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音楽喜劇 ほろよひ人生


■公開:1933年
■制作:P.C.L.(後・東宝)
■構成:森岩雄
■監督:木村荘十二
■助監督:
■原作:
■台本:松崎啓次
■撮影:鈴木博
■音楽:兼常清佐、紙恭輔、奥田良三
■美術:

■照明:岸田九一郎

■録音:市川綱二

■編集:立花幹也
■主演:藤原釜足
■寸評:


当時の浅草オペラの舞台ってたぶん、こんな感じ?それにつけても、藤原釜足、シャイでキュート、超若い頃。

最初の場面は、都心のターミナル駅です。ときどき電車の名前が「サラリーマン電車」とかだったりするオモチャのようなセットです。オシャレな男子や女子がスマートに行きかう、当時の当然として男子はハット着用、これがすごくキマッてます。女子も、だらしない(今のような)格好はしてません。

そんな駅の、冴えないアイスクリーム売り・藤原釜足は、ビール売りの少女・千葉早智子に恋をしていますが、彼女は音大の学生・大川平八郎のことが大好きです。

学生は歌謡曲を作詞・作曲して大ヒットしますが、それが大学にバレてしまい、退学処分。お父さん・徳川夢声もオカンムリです。藤原釜足は、ビール売りをクビになってしまいルンペンになります。

同じくルンペンの丸山定夫と一緒に釣りをしていて偶然手に入れた箱の中身は大きな宝石でした。しかもそれは泥棒たちがある宝石店から盗んだ品物でした。泥棒たちとの壮絶な追いかけっこの末に、藤原釜足と丸山定夫は盗まれた宝石店に飛び込んで、宝石発見の謝礼に大金を貰います。

これで彼女にプロポーズしよう!彼女の夢であるビアホールの開店資金にこの金を使おう!藤原釜足は意気揚々と駅に戻ってきますが、タッチの差で彼女は学生と結婚してしまいます。

大川平八郎のほうも、レコード会社から印税がたんまり入ったので千葉早智子とスゥイートホームで音楽三昧の生活をしています。二人の結婚は新聞ネタとなり、宝石をフイにされた泥棒たちの次なるターゲットにされてしまうのでした。

公園のルンペン・古川緑波は、レビューの歌い手・神田千鶴子を歌でナンパ。おそらく当時の人気歌謡曲をメドレーで、歌詞を繋ぎ合わせて愛の告白をします。ローレル&ハーディーを思い出させるような泥棒コンビ、ただしヒゲデブ・横尾泥海男とチビ・吉谷久雄のコンビネーション、戦前の東京の街を疾走するシーンはアメリカのスラップスティックスギャグそのもの。

当時の人気者を何気に挿入しながら、藤原釜足が活躍します。

泥棒団(これがまあ、抜き足、差し足、忍び足を列になって漫画のように夜道を進軍中)の先回りをして正体を隠した藤原釜足は、千葉早智子と大川平八郎の家に入り込み、まるで「ホームアローン」のように家中に仕掛けをして、侵入しようとした一団をビックリさせて撃退します。

名前も告げずに家を去る藤原釜足。しかし、彼はどうしても欲しかったある物をその家から失敬していたのでした。

再会した丸山定夫と一緒にビアホールを開店した藤原釜足。なんと、その店にはあの泥棒のヒゲデブが来ています。ゴキゲンに他の客といっしょに酔っ払っています。

あの娘が幸せになったのだからいいじゃないか!さあ、事情は知らないが、とにかく酒場は浮世の憂さを忘れるところ、いや、泥棒、オマエはそういうわけには・・と思いますが、ここはひとつ無礼講で。

彼の店には、彼女の家から盗んできた大切な宝物が飾ってあります。ほろ酔い加減で、ほろ苦いビールを泣きながら呑む藤原釜足。あー、わかる、そのキモチ、一緒にビール呑もうじゃないか!とスクリーンに向ってカンパイしましょう。

シャイでキュートな、大人のおとぎ話。

2011年01月16日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2011-01-16