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河内のオッサンの唄


■公開:1976年

■制作:東映(東京)

■企画:坂上順

■監督:斎藤武市

■原作:

■脚本:関本郁夫、高田純

■撮影:中島芳男

■音楽:鏑木創

■美術:藤田博

■照明:萩原猶義

■録音:小松忠之

■編集:田中修

■主演:川谷拓三

■寸評:主題歌はミス花子、当時は流行りましたよ、河内弁の唄。

ネタバレあります。


なんか、やたらと画面がクルクル回るんですけど?フェードイン・アウトも含めて画面の切替にあまり凝らない東映の映画に慣れていると少々異質です。

河内松原というところが舞台ですが、東映東京の製作、つまりは低予算です。

あ、そんなはっきり言わなくてもいいんですが。

川谷拓三は河内ではちょっと名の知れたイキな兄貴です。とはいえ、それは居住する長屋周辺限定であります。生業は白タク、つまりは無許可で営業している個人タクシーですね。

花火屋の娘・夏純子も気風のいいお姉ちゃんです。不良に絡まれているところを幼馴染の川谷拓三に助けてもらいましたが、博打が好きで、闘鶏に夢中になってしまい、毎日すってんてんになるような甲斐性なしの川谷拓三には大変、鼻っ柱の強いお嬢さんでもあります。

たいへん珍しく博打で馬鹿ツキした川谷拓三は闘鶏で勝ったことが無い室田日出男にも大勝し、夏純子とタイマン勝負をしても大勝利。ここで身体を張った夏純子はそのまま押しかけ女房になりました。こんな回りくどいことをしないと「好き」なんて言えない性分、これもまた河内モンならではなのでしょう。

惚れっぽい女房・花柳幻舟が男を追っかけて家出して結局フラれて帰ってきてもなんとなく受け入れてしまう亭主・斎藤喜一。これも、河内松原の風土なのでしょう、か?

やってることは滅茶苦茶なのに、なんとなく寄り添って暮らしている、そういう人たちが主役です。

関東言葉で台詞棒読みの若い男・岩城滉一が運転するダンプにぶつけられてキレた川谷拓三でしたが、反省して謝ってる相手にはそれ以上、手を出さないのがカッコいい河内男らしいので、弁償しようとした金を黙って突き返しました。そこに「惚れた」岩城滉一は、川谷拓三を「兄貴」と呼んでイキナリ居候します。

新婚家庭に岩城滉一が同居なんかしたら、女房の下半身が心配になるかと思いきや、夏純子と川谷拓三は遠慮会釈無く夜の合体をしたので、たまらず外へ出た岩城滉一に風呂屋の娘が俄然モーションかけてきて、こともあろうに河原の草むらで結ばれてしまったのでした。

風呂屋のオヤジがキレまくりしましたが、岩城滉一はいさぎよく娘との間の責任を取ろうとしました。しかし、実は岩城滉一は、東京のヤクザから末端価格1億円の覚せい剤を横領して、組長の情婦と一緒に逃げようとして、結局、女がついて来なかったので一人で河内まで逃げてきたのでした。ちょうど身を隠すのに都合の良さそうな、お人よし全開の川谷拓三を利用したという岩城滉一。

東京から来たヤクザは、東映東京の常連俳優のように気合の入ったコワモテ揃い。関西出身で東京常駐の技斗の先生・日尾孝司亀山達也、幹部が今井健二、組長が田中浩。京都の大物と比較すると若干小粒の印象ですが、岩城滉一と風呂屋の娘がすぐに拉致されてしまいました。

二人を取り返そうとした、長屋のご意見番であり、家出した一人娘・奈美悦子の帰りを待つアル中の婆さん・ミヤコ蝶々が、東映東京の連中に、じゃなくて、東京のヤクザに車で轢殺されると、川谷拓三の怒りが大爆発。

その上、同じく川谷拓三の幼馴染で、長屋のアイドルだった奈美悦子が、今では東京のヤクザたちに薬物中毒にされて売春させられてると知った川谷拓三は、単身で東京へ乗り込むのでした。

そこへ嬉しい助っ人が!そうです、室田日出男です。博打仲間の危機に、東映東京にもよく出張している、頼もしい大男が一緒に殴りこんでくれるのです。

麻薬を隠し持っている(実は足を洗おうとした岩城滉一がとっくに捨ててしまった)とウソをついてコンロッカーの鍵を飲み込んだ川谷拓三は、ウンコ出しリンチにあったりしますが、どさくさまぎれに岩城滉一と風呂屋の娘を救出、次に奈美悦子も助け出そうしましたが、乱闘の最中に負傷、しかしカッコいいお医者様・川地民夫が助けてくれました。

今度は新たな麻薬取引の現場に殴り込みです。いつもは「出て来い!ガードマン(または国際警察)!」とかテレビのアクションドラマでカービン銃を振り回す姿もおなじみの狂犬・今井健二から、ライフルを奪った川谷拓三と室田日出男は、麻薬と金を海にばら撒いて、駆けつけた警官たちにヤクザたちを逮捕してもらいました。

しかし、見るからにアヤシイ、岩城滉一、室田日出男、川谷拓三も暴れたせいでしょうか?手錠つきで警視庁へ護送されてしまうのでした。

東京のツンとしたデジタルな風景に、アナログな川谷拓三が完全にアンマッチなのが笑えます。

勝手が違う東映東京の俳優たちよりも、新宿あたりで迷子になる川谷拓三にケンカ売られそうになる成瀬孝や、野口貴史岩尾正隆とのカラミのほうがイキイキしているような気がする川谷拓三なのでした。

2011年12月04日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-12-04