下町 |
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■公開:1957年 ■照明:石井長四郎 ■録音:小沼渡 ■編集: |
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この映画は、いいっ!いいなあっ! 敗戦直後、シベリア抑留中の夫を待ちながら女・山田五十鈴は、お茶の行商をしていますが、なかなか売れません。あまりにも寒かったので暖をとろうとお願いして入った川辺の番小屋に無骨な男・三船敏郎が一人いて、彼もシベリア抑留の経験があったことから、二人はなんとなく言葉を交わします。 無口でシャイで善良な三船敏郎がとってもいい感じだったのでちょっぴり嬉しい山田五十鈴でしたが、彼女が小さな息子と間借りしている家は、家主の女房・村田知栄子が、夫が療養中で金に困っていた女・淡路恵子を使って売春させているようなすさんだところです。村田知栄子はなかなかのやり手ババアだったので、山田五十鈴にも同じ職業を斡旋してきます。それもこれも彼女の夫というのがすぐにインチキ商売に手を出すグータラ・田中春男なので、彼女もそんな夫を養わねばならないのでした。 山田五十鈴に邪なラブラブ視線を送る男・多々良純は、村田知栄子に仲介料まで払おうというのです。しかし、山田五十鈴はまだ人妻ですから、この計画は不成功。 そんなこんなで、山田五十鈴は子供好きでもある三船敏郎と一緒につかの間の親子三人生活を送ります。子供と一生懸命、カルメラ作る三船がすごくいい感じ。男の人は子供と遊んでいるときに一番、いい顔しますから、もう、婦女子は腰が蕩けまくりです。 山田五十鈴もだんだんその気になり、ついに三船と一夜をともにしてしまいます。 売春で摘発された村田知栄子と淡路恵子をもらい下げにいった山田五十鈴は、療養先で亡くなった夫の遺骨を抱いて淡路恵子が故郷へ帰るのを見送りに付き添ったため、三船と会う約束を守れませんでした。 翌日、山田五十鈴が訪ねていくと、三船敏郎は昨晩、引き受けなくてもいい仕事を無理に引き受けてトラックごと川に転落して死んでしまったというのです。 自分が時間通りに来ていれば、彼はやけくそになって危険な仕事をしなくてすんだのに!せっかくシベリアから命からがら帰ってきたのに!「死ぬために復員したようなもんだ」という同僚・佐田豊の言葉(悪気は無いのです)に愕然とする山田五十鈴。 あと、もう少しで手に入るはずだった幸せが、目前で手のひらから転げ落ちてしまった彼女の、言葉にならない悲しみ。彼女には息子がいます、それにいつか夫も帰ってくるかもしれません、それでも彼女は生きていかねばならない、現実の冷たい風が見ているこっちにも吹いてくるようです。 わずか数日のエピソードを淡々と、当時の日本人の特に女性が抱えていた不安や悲しみ、ヴァイタリティまで丁寧に詰め込んでいます。村田知栄子、淡路恵子、山田五十鈴の三人の女優さんに感謝しつつ、日本人の涙腺爆破装置である伊福部明の音楽とともに、この映画、大好きになりました。 (2011年01月23日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2011-01-23