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ヘアピンサーカス


■公開:1972年

■制作:東京映画、東宝

■制作:安武龍

■監督:西村潔

■原作:五木寛之

■脚本:永原秀一

■撮影:原一民

■音楽:菊地雅章

■美術:樋口幸男

■照明:森弘充

■録音:神蔵昇

■編集:諏訪三千男

■主演:見崎清志

■寸評:


オープニングからカッコいいジャズが流れまくりです。西村潔監督の映画は音楽が重要です。 封切り時に見たときは「すごい!モナコで撮影したんだ!」とか素直に感動していましたが、再見したら全然違いました、バレバレじゃないか!と自分で勝手に騙されてしまいました。

戦闘機が撃墜した敵機の数を機体に書き残すように、江夏夕子たちも「菊の紋」をペイントして粋がっているわけです。戦闘機のバトル=サーカス、ってことで。

この映画が封切られたとき、車好きの人は「プロドライバーの見崎清志、本人が運転するんだ!」と言って大変興奮していましたが、車の運転が上手いというだけでは映画は成立しないんじゃないか?と思って全然期待しないで観ていたところ、ようするに台詞とか芝居とか全部、車の運転で表現すればいいんじゃないか?という新発想だったので、予想以上でした。

あれ、ですよ、あれ、何でもセックスとマージャンで切り抜ける、成人漫画雑誌のアレだと思ってください。ちなみにこの映画、正直、道交法はかなり抵触しているらしいですよ。だって、オープニングの撮影中にハイウエイの上を通報で出動してきた警察のヘリコプターがブンブン飛んでたそうですから。

かつてマカオグランプリで同僚を事故死させてしまったプロのドラバー・見崎清志は、今ではしがない自動車教習所の先生です。イカす車が集まるドライブインでコーヒーを飲むのが唯一の楽しみらしいのですが、ある日、そこに小生意気な娘・江夏夕子が現れます。彼は冴えない坊ちゃんたち・佐藤文康舘信秀有山直樹を従えてステキな車を乗り回し、街道レーサーたちを血祭りにあげているそうです。彼女は見崎清志の教え子でした。

ったく、どんなドライビングテクニック仕込んでるんでしょうか?当然ですが、江夏夕子は当時としては珍しかったと思いますが、ライセンス取得者だったためヒロイン大抜擢。こういうのを「芸は身を助く」と申します。

そりゃ、主役の見崎清志もそうですが。

見崎清志には美人妻・戸部夕子とかわいい赤ちゃんがいました。無理はできません、しかし、彼はかつて、ドライビングテクニック以外のことも色々教えたに違いない江夏夕子が心配でした。今ではオンボロの国産車に乗っている見崎清志ですが、江夏夕子と3馬鹿トリオはチンケな顔して自信満々、今日も今日とて彼らの挑発に乗った一般車が事故多発の魔のカーブに追い込まれて事故ってしまいます。

イカれた若者といえばマリファナパーティーです。このままでは江夏夕子が犯罪者になってしまう、というよりもプロのドライバーとして車を愛している見崎清志としては、これは車に対する冒涜だな、くらいに思ったのかもしれません。火遊びにはお仕置きです。灸くらいじゃ効かないかも知れません。

そんなある日、魔のカーブで死亡事故が起きてしまいます。見崎は決心しました。かつての同僚・睦五郎からスポーツカーを借りた見崎清志はグラサンを装着して、自分の車を囮にして江夏夕子たちを誘い出します。案の定、ひっかかってきました、公道から不整地、ついには歩道まで堂々走行の大バトルの末、お坊ちゃん達は一人、また一人と事故ってしまいます。

ついに江夏夕子と見崎清志の一騎打ち。幻想的なマカオグランプリのフラッシュバック、だから絶対これは警察が見たら怒るって!と思われる違反走行なドライビング合戦の末に、とうとうあの魔のカーブに差し掛かり、見崎清志はギリギリすり抜けましたが、江夏夕子の車は壁に激突し横転、彼女は車の下敷きになってしまうのでした。

「因果応報」ということですが、やりすぎだろう!とツッコミ入れたくなりました。

セックス場面でいつもわけのわからないイメージショットを入れてコトを複雑にする西村潔監督なので、あの、カーバトルは二人のセックスみたいなもんだったのでは?と思います。それくらい、艶かしくドラマチックでした。メカ好きな監督らしいところですね。スキこそものの上手なれということです。ま、映画全体は主役の二人がアレですから、地味っちゃ地味、マニアック。

教習所の生徒として、金で教官を買収しようとするオッサン・富田仲次郎、ケバイお姉ちゃん・田坂都が登場して、本作品唯一のお笑いパートを担当します。華やかなプロドライバーの過去と、ショボすぎる見崎清志の現状を強く訴求するための小道具として活躍。

2011年03月06日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-03-06