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喜劇 特出しヒモ天国


■公開:1975年

■制作:東映(京都)

■企画:奈村脇

■監督:森崎東

■原作:林征二

■脚本:山本英明、松本功

■撮影:古谷伸

■音楽:広瀬健次郎

■美術:吉村晟

■照明:金子凱美

■録音:野津裕男

■編集:神田忠男

■主演:山城新伍

■寸評:野口貴史さんだけが正しい出演者なのであって、深作欣二、工藤栄一、名和宏、室田日出男、志賀勝、渡瀬恒彦ったら・・・

ネタバレあります。


女は強く逞しく、美しく。男はか弱く、情けなく。こういう映画を笑って泣ける映画と言うのでしょうね。

なんなんだ?このストリップ小屋は墓場の真裏に建ってるわけか?そりゃまあ土地代は激安かもしれないし、どんなに音漏れしても聞いてるのは仏様と坊主・殿山泰司だけなので苦情も出ないでしょうね。

さて、京都のストリップ小屋の経営者・北村英三は、ストリップ小屋の客でもある車のセールスマン・山城新伍への月賦の支払が滞っているため毎日のように督促されますが、のらりくらりとかわしています。挙句には「小屋の支配人にならないか?」と山城新伍を逆にリクルートする始末です。

傍目から見ても、山城新伍にはそっちのほうが似合っているとは思いますが。

ストリップといえば、特出しや本番が売りですから、公然わいせつ罪で定期的にストリッパーが所轄署に検挙される、とはいえ双方ともに「なあなあ」ですますのが通常です。北村英三のとっさの思いつきで、にわか支配人にさせられた山城新伍は文字通り無実の罪で3日間の拘留、ブタ箱出されたときにはすでに会社をクビになってしまい、正真正銘の支配人になってしまうのでした。

ストリッパーたちは個性豊かです。大ベテランの絵沢萠子、性転換したカルーセル麻紀、元アル中のホームレスだった芹明香、そして池玲子。彼女達にはそれぞれマネージャー兼付き人であるヒモと呼ばれる男たち・蓑和田良太司裕介奈辺悟、がくっついています。

学生服を着て客を装っていながら実は刑事だった川谷拓三はプライベートでストリップ小屋にかぶりつきしていました。それを目ざとく見つけたストリッパーがステージに引っ張り上げて本番ヤッてしまい、なんとまたもや警察の手入れ、川谷拓三は警察をクビになってしまいました。

失意の川谷拓三は屋台でひとり飲み、どうだい一緒に飲まないかと、半笑いの労務者たちが寄ってくる。逃げろ!川谷拓三!危険だ、この連中は危険だ、だって、渡瀬恒彦名和宏室田日出男志賀勝野口貴史深作欣二じゃねえか!野口貴史はクレジットされてたけど、あとは全員カメオ出演。

振り向いた屋台のオヤジは、工藤栄一だ!最初に酔ってからんだのは川谷拓三だけど、引き倒して蹴り入れてるのは深作欣二だ、本当に入ってるような気がする、何がそんなに腹立ったの?渡瀬恒彦が監督を止めてる、さすがピラニア軍団の守護者だ!

そもそもは芹明香を拾い上げて来たのは藤原釜足でしたが、ようするに彼は昔はヒモしてたわけで、再びヒモ生活へ戻ろうとしたのですが、川谷拓三が芹明香のヒモになってしまい、横取りされてしまいました。北海道のサケの産卵を見てもわかるとおり、女系家族のライオンのように、オスがメスにヒモとして認められるには弱肉強食の掟があるのです。

カルーセル麻紀を追っかけてきた川地民夫がやって来ます。彼女、じゃなくて彼、カルーセルのことを本物の女だと勘違いしている馬鹿な九州男児です。川地民夫にすべてを告白したカルーセル麻紀でしたが、川地民夫は彼じゃなくて彼女のことをあきらめず、職を転々とした挙句にヒモになってしまいました。

