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若い貴族たち 13階段のマキ


■公開:1975年

■制作:東映

■企画:太田浩児、寺西国光

■監督:内藤誠

■原作:梶原一騎、佐藤まさあき

■脚本:金子武郎、内藤誠

■撮影:山沢義一

■音楽:菊池俊輔

■美術:北川弘

■照明:梅谷茂

■録音:井上賢三

■編集:西東清明

■主演:志穂美悦子

■寸評:芹明香姐さんのお耳がぶった切られるスプラッターシーンがあります。

ネタバレあります。


この映画を観るにあたり大切なことは、原作は漫画だということです。

さて、街の不良娘の団体である野良猫グループのリーダーは13階段のマキと呼ばれていた志保美悦子(以下、悦ちゃん)です。

カツアゲやアンパンなどの不健康なシノギをしない野良猫たち・ジャンボ久世などがどうやって日々の糧を得ていたかどうかは正直、よくわからないのですが、硬派がウリのグループなので、武芸家の兄・千葉真一(回想シーンのみ)の指導を得て武芸に秀でた悦ちゃんの教育方針により日々、空手の稽古に励んだりしています。

他の東映のスケバン映画が身体を生業にして日々逞しく生活していく展開とは違い、スポ根ドラマの味わいがのっけから漂っています。ま、主役が体育会系女子の悦ちゃんであるという縛りがあるためやむをえないところではありますが、当時の東映東京のリソース状況に鑑みますと、色っぽいお姉さんや、文太、梅宮、山城、およびその他大勢の男優陣が京都の「仁義なき戦い」へ出稼ぎ中だったということもあり、若手のお嬢さんたちしかいなかったわけで、ある意味、留守を預かる内藤誠監督の苦肉の策であることも忘れてはなりません。

さて、本題ですが、いやこれがなかなか楽しい見世物でした。特にJAC(現・JAE)のみなさんのキレのよいトンボは素晴らしいの一言です。そこ、か?・・・でも大事。

映画の本題に何の関係もないですが、気にしないでください。

悦ちゃんは大手の暴力団の威光をカサに着るようなマネも嫌いです。女のハダカを食い物にしている連中の魔手から逃れたストリッパーを匿った悦ちゃんは、実質経営を任されているヤクザたち・上野山功一久地明、そしてJACのみなさんにタイマン勝負を申し込まれました。悦ちゃんと対決するのは、元空手の選手でしたが死亡事故で業界を追放された南城竜也

はい、大きなお友達には「変身忍者嵐」だったり「鉄人タイガーセブン」だったりした、濃い顔の俳優さんですね、私、結構好きでした、はい。芝居はどうしようもありませんが、一生懸命さは買っています。

南城竜也はフェアプレー精神の人なので、純粋に悦ちゃんと勝負したかったのに、卑怯な手口を繰り出すヤクザにジャマされていつも、優勢な展開なのに途中で止めさせられてしまうのでした。

悦ちゃんは、職人の養父・大宮敏充(以下、デン助)に兄の千葉ちゃんとともに拾われた苦労人です。お酒が好きなデン助はすでに少々ロレツが怪しいですが、実はわりと美男子だったりするので、デン助劇場のその後のデン助を見るようでオールドタイマーズのハートをワシヅカミの人情芝居を繰り広げ、悦ちゃんの素人芝居とのコントラストが鮮やかでした。

風俗業で大成功した実業家・近藤宏の娘・大原美佐は、金の力で悦ちゃんたちにイジワルをしかけますが、お仕置きとして、とうとう背中に彫り物まで入れられてしまうのでした。復讐に燃えるお嬢様でしたが、近藤宏のビジネスを成功させるためにダーティーな仕事を一手に引き受けていた名和宏に、人身御供として嫁入りすることになりました。

怒髪天を突くお嬢様でしたがなすすべがありません。近藤宏も掌中の珠をみすみす、あんなドスケベな名和ちゃんにくれてやる気もなければ、名和ちゃんを後継者に指名するつもりもありませんでしたが、名和ちゃんに下半身を握られていた秘書の画策により、近藤宏は自動車ごと爆死してしまいました。

すべてをあきらめて捨て鉢になったお嬢様。名和ちゃんは、目障りだった悦ちゃんをまたもや南城竜也と対決させておき、濡れ衣を着せて少年院へ送り込み、悦ちゃんの留守中に子分たちをシャブ漬けにしてボロボロにしてしまいました。

少年院の監守・室田日出男は名和ちゃんのスパイでした。室田日出男に徹底的にイジメられる悦ちゃん。そして、少年院を牛耳る大ボス・柴田鋭子、髪の毛を武器に悦ちゃんの暗殺を企てる芹明香、最後は牛小屋の傍で対決、いやはや貧乏臭さ大爆発ですが、京都とかけもちと推察される室田日出男しか監守が見当たらない少年院というのが素晴らしすぎでした。

少年院を脱走した悦ちゃん、お嬢様と悦ちゃんを守るために奮戦する南城竜也、意外な男気を見せたお嬢様と、ヤクザ(主にJAC)との大乱戦へ突入するのでありました。

不良番長と同様に主題歌を歌うのは悦ちゃんです。感想は特にありません、一度は聞いておいても良いと思いますが、二度とは聞かなくていいです。ジュリーの「追憶」を鼻歌でコブシをまわして歌う内田勝正のほうが数倍歌唱力があったとは思いますが。

BGMに沢田研二の「追憶」が流れます。歌詞の「ニーナ」にひっかけて、ヤクザの手先で野良猫グループを痛めつける色男・内田勝正が登場しますが彼の名前が「ニーナです」誰だよお前。コワモテの二枚目、内田勝正の数少ないコメディリリーフでありました。

2011年11月27日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-11-28