「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


砂糖菓子が壊れるとき


■公開:1967年

■制作:大映

■制作:永田雅一、藤井浩明、本田延三郎

■監督:今井正

■原作:曽野綾子

■脚本:橋田寿賀子

■撮影:中川芳久

■音楽:渡辺岳夫

■美術:下河原友雄

■照明:柴田恒吉

■録音:奥村幸雄

■編集:鈴木東陽

■主演:若尾文子

■寸評:


マリリン・モンローというアメリカのスタアはアメリカのセックスシンボル、数々のセレブと浮名を流し、その死に方の衝撃度でもってすでに伝説です。そして、多くのクリエイターが彼女のビジュアルに、生き様に、ドラマやアートを創造してきました。きっと早世したモンローの生涯に、ハリウッドという夢の工場の、光と影を感じ取ったからでしょう。

精神病院に入院している母親の治療費が払えません。新進女優・若尾文子は金に困ってスチールカメラマン・根上淳の依頼を受けてヌードモデルの仕事を引き受けてしまいます。

ケツをセクシーに振って歩く=モンローウォークが魅力的で、かつ、純粋で素直な彼女はプロダクションの社長・志村喬の目に留まります。彼は彼女のパトロンになり、主演映画をプレゼントし、それは大ヒットします。しかし、例の写真が彼女の足を引っ張りました。映画会社は写真は合成だと発表するよう迫りますが、彼女は志村喬に相談することにしました。志村喬はご老体なので、心臓の病気で療養中でしたが、電話に出てくれて「嘘は正直負ける」とアドバイスしてくれました。

志村喬が亡くなると彼女はとてもさびしいキモチになりました。若尾文子は親の愛情を小さい頃に注がれていないのですぐに不安になります。大部屋女優・原知佐子はズケズケとモノを言うタイプでしたが、若尾文子は彼女のことが好きになります。自分のことを肉の塊だとか陰で馬鹿呼ばわりされるよりも、面と向って馬鹿だといってくれる人のほうが正直で信頼できると言うのです。

原知佐子は彼女のマネージャーを引き受けてくれました。

若尾文子には熱烈なファンがいました。その一人が有名プロ野球選手・藤巻潤でした。彼女は結婚しますが、仕事は多忙を極めます。若尾文子は一生懸命尽くしますが、普通の家庭の主婦を望んでいた藤巻潤との間ではいさかいが絶えなくなり、待望の子供も流産してしまい、とうとう離婚してしまうのでした。

人気スタアのウンコバエだった新聞記者・津川雅彦は彼女を誘惑しようとしましたが、やがて手を引いてしまいました。天性のプレイボーイの動物的なカンというやつでしょうか、彼女の魅力の渦に引き込まれて自滅する将来を予感したのかもしれません。

「馬鹿なのが悪い」と思った若尾文子は大学の聴講生になって勉強します。親切な教授・船越英二を尊敬していましたが、やっぱりコイツも彼女の肉体が目当てでした。表面面がダンディなだけに船越英二、実にヤなヤツです。すでに観客は若尾文子の壊れそうな未来を予感していますから、こんなドグサレ教授は、2ちゃんねるで騒がれて、コンプライアンス委員会で罷免されてしまえ!くらい思いますが、当時の象牙の塔は不可侵です。

失意の若尾文子はホテルに長期宿泊中の作家・田村高廣と出会います。知的で寡黙、それにスケベじゃない!若尾文子はやっと普通の夫と結婚できそうです。二人は上手く行きそうでしたが、彼女にかまけていた田村高廣は作家として新作が書けなくなっていました。それくらい若尾文子は魅力的だったわけですが、このままじゃダメになると思った作家は彼女と離婚してしまいます。

徐々に精神を病んでいた若尾文子、彼女が欲しがっていた女優賞の受賞が決まった夜、彼女はベッドの上で、誰かに電話をかけようとしていたのか、受話器を握り締めたまま死んでしまいます。

死因は睡眠薬の誤飲。

若尾文子演じる、セクシーな女優は、自分をセックスの対象としてではなく、スタアとしてでもなく、普通の人間として扱って欲しかっただけだったのでしょう。しかし、その夢は叶いませんでした。彼女の不幸は、馬鹿だったかもしれないけど鈍感ではなかったことでしょう。

砂糖菓子、美しくて甘いけど脆くて壊れやすい、つまみ食いするには美味しいけれど、食べ過ぎれば胸焼けを起こす。いいタイトルです。

ですが、映画のほうは短時間にエピソードてんこ盛りで、あるシーンで事件が起きても、次のカットで解決しているというお手軽ハイスピードでした。それでもなお、若尾文子の儚い美しさに引っ張られてしまいました。

作家が逗留しているホテルのボーイ役で篠田三郎が一瞬出てきます、お見逃しのないように。

2011年03月06日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-03-06