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嬉しい娘


■公開:1934年

■制作:日活

■制作:

■監督:千葉泰樹

■原作:小国英雄

■脚本:小国英雄

■撮影:三浦光雄

■音楽:

■美術:

■照明:

■録音:

■編集:

■主演:山田五十鈴

■寸評:

ネタバレあります。


簡易保険というのは実に素晴らしい制度ですね!老眼の人には絶対読めないようなポイント数でびっしり書かれた約款をちゃんと読む人なんていないのに、読ませようとしたり、書いてあるから読め!読んだはずだと無言の強制をしたり、よく読むと徹底的に保険屋が金を出さなくてもすむようになっていたりするけど、そういう現実は抜きにして、保険ってすばらしい!

商事会社の社長・山本嘉一は息子・杉狂児を後継者に指名します。しかし重役たちは怪訝な表情であります。

えー!あの放蕩息子が?この会社ヤバくね?ガビーン!と、その馬鹿息子の父親に直接言えるわけが無いのですが、内心すごく困っている重役連中でありました。

あ、言い忘れましたけど、本作品はサイレント映画です。

で、その馬鹿息子は今日もゆっくりと朝寝坊、昨夜の大酒で二日酔いだし、セレブなお母さんの御機嫌伺いに忙しいヤブ医者なんかに診てもらうのはイヤだけど、診察してもらうと案の定、処方箋が「むかい酒」、おいおい。

自動車でお出かけした杉狂児は、途中ですごくキレイな娘・山田五十鈴(17歳)を目撃、頭に血が上り、ストーカーまがいの追跡を開始、川があろうが、くぼみがあろうが、徹底的に追いかけた結果、ついに彼女の住む長屋を突き止めました。

よーし!彼女のアドレス(現住所)、ゲットだぜぃ!

しかし、彼女の家を訪問するきっかけがありません、当たり前ですが。

そこへ簡易保険の勧誘員が入って行くのが見えました。山田五十鈴のお父さんは昔かたぎで宵越しの銭は持たない主義の江戸っ子だったので、豆腐(青白くてフニャフニャした野郎)と保険が大嫌いという理由で、勧誘員をたたき出してしまうのでした。そして、乱暴なお父さんに対して、心の優しい山田五十鈴は勧誘員をやさしく介抱しました。

そうか!この手があったか!

杉狂児は勧誘員に成りすまして山田五十鈴の家を再度訪問、お父さんにまたもや放り出されますが、いくら待っても山田五十鈴が介抱しに来ません。彼女が最寄り駅を下車するところまでは確認したのですが、焦った杉狂児は帰宅する前に飛び込んでしまったのでした。

ねばる杉狂児をボコボコにするお父さん、そこへ駆けつけた山田五十鈴に優しくしてもらった杉狂児は夢心地です。

若い娘のハートをゲットするには、プレゼントが有効。そこで、杉狂児はおしゃまな妹・村田千栄子に女の子の好物をヒアリング。回答は「バナナ、チョコレート、お薩(ヤキイモ)」え?そんなガキっぽいのが好きなのか?あの、ステキな彼女は。

おいおい、お兄ちゃん、それは村田千栄子の大好物だってば!しかし、恋に燃える杉狂児は三種のアイテムを準備して山田五十鈴の帰宅を待ちました。無事に手渡したのはよかったのですが、山田五十鈴の口にそれらが入ることはなく、彼女の弟が全部平らげてしまいました。

そりゃ、あんた、子供には食いすぎだってば!案の定、弟は腹をこわします。山田五十鈴はお医者様に運ぼうと車を呼んでくるように頼みますが、馬鹿なお父さんと将棋仲間のお友達は「霊柩車か?」と笑えない冗談を言うのでした。

そうです!簡易保険に加入していれば、簡易保険の診療所を無料で受診できるのです!保険て素晴らしいのよ!お父さん!

さてさて、実は山田五十鈴ですが、彼女の勤務先は、な、なんと杉狂児のお父さんの会社でした。正体をあかさずに、杉狂児が山田五十鈴に次期社長の評判を訊くと「放蕩息子で白痴だと噂です」とのこと。

大ショックな杉狂児。このままではオレの人生は真っ暗闇だぜ!心を入れ替えた杉狂児は、父親の山本嘉一や妹の村田千栄子がおおぜいの使用人たちと毎早朝に実行しているラジオ体操にも参加して生活改善を実行します。

生まれ変わった杉狂児、いや、どこいらへんが?そういえば表情も少しくらいは、シャンとしてきたかも?

新社長初出勤の日、ついに山田五十鈴に正体を明かすことになった杉狂児ですが、山田五十鈴はそうとはしらず馬鹿だの白痴だの言ったので気が気じゃありません。杉狂児は今までは馬鹿とか白痴とか言われてた、それを深く反省してこれからは頑張るぞ!と大演説、社員一同も安心して万歳三唱をするのでした。

恋人がガマガエルじゃなくた王子様だとわかったので、とっても「嬉しい」山田五十鈴なのか、それとも自分の人生を変えるような「嬉しい」ことを言ってくれた山田五十鈴なのでしょうか?

ま、どっちでもハッピーエンドだから良いんですけどね。杉狂児が二枚目半のキャラクター、好きな女性のためなら猪突猛進、一念発起で頑張るスタイルはハロルド・ロイドのアクションコメディを思い出します。当時流行っていたのでしょうが、杉狂児もロイド眼鏡。ハリウッドみたいな大仕掛けとか、命がけのスタントは無いですが、喜劇映画の基本である「穴落ち」はありましたよ。

2011年11月06日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-11-06