明日泣く |
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■公開:2011年 ■制作:ブラウニー ■企画:伊藤彰彦 ■監督:内藤誠 ■原作:阿佐田哲也 ■脚本:伊藤彰彦、内藤研 ■撮影:月永雄太 ■音楽:渋谷毅 ■美術:大藤邦康 ■照明: ■録音:高田伸也 ■編集:冨永昌敬 ■主演:斎藤工 ■寸評:キッコと武が歩く線路沿いの道は日芸(日本大学芸術学部)裏の西武池袋線と見た。 ネタバレあります。 |
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まだパチンコが現金収入源としては不十分だった頃の話です。 大四喜(役萬)なんて、一生のうちに一回出ればいいくらいなのに(注:一般人のレベル)そんなに都合よく出てたまるか!と叫ぶ麻雀好きの方もおられましょうが、ソレは本題じゃないです。 元軍人の父親を持ち、文学高校生だった武・斎藤工は、自称「ニューオルリンズ出身」のキッコ・汐見ゆかりが、エロい音楽教師・奥瀬繁にストーカーされているところをなんとなく救出して以来、なんとなく彼女のことが気になっていました。斎藤工は、イカサマで麻雀ができるくらいセミプロ級の腕前でしたが、別にプロの雀士になるとかではなく、純粋にお金を稼ぐための手段でした。 ある日、喫茶店で出会ったオカッパの謎のおばさん・島田陽子とルーレット賭博に行った斎藤工は、彼女の豪快な賭けっぷりに興味を惹かれました。 キッコはとうとう音楽教師と心中未遂を起こします。そして、キッコの姿はしばらく、斎藤工の前から消えました。 その後、斎藤工は小説で一発当てて、担当の編集者・井端珠里がつくようになりましたが、その後の作品は当らず、相変わらず麻雀にあけくれており、出版社にも借金しまくりです。 ある日、ジャズピアニストを目指していたキッコが、ジャズドラマーの武藤昭平の情婦として、また、前座のカクテルピアノを弾くピアニストとしてクラブに姿を現わしました。 久々の再会に戸惑う斎藤工ですが、なんとなく生きてて良かったと安心した反面、音楽教師と結婚していたという現実に幻滅もしました。 キッコは前座なんかで満足しません。武藤昭平と別れたキッコは、黒人のドラマーとベーシストでトリオを組んで、成功していきます。とは言え、やはりメジャーではないのでジャズバーの客の入りが悪ければ、メンバーに日当すら払えません。 作家としてはまことに不名誉な「一発屋」という称号がささやかれはじめた斎藤工、ある日、キッコが金を貸して欲しいとやって来ますが、それは全然無理でした。キッコは自分の身体を賭けるから、大勝負に出るように斎藤工に頼みます、ってそれは「ベストセラー書け」とかじゃなくて賭け麻雀の勝負。 斎藤工はおそらく生涯でももっとも真面目に麻雀に取り組んだので、役萬の大四喜で大勝利。おかげでキッコはお金ももらえて、身体もセーフでした。キッコは負けん気が途方もなく強く、斎藤工に泣き顔を一度も見せることなく、去って行きました。 何年か経って、相変わらず麻雀をしている斎藤工が、ふとテレビに目をやると、そこには・・・ 女の悲しい稚拙なウソを受け止めてあげようとして、受け止めきれなくて、切なくて悩むんだけどそれでも爽やかでクサミがないのは斎藤工のキャラでしょうか、それとも今日日の若い衆が草食系で情念が薄いからでしょうか、微妙ですが。 ようするにジャズの生演奏にほれ込んで、なんとか映画にしたかったようです。それがつまらないかと言うとそんなことはなく、プチアウトローな斎藤工を軸に、当時、アンダーグラウンドな世界に生息していた規格外の人々の生態を描きます。 どこの馬の骨ともわからないアヤシイ人々が、出ては消えていく、そんな時代の空気、そういう人たちが生きていられた時代の器を体現する、特別出演の梅宮辰夫。 監督の描きたいのものが明瞭なので、潔さが後味を良くしている良い映画です。 原作者=斎藤工の自伝的なお話なので、特にドラマチックな出来事があるわけじゃないんですが、とにかく麻雀、雀荘、ルーレットなどのギャンブル場面が多い映画です。 ジャズ演奏のシーンは素晴らしかったのですが、雀荘の場面はイマイチでした。 今日日の若い衆は麻雀あんまりしませんから、仕方ないですが、昔の雀荘はもっと殺気立っており、アレに人生かけてた人間のクズがたくさんいました。キッコみたいに、雀荘であんな大声出して乱入してきたら負けが込んでる客から、カレーライス(レトルトのボンカレー)が皿ごと飛んでくるか、ジロリと睨まれて「おい、うるせえぞ」と怒られるのがオチです。 そういう意味では、警察の手入れが入ってるのに、ルーレットの結果に目を凝らして逃げない島田陽子、あれこそ人間のクズです、リアルです、天晴れです。麻雀ならテンパッてるときに、仮に雀荘が火事になってもそのまま焼け死ぬタイプ。 ま、それじゃ映画になりませんので。 あと、主人公がタバコ吸いまくるくせに歯にまったくヤニがついてないのも、ま、そこまでくると「麻雀放浪記」になっちゃいますけども。 音楽映画なので、汐見ゆかりがもう少し弾いてくれたらさらに良かったのが悔やまれます。しかし、あの背筋はプロのピアニストっぽくて好きでした。武藤昭平のジャズ演奏のシーンは鳥肌びんびん、思わず拍手しそうになるかも。 (2011年11月27日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2011-11-28