。瀕死の彼女は千田是也に看取られながら息を引き取るのでした。

いわゆる現地妻ってヤツですね。 こういうのは引き揚げしてきた人にはあったこと、だそうです。

身なりは多少、汚れたりセクシーになったりしていても高峰三枝子のゴージャスな美貌には影響なし。千田是也の高潔さ、若原雅夫のワイルドな魅力。千田是也と日本軍のほうは日本語ですが、台詞のほとんどがマレー語です。正直、何言ってんだか、ところどころ字幕も出ないのでわかりませんし、俳優さんも感情込めるのが大変そうです。

占領後の現地妻とその家族に対しては相当にバッシングがあったことがわかります。ひどい話ですがそういうことを日本はしてきたということでしょう。とにかく子供がかわいそうで、大人の事情で振り回されるのはいつも子供ですね。

2011年03月06日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-03-13