3000キロの罠 |
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■公開:1971年 ■照明:比留川大助 ■音楽:前田憲男 ■録音: |
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70年代の日本映画で何がいいかというと、映画音楽ですね。本作品も前田憲男のジャズな感じがすこぶるカッコいいです。映画の内容もこれくらいカッコよかったらもっと良かったのですが。キザとカッコいいは違いますが、ファンにとってはキザでもつっぱってても田宮さんなら全部ストライクゾーン!です(きゃあっ♪←馬鹿)。 日本列島、南は九州から北は北海道までおよそ3000キロメートルある、ということをこの映画から学びました。別に映画を観て勉強する必要などないのですが、観た人に何らかの情報を本作品から得るとすれば、ほかに三菱自動車のギャランGTOは若者(当時)に一番人気のある車だ(by田宮二郎)ということでしょう。よくわからない人はお父さん(注:昭和40年代前半生まれまでに限ります)にでも訊いて下さい。 かように強力なタイアップがあった、いや、必要であったということはかなりな低予算っつうか無理のある映画なんだろなあとあらかじめ心の準備をして観る必要があります。 九州の青年実業家・田宮二郎は裏日本(当時、現・日本海側)の観光開発を夢見ていた父親の跡を継いだ二代目社長。プレイボーイ(本人談)ぶりも有名ですが、現在では大手デパートの社長・永井智雄の令嬢・谷口香と結婚しています。さて、ある日、田宮社長は義理の父親である永井智雄から「北海道にあるデパートの社長と賭けゴルフをして負けたので、人気車種のスポーツカーをプレゼントすることになった。ついては、新品をくれてやるのは悔しいから九州から北海道まで君が運転していってくれないか」と頼まれました。 無理があります、強引過ぎです、気がつきましょう!田宮さん! が、田宮社長はあっさり受諾。その人気車種というのが三菱自動車のギャランGTO。しかも、ボディーカラーはオレンジ色。車好きな人にはたまらない魅力があるらしいので、そのスジの方にとっては本作品はまさに好適品と言えます。 しかし出発前夜、これからしばらくデキないから妻とたっぷりした後に、この陸送計画が死のドライブになるかのような予告電話がかかってきます。 いきなり自宅にそんな電話かかってきたら止めるでしょう、普通。大体、あなた会社の社長なんですから、そんな危険なコトしちゃダメなんですよ、だから二代目のボンボンは・・と陰口たたかれるに決まってるでしょう!何かあったら! が、田宮二郎は闘争心が旺盛なので計画を断行。白のコットンパンツにブルゾン(ジャンパー、当時)でカッコよく乗車した田宮二郎、まず最初に車の前に女・戸部夕子が飛び出してきます。誰かに追われているという彼女を乗っけて走り出したギャランGTO。二人で宿泊したホテルにまたもや変な電話がかかってきます。 どうやらアヤシイ男が田宮二郎を付け狙っており、行く先々に女がからんできて、途中、裏日本の名物料理(カニとか)を食いまくり、お祭りを見物し、名所旧跡をまわりながらギャランGTOは北上します。田宮二郎のことが好きになってしまった戸部夕子が謎の男とアクセスした場所で、なぜか妻の谷口香の姿を発見。そして戸部夕子は拉致されて走る車から放り捨てられるのでした。謎は深まるばかりです。 いや、もう犯人バレてるって!タイトルクレジットでその可能性があるのは二人しかいないし、ゼッタイにアイツに違いない、あとはどうやって登場するかだけに興味が絞られます。 自殺未遂の女・加賀まり子は謎の男のフィアンセで、田宮二郎といい感じになるのですが、男が現れたらあっさりと寝返ります。さすがアンニュイなまり子姐さんです、一筋縄ではいきません。そして彼女は最上川で水死体として発見されます。 ついに北海道上陸、そこでバーのマダム・浜美枝から真犯人の名前を聞きだした直後、彼女も拉致されます。 大雪山で謎の男と田宮二郎が延々と死闘。足場が悪いので、大変そうです。しかも田宮二郎は鼻血を出します。二枚目がゼッタイに出してはいけないところから血を流してまでの熱演です。正直、見ていてツライです。だって、二人の大男がひたすらヨタヨタ、モタモタしてるだけなので。 能登半島出身、これだけで殺人の動機になると言うのが凄すぎです。真犯人も共犯もライフル銃で死にます。とくに美しい共犯者は自殺です。今となっては後味悪いです。 で、最後の最後に登場した裏社会の、超大物らしき人物・三國連太郎はこれといって何もしないでテキトーに(芝居も実にテキトーにやって)去っていきます。手を抜くのも大概にしてほしいくらいなインチキくさい三國連太郎ですが、なにせズラリと並んだ組織のエージェントっぽい人たちが、どう見ても撮影スタッフ。服装もバラバラだし、緊張感ゼロなので、どうにもこうにもやりきれません。 田宮二郎が痛々しいくらいに一生懸命です。アイデアだけで映画を作るとここまで悲惨になるのか?という気がしないでもありませんが、それでもエンターテインメントとしてなんとかまとめたのは、福田純監督の力です。はじめて、この監督が「すばらしい」と心から感じる作品であったと言えるかもしれません。ほかにもありますが、せめてこれくらい褒めとかないと、田宮さんのファンとしては申し訳がありませんので。 で、この映画にオチはありません、ただ、能登半島出身の人はかなり気分を害するのではないか?と少々心配です。 (2010年12月19日 ) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2010-12-19