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恐山の女


■公開:1965年
■制作:フレンドプロ、松竹
■制作:島津清
■監督:五所平之助
■原作:小川元
■脚本:堀江英雄
■撮影:篠村荘三郎
■音楽:芥川也寸志
■美術:平川透徹

■照明:鈴賀隆夫

■録音:空閑昌敏

■編集:
■主演:吉村実子
■寸評:


満州事変の頃、青森県の大間に、腰痛を患って漁師ができなくなった父親・吉田義夫と母親・菅井きんがいました。夫婦の間には、さほど美人ではないですが、親孝行で身体の丈夫な娘・吉村実子がいました。彼女は家のために廓に売られることになっています。周旋屋・田武謙三と一緒に馬車に揺られて街についた吉村実子、彼女の就職先はなかなか立派なお店です。女将さん・中北千枝子は女丈夫で、亭主・中村是好もイイ人そうです。

当時は売春もまっとうな商売で、吉村実子のように東北地方の貧村からほかに、伊藤幸子富永美沙子石井トミコらも売られてきています。街は軍港なので、お客さんの多くは海軍の水兵さんです。みんな若々しくてウブな好青年です。

吉村実子には街の有力者である材木商・殿山泰司が最初の男になりました。殿山泰司は彼女にゾッコンです。優良な上客がついたので女将さんの中北千枝子もホクホクですが、実は、これが吉村実子にとっては不幸の始まりでした。

街の若い衆の一人・寺田農と知り合った吉村実子は、彼の最初の女になりますが、実は、寺田農と殿山泰司は親子でした。下働きの婆や・浦辺粂子は、親子に肌を許すと不幸が起きるというオシラサマの祟りを畏れました。寺田農は次男坊の冷や飯で養子に出されていたせいか、早々に応召されて大陸の戦線へ送られます。殿山泰司は嫌がる吉村実子に迫って真っ最中、腹上死してしまうのでした。

そして間の悪いことに、寺田農は戦地でも肌身離さず持っていた吉村実子の写真をからかった上官を殺してしまい、自決してしまったのでした。親子どんぶりの祟りは本物だった!街の人たちは噂しましたが、怖いもの見たさの客の好奇心と、カルトな人気で吉村実子は売れっ娘でした。

二人のお墓の前で、吉村実子はイカす青年・川崎敬三に出会いました。彼は東京で働いています。そして、なんと、彼は殿山泰司の長男で、寺田農のお兄さんなのでした。都市伝説にされた父と兄が単なる偶然で死んだことを証明するために「二人が恋人になって、キレイに別れる」という作戦を提案する川崎敬三。そんな手の込んだことをしなくても良さそうなものですが、吉村実子も協力を約束します。

偽装カップルの芝居をしているうちに、とうとう川崎敬三は吉村実子にマジ惚れしてしまいます。郊外の宿で一夜をともにした二人、川崎敬三はヒッチハイクして街へ戻ろうとしますが軍用トラックに轢殺されます。

いよいよ吉村実子は忌み嫌われ、店の売り上げはがた落ちです。ただでさえ、日本は日中戦争から太平洋戦争へ拡大してしまい、北の町には軍艦が入ってこなくなり、彼女はお荷物になってしまいます。母親の菅井きんに付き添われ、オコゼのような顔をした行者・東野英治郎に頼んで祟りを払ってもらうことにした吉村実子。

水をぶっかけられて走らされ、東野英治郎の杖に打たれた彼女はハイになり「もっと打って!」と叫びながら死んでしまいました。「悪霊退散は大成功」とばかりに意気揚々とその場を去る東野英治郎、おい!待てジジイ!そういうのは業務上過失致死って言うんだぜ!しかし、無学な菅井きんは現実を受け止めて、娘の死後20年にもわたって、恐山に通いつめ、命日にはイタコに口寄せをしてもらうのでした。

最初は、親孝行だと褒められながら売春婦になった女が、仕事や純愛で出会った男たちに精一杯尽くし、単なる偶然で死んでしまった男たちの責任を取らされ、いやらしい憲兵に「非国民」呼ばわりされて罵られ、厄介者扱いにされて、とうとう魔女狩り同然に殺されてしまった吉村実子。

働き盛りの男子はみんな戦争にとられ、内地には爺さんとガキしか残っていない、貧しさゆえに身体を売り、命がけに生きて、母にもなれずに死んだ女が当時の日本にはたくさんいたんだと言うことです。

2011年02月27日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-02-28