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坊っちゃん(1953)


■公開:1953年
■制作:東京映画、東宝
■製作:加藤譲、佐藤一郎
■監督:丸山誠治
■助監:石橋克巳
■原作:夏目漱石
■脚本:八田尚之
■撮影:山崎一雄
■音楽:渡辺浦人
■美術:島康平

■照明:岸田九一郎

■録音:西尾昇

■編集:
■主演:池部良
■寸評:


池部良で「坊ちゃん」これ以上の適役は考えられないと言うことにしました。

たぬき(校長)・小堀誠、赤シャツ(教頭)・森繁久彌、野だいこ(美術)・多々良純、山嵐(数学)・小沢榮(小澤栄太郎)、うらなり(国語)・瀬良明、マドンナ・岡田茉莉子、婆や・浦辺粂子

完璧です。このキャスティングには誰も文句のつけようがありません。さらに!

不良中学生のみなさん・中谷一郎(落第5?)、佐藤允(落第2?)、鈴木和夫江幡高志。どうだ!凄いだろう!ゼッタイに手ごわいぞ!そんでもって、きっと根はいいヤツばっかだ!

原作は夏目漱石の「坊ちゃん」なので詳しくは原作を読んでください。

さて、坊ちゃんはイイトコの出だから、スクスクと素直で、素直すぎて傍から見ると無鉄砲だが、きっとオムツとか替えてくれた婆やには頭が上がらない。もう、大好きで、お母さんの代わりだから、ちょっとマザコンじゃねえの?くらい。

いや、良ちゃんだからそれでもオッケーだ。

坊ちゃんは口の上手い赤シャツや野だいこの「山嵐排斥運動」に乗せられそうになるが、持ち前の素直さであっさり信じて一時、山嵐と不仲になるが、マドンナに対する不潔な考え方を知るやいなやあっという間に変転し、二人で赤シャツと野だいこをやっつけてしまう。

単純だ!なんて単純なんだ!

でも、それこもれも良ちゃんだからオッケーなのだ!

口をへの字に曲げて小学生みたいに、老けた中学生軍団相手にマジで喧嘩売ったりもする坊ちゃん。大の大人のくせに全然普通、そこは天然の良ちゃんだからこそ!

かと思うと実年齢は10歳近く離れているけど、岡田茉莉子にポーっとなったりもする。あぁ、もー良ちゃんたら!

いや、それ以上に、瀬良明と岡田茉莉子が婚約関係にあるという無理さ加減も凄い。あきらかに瀬良明についてはドン引きな岡田茉莉子が大納得だ。

うらなり=瀬良明、そうか、その手があったのか!と思わず膝を打つ、これもキャスティングの勝利要因の大きな1つ、瀬良明ファンの皆さんスイマセン、それくらい適役。

棒読み台詞の坊ちゃんの周囲は新劇の小沢栄太郎なので難しいところはスラスラ素晴らしいカツゼツで説明してくれるから坊ちゃん、大助かり。そして敵役が森繁久彌というのが絶品。インテリのくせにスケベで小心翼翼たる猥雑さ。コンビの多々良純とやりたい放題のインチキ臭さが素晴らしい。

特に、芸者の藤間紫とちちくりあうところなんて、初めて知った大人の色恋沙汰の現場に坊ちゃんのビックリ顔も相まって大爆笑。

坊ちゃんと対決する中学生(え?ええっ?)な、映画デビュー前の佐藤允と中谷一郎のある意味、超フレッシュコンビ。なにせねえ、あなた、後の「独立愚連隊」ですからねえ、すでにその曲者加減は完成の域であったと申せましょう。つか、佐藤允、全然顔変わらないのよねえ、まだこのころ十代最後だと思うんだけど。

丸山誠二監督のカラッとした明るさも奏功、なにもかも上手くいった映画。

それと、池部良ファンは「青い山脈」を右の神、「坊ちゃん」を左の神として信仰しているのである(半分本当)。

2010年12月31日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2011-01-01