日活の青春スタアだったのに、川地民夫は「まむしの兄弟」そのまんまのノリでとても楽しそうです。

ストリッパーたちは巡業に出かけます。しばらく山城新伍の小屋はヒマになりそうです。ひとり残った池玲子は、出産費用が必要なので妻・森崎由紀をストリッパーにしたいという夫・下条アトムの依頼を聞き入れて連日の猛特訓に付き合っていました。森崎由紀と下条アトムは聾唖者の夫婦でしたが、二人とも一生懸命でした。

山城新伍は池玲子と雪の降る夜に結ばれました。

芹明香は、なにせ元は、ていうか今でもアルコール入っても入らなくても頭にセロトニンが出まくるタイプなので、絵沢萠子の元ヒモ・岡八郎に間違って夜這いをかけられても気がつかず、キレた川谷拓三ととうとうケンカ別れしてしまいました。

リクルートしたストリッパーを若いオスに次々と横取りされ、博打に負けてズボンを絵沢萠子に巻き上げられ、越中フンドシ姿にされて恥ずかしい思いをした藤原釜足は子連れのストリッパー・中島葵のヒモになって帰ってきました。森崎由紀も、テープトラブルもものかはで立派に踊れるようになりました。その矢先、小屋が火事になってしまいます。

懐かしい顔が揃った精霊流しの日に、焼酎かっくらって川をパンイチで泳ぐというトンデモナイ行為を芹明香が行なったバチでしょうか?藤原鎌足と家族が焼死してしまいました。

焼香には取り上げたズボンを供えに絵沢萠子もやって来ました。山城新伍がだらしなくなっていくのに耐えられず出て行った池玲子も来ました。なんだかんだあっても寝食をともにした仲間なのです。藤原釜足のお弔いのために張り切った芹明香でしたが、またもや警察の手入れが!

刑事さん・疋田泰盛の説明によると今回は所轄署ではなく京都府警の一斉手入れだとか。ストリッパーとヒモたち、そして北村英三までもが逮捕されてしまいました。逃げ回った芹明香と山城新伍はなんとか助かったようですが、そこへ川谷拓三が現れます。山城新伍と一緒にいた芹明香に逆上した川谷拓三はまかないの台所にあった出刃包丁で山城新伍を一突き!

警察に猛烈に抵抗しながら連行される芹明香、ストリッパーの抵抗といえば「あるもん、見せたる!」ということでパンツを引き裂いて「見せよう」と大暴れ!警察がわいせつ罪の片棒かついじゃまずいんで必死にアソコを隠す疋田泰盛。その後ろから「人殺しは逮捕しないで、ストリッパーを逮捕するのか!」と、今、山城新伍を刺した川谷拓三が警察に相手にしてもらえず、地団太を踏んでいました。

重傷でしたが死ななかった山城新伍のもとへ池玲子がお見舞いに来ますが、ここでもヒモ生活にどっぷり漬かった山城新伍はストリッパーの心配ばかり、下条アトムと森崎由紀に赤ちゃんが無事に誕生したのを見届けると池玲子は去っていきました。

人は死ぬ、人は反省なんかしない、できない、何がなんだかわからなくて、地獄や極楽なんてわからなくても、安心しましょう!人は死ぬ。殿山泰司の説教になんども頷くシニアの皆さん。

馬鹿は死ななきゃなおらない、ヒモは死ぬような目に遭ってもなおらない、ヒモ天国というよりも、ヒモ生活をしていると天国行きだという感じの映画でした。

男と女のあいだには暗くて深い河がある、野坂昭如の「黒の舟歌」が主題歌です。共同生活を送りながらも女とヒモとは永遠に分かり合えない間柄なのかもしれません。

他の東映裸映画のように、女優とちり紙の区別がつかない石井輝男監督を筆頭に女優さんが汗臭い描き方とは違い、とても崇高な感じに描かれています。もちろん、同性から見ても惚れる、芹明香姐さんのスレンダーな身体の運動性能もあますところなく描かれますので、ファンの方々は必見で。

2011年12月04日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-12-04