ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども |
|
■公開:1961年 ■照明:元持秀雄 ■録音:広上庄三 ■編集:祖田富美夫 |
|
タイトルからして滅茶苦茶、意味不明。 結局、ヒマラヤには雪男はいないというオチでした。さらに、ジョージ・ファーネス、ハロルド・コンウェイ、オスマン・ユセフは、映画会社の枠を超越して、映画をSFっぽくする飛び道具であることを証明しました。ってか、雪男ってタイトルですけどSFでもなんでもないんですけどね。 ニュー東映、その、火の車のような台所事情を象徴する、大噴火の社名ロゴからわかるように、低予算、ハイスピード、つまりお手軽な娯楽作品が身上です。 ヒマラヤの探検隊が雪男に襲撃されたらしいです。 「雪男を最初に捕獲するのは何処の国の探検隊か?」賭けの対象となるくらい、雪男は世界中の注目の的になります。日本人の博士・片岡千恵蔵が率いる探検隊・片岡栄二郎らの一行がネパールで、雪男を捕らえたというニュースが世界を駆け巡りました。 ところが帰国した探検隊は揃いも揃ってヒゲ面で、確かに雪男みたいですが、本物の雪男の所在は未だに不明です。そして、この、雪男を付け狙う一味がいました。 一目で悪い人たちであると分かるように?メンバーは、山形勲、中国人の博士・三島雅夫、手下・関山耕二、潮健児、福井一郎というメンツです。 東京都内のクラブで、雪男(ニセモノ)・進藤英太郎とボインの美女・筑波久子のSMっぽいショーが大人気。しかし、本物が現れては商売上がったりと心配した進藤英太郎は、クラブの支配人である山形勲に唆されて、千恵蔵御大の屋敷に忍び込んで雪男殺害を狙いますが、千恵蔵御大にあっさりと撃退されてしまいます。 千恵蔵御大の妹・佐久間良子は新聞記者です。彼女の同僚の新聞記者・江原真二郎はお人よしで彼女に全然頭が上がりません。お兄さんが雪男の所在を必ず知っていると断定した編集長・花澤徳衛の特命、そして一発スクープを当ててやりたいという記者根性により、佐久間良子は自宅の風呂場に氷付けにされていた雪男っぽい大男・羅生門(元お相撲さん→後にプロレスラー)を発見して写真を撮ります。 フラッシュに驚いた雪男がむっくり起き出すと、当家のお手伝いさん・五月藤江もビックリですが、そこへ戻ってきた千恵蔵御大が奇妙奇天烈なヒマラヤ語を駆使して雪男をなだめます。これが最後まで、笑いを取ります。 ジャズシンガーのヨッチィ(良重)三谷(水谷)・水谷良重(なめとんのか?この役名)の正体はインターポール。事件の真相は、雪男探しなんてロマンな話ではないらしいです。それにかかわっている人たちをおびき出すために、千恵蔵御大は雪男を学会で発表すると宣言します。しかし、会場には何時まで経っても、千恵蔵御大も雪男も現れません。議長・宇佐美淳也もシビレを切らしてしまいます。 そこへ、ヒゲをそり落とした多羅尾伴内ではなく、千恵蔵御大がタキシードで登場。悪の一味は、ヒマラヤで発見した貴重な鉱物の利権を独占するために、現地のシェルパを証拠隠滅のために惨殺しており、雪男は実は殺されたシェルパの息子、つまりただの人間だったというオチ。 彼は、千恵蔵御大の協力を得て親の敵討ちをするために日本に来たのでした。進藤英太郎もかく乱作戦のために千恵蔵御大に協力、超高圧電流で感電する名(迷)演技を披露します。 雪男人気を当て込んだ「雪男」コンテストに出場する羽目になった千恵蔵御大と進藤英太郎が、度胸試しに東京タワーの非常回廊を歩いたり、白昼半裸でつけ胸毛だったり(よく見ると周辺のオフィスビルの窓から見物している人が多数います)、バスを引っ張って怪力比べしたり(映りそうになって慌てて身を隠すバスの運転手さんが丸見えです)、当時の美人女優たち(劇中、本人役で登場)・久保菜穂子、三田佳子、山東昭子らが千恵蔵御大と進藤英太郎をボディタッチしまくるとか・・・時代劇では偉そうな人たちが、本作品ではただのお笑い兵器と化しているのが、面白いを超越して、むしろ痛々しいくらいです。 まあいつものことですが、拳銃の弾は顔をひょいと動かしただけでは避けきれないと思いますが、千恵蔵御大にかかってはブローニングもコルトも手裏剣扱いです。正体がバレた悪い人たちは激しい銃撃戦の末に一網打尽、雪男も無事にヒマラヤへ帰っていくのでした。 撮影に全面協力と思われる日本航空、DC8に無理やりヤギ(雪男はこれを生でお召し上がり)を引っ張りあげるスッチーが可愛かったです。 で、どこいらへんが無宿なのか?心臓破りなのか?と訊かれてもサッパリ分かりませんが、そういうことはどうでもよくて、千恵蔵御大の型破りな活躍を拝み見ましょう。 このほかの登場人物と俳優、テレビで真面目に雪男についてコメントする上田吉二郎、間抜けな解説をする堺俊二、ちなみに相手のアナウンサーの一人が押坂忍でありました。 (2011年02月06日 ) 【追記】 |
|
※本文中敬称略 |
|
file updated : 2011-02-07